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トリチウムの海洋放出

2019-09-26 09:45:04 | 科学

福島の ALPS (多核種除去装置) 処理後のトリチウム (以下 T と書く) 汚染水を大阪湾に放出投棄してもいいと府知事が言明したそうだ.

この汚染水には,除去したはずのトリチウム (T と書く) 以外の放射性核種が、検出限界または基準値を上回っている放射性核種が存在している.しかしその事実は隠蔽されている.この問題は重要だが,以下の算数では T だけを対象とする.

ALPS (多核種除去装置) 処理水の2018年3月時点での状況は (以下,例えば E6 などの表記は x 10^6,掛ける10の6乗 を示す)
 タンク貯蔵量:約1.05E6立方米
 ALPS処理水増加量:約5~8E4m3/年
 ALPS処理水の T 濃度:約1E6Bq/リットル
 タンク内の T 量:約1E15Bq

これを薄めて海に流してしまうのが東電・通産省・原子力規制委などの方針である.海洋放出の T は総量、濃度ともに1990年代のPWR発電所が放出した程度にすると言う.
濃度基準 Bq/リットルには意味がない.どれだけの時間をかけて放出するかを決めなければ,いくらでも放出できる.
総量については,事故以前の放出管理目標は 22E12Bq/年 であった.単純計算では,タンクに溜まっている全部を放出するのに約 50 年かかることになる.実際は T 量は年々増加するのだが,それでも半減期のおかげで減少するから 30 年くらいで済むかもしれない.

偉い人たちは,そんな年数がかかることは念頭にない.そのうちまた屁理屈をつけて,より短期間に放出することを主張しそうだ.その屁理屈の根拠となりそうなのが,トップの図である.この図の Bq 値は,年度あたりか・積算値なのかがはっきりしないのが問題だ.また液体放出・気体放出のふたつについて公表している施設と,そうでない施設がある.残念ながら福島は後者である.
また,これらは個々の原発・再処理施設などからの数値であり (日本の場合も福島以外の施設は調べる必要がある),全世界・全原発等の T 全放出量はとんでもない数値になりそうだ.

とにかく図によればイギリスとカナダの数値が群を抜いている.東電・通産省・原子力規制委は,他国 (よそ) でやっているのだから,うちでももう1桁放出総量を増やそうと言い出すだろう.そうではなく,イギリス・カナダ等を非難するべきである.

そもそも公的な規制値というものは,いろいろな忖度の結果でしかない.トリチウムの生体影響については楽観的な見方が体勢を占めているが,有機結合効果 OBT=organic bound tritium などはどの程度研究されているのだろうか.CO2 の持つ地球温暖化のように,思いも寄らない効果が起きかねない.

T が破滅の瀬戸際にいる我々の足をさらに引っ張ることになりそうな予感がある.


 


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