ビブラフォンの周波数スペクトルをピアノのそれとくらべてみた.
一般向きの教養本や物理の教科書には弦の振動というのが出ていて,そこでは線スペクトルが規則正しく等間隔に並ぶ.ピアノはピアノ線という「弦」をハンマーで叩いて音を出しているので,やはり線スペクトルが規則正しく等間隔に並んでいる.
ビブラフォンの振動源は直方体だから,そうはいかない.パイプ (共鳴管) をぶら下げるなど,涙ぐましい努力をしてもこの図の程度である.図は対数目盛というやつなので,ビブラフォンでは基本波以外の成分の振幅はきわめて小さく,ないと言っても良いくらい.ビブラフォンの音は音叉や時報の音に近いのだ.長時間聴いていると単調でつまらない.どのジャンルでも,マリンバ・ビブラフォンなどが主流楽器になれない理由かもしれない.
貧弱なスペクトルをカバーするには,音数を多くするしかない.というわけで,ミルト・ジャクソンのプレイを音符に直すと真っ黒になってしまう.
もうひとつの方向はマレットをふやして 3 重音 4 重音を奏でる....ゲイリー・バートンである.
音を横に並べるか,縦に並べるかの違いにすぎないけど.
Youtube に「チュニジアの夜」など,このふたりの共演 (競演?) があっておもしろい.ピアノは小曽根真.
ビブラフォンと比べるからピアノのスペクトルは豊富に見えるが,いわゆる管楽器・弦楽器では100次台の高調波が観測できる.このページ
http://www.cco.caltech.edu/~boyk/spectra/spectra.htm
にトランペットのスペクトルがある.