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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

音楽好きな脳 - 人はなぜ音楽に夢中になるのか

2010-07-02 08:49:18 | 新音律
ダニエル・J.レヴィティン著 西田 美緒子訳,白揚社(2010/03).

タイトルからは,音楽好きな人の脳はどうなっているかを書いた本とも受け取れるが,著者が意図するところは「脳というものは音楽好きである」ということだろう.ちなみに原題は,This Is Your Brain on Music: The Science of a Human Obsession."obsession" を辞書で引くと,こびりついて離れないもの,強迫観念などと書いてある.

この本の第三章によれば,計算機に例えれば脳はハードウェア,心はソフトウェアだそうだ.この本のタイトルで著者は,「音楽好きなこと」はハードウェアとして最初から備わっていることであり,生きるために必要不可欠な機能だと主張している.そしてこのテーマは最終章でも詳しく説明される.

これは言語は必要だが音楽はそえものとする学説と対立するらしい.
五年ほど前に読んだ岡ノ谷 一夫 著「小鳥の歌からヒトの言葉へ 」 岩波 科学ライブラリー(2003)は,ジュウシマツのさえずりから人間言語の起源に迫るというこころみだが,人間音楽の起源に迫るというアプローチもできそうだ.

じつは絶対音感に関するブログで,すでにちょっとこの本に触れてしまったのだが,どこを開けて読んでも面白い.というより,内容が豊富すぎて全部に触れるのは困難.

著者はレコード・プロデューサーを経て、オレゴン大学大学院で博士号取得.モントリオールのマギル大学心理学・行動神経科学教授.専門は認知心理学者・神経科学者とある.
この種の本では,まず脳みその絵がでてきて嫌になる.文科系の方が数式が出てくると本を放り出したくなるのと同じ心理と思う.この本では脳みその絵は「補説」として巻末に押し込んである.
原著に索引があっても訳書では省かれてしまうことが多いが,この本にはちゃんと索引がある.

俎上に採り上げた曲はロック系が他の分野を圧倒している.クラシックファンには分からないと思うし,それだけでこの本が気にくわないという方が多いかも.

全米ベストセラーだそうだ.アメリカ人ってレベルが高いんだなぁ.
そもそも日本の新書は平均するとアメリカのペーパーバックの1/3くらいの分量しかないし...

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