Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

小川洋子と読む 内田百閒アンソロジー

2020-03-22 08:34:19 | 読書

ちくま文庫 (2020/2).

若いとき内田百閒を一冊プレゼントされたことがあったが,少し読んでそのままになった.ずいぶんと我が文学鑑賞力を買いかぶられたのだ.でも,今読んだらとても良い.

裏表紙に小川さんの言「生涯,百閒以外,読んではならないという状況に陥ったとしても,ああ,そうですか,とあっさり受け入れるだろう」.「編者あとがき」に加え,24編の各編の最後に,数行の編者のコメントがある.

夏目漱石門下だそうだが,百閒の小説は「夢十夜」ラインの延長かもしれない.数ページの短編はは起承転結などというものには無縁で,どこに連れて行かれるかわからない.

いちばん長い「柳検校の小閑」がいちばん普通の小説に近い.小川さんのコメント「内田百閒は恋愛小説も書くのです」.下宿屋を舞台にした「他生の縁」もおもしろい.

陸軍師範学校,法政大学などで教鞭を取ったそうだが,いったい何を教えたんだろう,と思っていたところ「長春香」でドイツ語ドイツ文学と納得した.この一編は教師としての百閒と学生との交流で,この女子学生は関東大震災で消息不明となる.これもどちらかと言えば恋愛小説的.

「蜥蜴」「雲の脚」「サラサーテ の盤」などには男性が女性に対して感じる気味悪さ・恐怖・裏返せばあこがれ,が,感じられる.これが小川さんにも受ける要素? 

挿絵入りの「桃太郎」は童話集「王様の背中」から.この本はうちにもあって,「なんの教訓もないので,安心してお読みなさい」というような前書きがあったと記憶している.

カバー画 杉浦非水.デザイン 名久井直子.出典が「内田百閒集成」としかないのはちょんぼ.「桃太郎」のへたうま挿絵画家のお名前もクレジットすべきだ.


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