アンジョルラスが好き

おもにAaron Tveitについて
彼に興味が無ければつまらないです。
コメント欄が面白いので読んで下さいね。

リラの恋・再会編

2013-09-05 | 妄想のアーロン
Lilasさんが書いて下さった、リラの物語、一度アップしたんですが、管理人が無駄話で暴走して
なんのことやら、わからなくなったので、最初から記載します。
Lilasさん、ごめんね。

なぜ、この街にはこんなに人が多いのだろう…。リラは、そんなことをぼんやりと考えながら歩いていました。
もちろん、それは、ここがパリだからでしょう。でも、こんなにたくさんの人が歩いているのに、
リラと関係ある人は誰もいないようです。



たくさんの仲間や友達を一度に失ってしまったリラとつながりのある人は。
あの蜂起の日から何ヶ月も経ちました。でも、今のリラは、月日の感覚も、時間の感覚も、あまりわかっていません。
あれから長い長い時が過ぎたようにも思うし、つい昨日のことのようにも思えるのです。

ふと、リラは誰かに呼ばれたような気がして周りを見ました。でも、やはり知らない人ばかりが歩いています。
気のせいだったと思い、下を向いて歩き始めようとした時、また声がしました。「…リラ!」
少し先に馬車が止まっています。その横に一人の青年が立って、リラを見ていました。
最初、リラにはそれが誰だかわかりませんでした。二歩、三歩とそちらに近づいて、リラは動けなくなりました。


多分、もっと立派な格好をしているはずだけどね。

「…マリウス。。。」

マリウスは急いで歩いてきました。見覚えのある、ちょっとはにかんだような笑顔で。
「リラ…。よかった、会えて。時々、どうしているかと気になってはいたんだけど。」

「マリウス…。ほんとにマリウスなの?」

「そうだよ、僕だ。信じられないかもしれないけど…。リラ、聞きたいことも話したいこともたくさんあるよ。
さあ、行こう。時間はある?僕は家に帰るところなんだ。そんなに遠くないから、一緒に行ってゆっくり話そう。」

馬車に揺られながら、リラは黙ったまま、マリウスの顔をまじまじと見つめていました。
リラは、砦の戦いで学生達は一人残らず死んだと思っていました。…リラが愛したアンジョルラスも。
アンジョルラスの親友だったマリウス。そのマリウスが生きていて、今、自分の目の前にいる…。
それはとても嬉しいことですが、リラにはまだ信じられないのです。
リラの表情に、マリウスは、ちょっと困ったような笑顔になりました。

「家に着いたら、妻を紹介するよ。」

「…マリウス、結婚したの?」

「そうなんだ。…ついこの間のことだけど。」


みんなの怒りを駆り立てた、このシーンw

リラの頭に、あの蜂起前夜のミュザンの部屋が浮かびます。あの時、マリウスはどこかへ出かけていました。
誰かが、あいつは女の子に一目惚れして夢中になっているから、もうここには戻ってこないよ…と、ふざけ気味に言っていました。
でも、マリウスは戻ってきて蜂起に参加したのです。


「もしかして、あの頃、みんなにからかわれていた…その人…?」

「そうなんだ。」マリウスはもう一度そう言って、また、はにかんだような笑顔になりました。


マリウスが、からかわれてたようにも見えるけど、堅物アンジョルラスが、からかわれてたようにも見えたシーンですね。


立派な部屋に通されたリラが待っていると、マリウスが美しい女性を連れて入ってきました。

「リラ、紹介するよ。妻のコゼットだ。」

帽子のままでごめんなさい。意外と画像が少ないのよ、ワタクシ


なんて綺麗な人…と、リラは思いました。リラの手を優しく握ったその手も、とてもやわらかく、あたたかいものでした。
コゼットは、二人がゆっくり話せるようにと、すぐに部屋を出て行きました。


「とても美しい奥様ね。マリウス、あなたが一目で夢中になったのもよくわかるわ。」
リラのからかうような言葉に、マリウスはちょっと微笑みました。



おーい、コゼット、ちゃんとお茶出してあげて
多分、リラはろくな食事もしてないと思うんですよね。

明るく美しい部屋、いたるところ花で飾られて、磨き上げられた家具に、ゆれるカーテン
香りの高いお茶が運ばれて来ました。
コゼットの着ていたドレスのひだ飾りや、レースやリボンの素敵なこと

リラも若い娘ですから、少しの間、それらの豪華な美しさに胸をときめかせました。

リラはお針子だけど、自分で着ることはできないもんね。
でも、リラ、アンジョルラスはリラの中身(服の)が好きなんだと思うから、気にすんな。

アンジョルラスの故郷の家も、美しく居心地の良い屋敷でした。
リラは、召使い夫婦に育てられていたので、貴婦人や令嬢たちのようには過ごしてはいませんでしたが、
アンジョルラスの母は、リラにはとても優しく庭や台所で自由に遊ばせてくれました。

年が少し離れていたので、アンジョルラスとは、めったに遊ぶことはありませんでしたが、たまに
いっしょになった時には、本当の妹以上に優しくしてくれました。
パリに来るまでのリラは、捨て子ではあっても、貧しさも、孤独も知らず、幸せに暮らしていました。

