Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

井上ひさし「一週間」

2012-06-16 09:00:20 | 読書
内容(「BOOK」データベースより)*****
昭和二十一年早春,満洲の黒河で極東赤軍の捕虜となった小松修吉は,ハバロフスクの捕虜収容所に移送される.脱走に失敗した元軍医・入江一郎の手記をまとめるよう命じられた小松は,若き日のレーニンの手紙を入江から秘かに手に入れる.それは,レーニンの裏切りと革命の堕落を明らかにする,爆弾のような手紙だった… 『吉里吉里人』に比肩する面白さ,最後の長編小説.*****

上記のように,レーニンの手紙の争奪戦がストーリーであるとする観点からは,出来はよくない.そういう手紙があったという話は聞いたことがない...ということは,結末がわかったも同然,ハッピーエンドにはなり得ないと推察できる.そもそも手紙の存在が公表されても,ソ連政府とすれば無視すればよいだけ,と言ってしまうとストーリーが成り立たないし.

登場するロシア人がみな日本人以上に日本語がうまく,インテリで,彼等・彼女等のそれぞれと主人公が丁々発止の議論を繰り広げる部分は,おもしろくて読み応えがある.著者はこういうことを描きたかったのだとは思うが...
こんな場面はいかにも非現実的.

シベリア抑留についてはいろいろ見聞してきたが,この小説では,極寒の収容所内でも旧日本軍の上下関係が温存され,将校たちは労働せずに配給された衣食をピンハネし,部下にリンチを加える.
この軍国主義と,加えてソ連の少数民族問題に啓蒙させられた.
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