Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

帰れない山

2020-10-06 09:27:48 | 読書
パオロ コニェッティ, 関口 英子 訳,新潮社(新潮クレスト・ブックス)(2018/10).

Amazon の CM *****街の少年と山の少年 二人の人生があの山で再び交錯する。山がすべてを教えてくれた。牛飼い少年との出会い、冒険、父の孤独と遺志、心地よい沈黙と信頼、友との別れ――。北イタリア、モンテ・ローザ山麓を舞台に、本当の居場所を求めて彷徨う二人の男の葛藤と友情を描く。イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」を受賞し、世界39言語に翻訳された国際的ベストセラー。*****

以下,街の少年をM,山の少年をYという.Mの一人称表記.山はモンテ・ローザ..とは言え舞台は限界集落.街はミラノ.
三部構成で,第1部ではMはYから,山遊び・沢登りを教わる.Mの父親はふたりにピークハント的な登山を教える.Mは父親と衝突し,その後ずっと両親ともYとも会わない年が続く.Yもまた父親と衝突する.YはMの不在によるMの両親の無聊を慰め,Mの父親と参考したりする.
第2部ではふたりは30代.Mの父親は他界.父が買って残した山頂の土地にMとYは協力して石積みの家を建てる.Yは高原牧場を始め,Mの元カノとペアになる.
ここまではメルヘン的だが,第3部には厳しい現実が待っている.Mはネパールとイタリアを往復し根無草のように暮らしている.Yの農場は破産,Yのパートナーだった女性は子供と共に去る.記録的な降雪のなか,Yは山頂の家でひとり越冬し,連絡が取れなくなる...

山の描写もさることながら,男ふたりの濃密でもあり気安くもあり気づまりでもある関係はよくわかる,
訳者あとがきによれば,関口英子さんは奥武蔵の山間の集落にお暮らしで,都会から越したばかりで7歳だったお子さんは,近所の子どものあとを必死で追いかけ,全身ずぶ濡れになりながら,毎日のように沢を登っていたという.彼のその後については...書かれていない.

原題 Paolo Cognetti は八つの山.ネパールの老人が須弥山を取り巻く八つの山を巡る者と,須弥山の頂を極める者,どちらがより多くを野学ぶかと問う場面がある (日本の仏教では須弥山を取り巻く山は九つらしい...ま,いいか).Mは山を巡る者,Yは頂きを極める者らしい.
日本語のタイトル「帰れない...」は,これでよかったのかな.

図書館の本.

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