Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

あやめ 鰈 ひかがみ

2008-11-23 09:20:58 | 読書
松浦 寿輝 講談社文庫 (2008/10)

*****出版社による紹介*****
冥府の淵に咲く花“あやめ”。その甘い馥りが妖しく誘う。腐敗していく“鰈”の重さ。酩酊と覚醒のレールを地下鉄は走る。白い肉の深部の“ひかがみ”。その魔がすべてを食らい尽くす。生と死の間に存在する恍惚のエロス。その果てのない闇に迷いこみ、帰途を絶たれた三人の男。
*****

夢をよくみるが,起きると,夢をみたこと・いやな夢だったことしか覚えていない.死ねば楽になると思って自殺したとしても,じつは死ぬということは永久に嫌な夢をみさせられ続けることだったりして...などと考えさせるのが「あやめ」.ここでは死んだ男が「バー・あやめ」に行ったり,賭場に行ったりして,ふつうに遇される.

つぎの「鰈」では地下鉄に閉じ込められる.
学生時代,田舎出の友人が,地下鉄が永久に闇の中を走り続けたらどうしようと思うことがあると言った.馬鹿にして笑ったものの,それ以来地下鉄に乗ると,ときどき闇の中を走り続けないかなとなかば期待するようになってしまった.
もうひとつ田舎から都会に出て驚くことは電車が異様に長いことだ.この小説では無人に近い地下鉄が永久に走り続けるように思われ,車両から車両へと渡り歩いてもきりがないように思われる.

「ひかがみ」は膝小僧のうしろのへこんだところ.この短編では初めから存在しない妹が幽霊になって寝ていたりする.場所ははつぶれかけたペットショップで,蛇しかいない.この本の帯の宣伝の「エロス」は違うんじゃないの...と思うが,強いて言えばこの「ひかがみ」がエロスっぽい.
以上の三つの短編からなるのだが,三つに登場する人物にはどこかしらに接点がある.

純文学にしてホラー小説.
自堕落にくらして転落したいという意識下の願望に応えてくれる小説のようでもある.なんだか分からないが,しばらくしたら再読したい.
ブックデザインも良い.ブックカバーは北野謙「溶游する都市」から.東京が懐かしい.
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