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チューリングの考えるキカイ

2018-10-12 09:52:14 | 読書
阿部彩芽,笠井琢美「チューリングの考えるキカイ - 人工知能の父に学ぶコンピュータ・サイエンスの基礎」技術評論社 (2018/4).

Amazon の内容紹介 *****
本書はチューリングの理論をもとに、コンピュータの原理やしくみから人工知能までを、わかりやすくていねいに解説しています。チューリングは現在のコンピュータサイエンスの基礎となる理論を作り上げた、とても重要な人物です。また、『知性を持つ機械』という論文やチューリングテストを考案するなど、人工知能の父とも呼ばれています。本書はこのチューリングの重要な理論を、できるだけわかりやすく楽しんで理解できるように、難しい専門用語を避け、ふんだんなイラストを用いて説明しています。コンピュータサイエンスの入門書として最適です。*****

笠井さんはコンピュータ・サイエンスの研究者.この本は氏が某大学で文系の学生を対象に行った講義を,そのお嬢さんである阿部さんがわかりやすく書き直したものだそうだ.阿部さんは阪大工学部卒で,現在はグラフィックデザイナー.イラストレーター.だからイラストも装丁も垢抜けた,楽しい本.
カントール,ゲーデル,ペアノ,ヒルベルト,ラッセル等々,登場する人名から推測できるように,程度は高い.しかもちゃんと読めばちゃんとわかるように書いてある.

自分のことを言うと,研究所に勤めて最初の仕事は,メモリ 8kB のミニ・コンピュータを実験データの処理に用いることだった.プログラムは機械語と1対1に対応するアセンブラで行った.この本では架空の存在として登場する原始的な計算機は,実はあのときのミニ・コンビュータそのものであったと思う.

「質問に答えを返すものを機械と定義する」とか,「究極のプログラム言語としての while プログラム」とか,コンピュータを少しかじったニンゲンにも新鮮なことが続出する.この業界の常識か,それとも笠井さん独自の定義かがわからないものが多い.

しかし...

この本の内容は,文系の一般学生には無縁である.実はふつうの,物理や化学や機械工学を専攻とする理工系の学生にさえ無縁な世界で,特に本の後半は禅問答みたいな感触である.
著者はあとがきで,役に立つかたたないかという打算に走ることなく,知を探求すること自体の楽しさ面白さを感じてもらいたいという趣旨のことを述べている.
そう認識すれば ☆☆☆☆★.
コメント
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