Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

続 死ぬより老いるのが心配だ

2024-03-22 08:59:05 | 読書

ドナルド・ホール,田村義進 訳「死ぬより老いるのが心配だ - 80を過ぎた詩人のエッセイ」辰巳出版 (&books 2022/2)

の続き.

目次*****
窓辺から / 80 を過ぎた詩人のエッセイ / 奇妙なくらいに楽しい一本の道を行く / 朗読会での「サンキュー、サンキュー」 / わたしがはやした三度のヒゲ / みんな煙草を喫っていた / ワシントン D.C. の雪男 / 運動オンチのエクササイズ / 博士と呼ばれたって / 死について2、3思うこと / 採用と不採用の狭間で / ドアのない家 / おわりに*****

トップ画像 左が原書.このカバーでは,日本でこの本を手にとって買う人は いそうもない.自称「雪男 (イェティ)」で「ワシントン D.C. の雪男」の項では大統領と握手したり.当時の妻は1週間ブッシュと握手した夫の手に触れなかったとか.

「朗読会での...」は詩人たちの活動は朗読会にあり,音楽家にとってのコンサートと似たようなもの らしい ということがわかる.「採用と不採用...」は作った詩が雑誌に載るか載らないか / あるいは載せるか載せないか という話題が中心.ぼく的にはつい「詩」を「物理の論文」に置き換えたくなる.

「博士と呼ばれたって」では何度も転んで救急車のお世話になったり,交通事故を起こしたり,煙草の火の不始末でボヤを出したり.こうした不名誉なことがらを,年寄りが自慢げに語るのは洋の東西を問わないようだ.

昔のことを思い出させる本ではある.コネチカットに住んだことがあるので,懐かしい地名があちこちに出てきた.
「...三度のヒゲ」にあるように,16 トンも上司が嫌がるのであえてヒゲをのばした時代があった.「みんな煙草を喫っていた」... 16 トンの父はヘビースモーカーだったので,ぼくは煙草を喫わないことにした...

もとの勤め先で,働き盛りの方が朝起きてこないとおもったら死んでいた という例があった.老いるのが心配な年齢になると,あのように死にたいと思うが,この本によれば現実にはチェーン・ストークス呼吸というのが辛いらしい.
しかし「死について...」では「死について考えることはもうない.ほどなく死ぬとわかっていると,そんなことはどうでもよくなるもので,もう女性と交わることができなくなったとわかると気が楽になるのと同じことだ」とも書いている.

「かってはよく "いまを生きろ" と諭された.いまはそれ以外に何ができよう.1日は同じことの繰りかえしで,すべてが瞬時のうちに終わってしまう.入れ歯をはずしたと思ったら,次の瞬間にはもう入れている」と続く.

80 を過ぎたら共感できる言辞の羅列ではあるが,それだけのことだ.この出版社 辰巳出版 の対象は若い読者で,この本も そこそこ売れたらしい.なぜ ??
本書刊行の4年後,著者は 89 歳で逝去した.

つまらないことを語るのもいちいち修辞的.翻訳は大変だったと思うが,楽しかったであろう とも思う.
コメント
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