Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「もしも誰かを殺すなら」

2024-03-16 08:59:52 | 読書
パトリック・レイン, 赤星美樹  訳「もしも誰かを殺すなら」論創社  (論創海外ミステリ 2023/12).

訳者あとがきに曰く*****
本作の原書は,まさにページを操る手が止まらなくなる一冊.読み始めたならば,次の展開と真犯人を求め,時が経つのも忘れてストーリーに没頭してしまう.原書で味わうことのできる恐怖とスピード感が,日本語に置き換わったことで損なわれていないのをひたすら願っている.*****

確かに読み出したら止められなかった.
コーヒー片手に,各々が好みの殺人方法を開陳すると,その通りの連続殺人に発展するる.舞台は閉ざされた雪の山荘.生き残れば増える遺産の分け前.無実なのに死刑を宣告した陪審員たちに対する復讐 ... こうした趣向がてんこ盛り.近年 本邦のミステリにある傾向だが,これは1945 年の作品 !

訳者あとがきが原書の誤植に言及しているのがおもしろい.ペーパーバック原書の出版社 Parsee Publications のランクがしのばれる.

A5 220 ページと短めなのに登場人物が多い.訳者への注文があるとすれば,冒頭の登場人物リストを,もうちょっと詳しくしてもらいたい.姓で呼んだり名で呼んだりニックネームで呼んだりするのも原書にこだわらず,わかりやすく統一していいのではないか.
時間順序に関する箇所は少々煩わしく,読み飛ばしたが,大勢に影響はなかった.
原題は If I should Murder.タイトルの日本語訳中の「誰かを」はなくても良さそう ?

探偵役の「わたし」 = パトリック・レインが盲目という設定が活きていた.彼が得る情報は会話を別にすれば,もっぱら音,匂い,触覚.ちなみにこの作品での著者のペンネームもパトリック・レインである.
彼のガールフレンド ? とライバル ? が登場するが,記述は不徹底.パトリック・レインものは6作のシリーズだそうだから,別な作品で彼らの関係は発展するのだろう.

あとがきはアメリカの死刑制度とか陪審員制度を解説している.今朝の新聞の読書ページでは,
 ジェド・S・レイコフ, 川崎 友巳 他 訳「なぜ、無実の人が罪を認め、犯罪者が罰を免れるのか - 壊れたアメリカの法制度」 中央公論新社 (2024/2/)
を紹介していたが,彼の国の法制度は百年前から壊れていたようだ.

著者の本名はアメリア・レイノルズ・ロング.こちらの別名は「貸本系 B 級ミステリの女王」だという.本作はちゃんとしたミステリだが...

図書館で借用.
コメント
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