清水浩史「幻島図鑑: 不思議な島の物語」河出書房新社 (2019/7).
図書館で借用.
見返しに「幻島とは,はかなげで.希少性のある,小さな島」とあり,
・はかなげ - 人口が少ない,もしくは無人島,無人化島
・希少性 - 珍しい名称・フォルム,稀有な美しさ,知られざる歴史
・小さい - 面積が小さい,狭小性
と定義されている.
全 17 島を紹介しているが,第1部ガイド編 (写真が主体),第2部紀行編と別れているのは,読みづらい.地図はあるが,縮尺の違う複数枚がほしいところ.
最初のエサンベ鼻北小島は,地図に記載された「消えた島」である.お役所に島がないことを指摘しても,著者はたらい回し - うやむや化を予想し,新聞社を動かす.島がないと「領海が狭まる恐れ」とは言うが,どのくらい狭まるかは書いてないようだ.
大きな岩に毛が生えた,ではなく樹が生えているくらいの無人島紀行には,体育会的な興味しか感じなかったが,無人化島にはロマンがあった.
カバーの写真と地図は東京都新島村の鵜渡根島.水がないこの島には,結核と思われた病人が隔離されたと伝えられる.
長崎県北松浦郡小値賀町の宇々島は生活困窮者を自力厚生させるために使われたと言う歴史を持つ.
山口県萩市羽島は周辺の困窮者の子どもを里子として育て,家の手伝いなどもさせ,成長すると親元に返すという慣わしがあった.島の子どもばかりでなく,他所から来た子どもたちもいたから,子どもの声が島に満ちていた.1965 年,萩市が市街地に寄宿舎を建て離島の子どもたちを市内の小中学校に通わせるようにした,このため羽島からは子どもが一度にいなくなり,それが引き金となって ? 1971 年には全住民が離島した.
幻島は西日本に集中している.廃墟探訪が一時ブームだったが,無人化島探訪はあの趣.人口 1-3 名の島は,「ポツンと一軒家」の徹底版.自分はこう言うのを見聞きするのが好きなんだと,つくづく感じた.