リラはふと思います。
アンジョルラスが望めば、彼もマリウスと同じように、美しい妻と絵に描いたような幸せな生活を
送れたでしょうに。リラとは身分が違うので、結婚はできなかったかもしれないけれど・・・
彼に憧れていた令嬢たちは、たくさんいました。

・・・でも、やはり彼が深々と安楽椅子に腰を下ろし、妻と語らっている様子は目に浮かびません。
アンジョルラスの両親も、うすうすそれを感じていたのか、婚約者を決めようとはしませんでした。

それから、リラは訊きます。
「マリウス…、どうやって砦から戻ってくることができたの?あの日、砦では…どんなことが起きたの?」
マリウスは少しだけ苦しそうな表情になりました。


「僕も…撃たれたんだ…。リラ、あの前の晩に、志願兵として加わった年輩の人を覚えてる?あのジャベール警部を自分に任せてくれと言った人…。」

マリウスは話し始めました。あの人は、実はコゼットのお父さんだったこと。
彼が、撃たれたマリウスを背負い、下水道を通って逃げてくれたこと。
それはマリウスのためでもあるけれど、コゼットのためであったこと…。

 この絵って、マリウスよりアンジョルラスみたいに見えると思いませんか?

リラは、不思議な物語を聞いているような気持ちになりました。
そして、思いました。マリウスは幸運な星の下に生まれた人なんだなぁ…と。
マリウスは、前の晩にエポニーヌにも命を救われているのです。彼女の命と引き換えに。
マリウスを愛していたからこそ、命を落としたエポニーヌ。

でも、自分は…と、リラは思います。アンジョルラスにいったい何をしてあげられたのだろう…。何もできなかった…。

ふと気づくと、マリウスはますます苦しそうな表情をしています。

「リラ、僕は謝らなければならないんだ。みんなにも、君にも。」

「…どういうこと?」

「僕は…戦いを逃れて自分だけ生き残ってしまったんだ。皆一人残らず死んでしまったのに…アンジョルラスも。」


リラの心臓が、大きく脈打ちます。

「あの後、だいぶ経ってからミュザンに行ったけど…本当にひどいありさまだった。アンジョルラスのことも聞いたよ。彼は窓から…」

マリウスは、そこで、はっと口を閉じました。

リラの頭の中に、砦陥落後の、あのミュザンの様子がよみがえってきました。自分の心臓の鼓動が聞こえる気がします。
痛む胸を押さえながら、リラは言いました。


「マリウス、そんなふうに考えないで。あなたが生きていて本当に良かったわ。それに…私だって、戦いから逃げたのよ…。」

「君は違う。アンジョルラスが君を砦から出て行かせたんだろう?」

「…知ってたの?」

「あの朝、君の姿が見えなくなったからアンジョルラスに訊いたら、出て行かせたと言ったんだ。
僕は、彼女を愛しているから死なせたくないと思ったんだね?と訊いた。
そうしたら、彼は、『…ああ。…そうだ。』と答えた…とても優しい声で。僕は、彼のあんな優しい声を聞いたのは初めてだった…。
きっと、君のことを思い浮かべていたんだね。」


リラは、うつむいて押さえていた息を吐き出しました。
リラには、その時のアンジョルラスの声が聞こえるような気がしました。彼の顔も見えるような気がしました。


涙がこぼれそうでしたが、胸の痛みはほんの少し小さくなりました。

「…ねえ、マリウス。さっきも言ったけど、あなたが生きていて本当に良かったわ。あなたは生きていて…
そして、あなたを待っていたあんな素敵な人のところに戻ることができた。それは、とても素晴らしいことじゃない?」

マリウスの表情が、少しやわらかくなりました。
そう、あんな素敵な女性を悲しませてはいけない…。リラは、本当に心からそう思うのです。
なのに、なぜ胸の痛みはまた強くなってゆくのでしょうか…。

 人類史上、一番かっこいい人を失ったからなぁ。

リラが帰ろうと立ち上がった時、コゼットが部屋に入ってきました。
コゼットは、また優しくリラの手を握り、「いつでもいらしてね。」と言ってくれました。マリウスも「リラ、本当にいつでも来て。それから、困ったことがあったりしたら、なんでも相談してほしい。」と言いました。
そして、マリウスはリラをじっと見て、「リラ…。今は、どんなふうに暮らしているの?生活は…?一人で住んでいるんだろう?」と言いました。その少し心配そうな声に、リラは笑顔をみせました。ちょっと泣きそうにも見える笑顔でしたが…。
「私ね。不幸せなんかじゃないのよ。だって…彼がいつも見ていてくれるから。傍にいてくれるのがわかるから。だから…私は大丈夫なの。」


リラが出て行った後で、マリウスはコゼットに言いました。「君たちが友達になれるといいと思うんだ。リラはとてもいい子だから。」
「そうね、私も友達になりたいと思うわ。でも…」
コゼットは首をかしげながら言います。「彼女は、私に会うのはつらいのではないかしら…。彼女が愛した人は、戦いから戻って来なかったのでしょう?あなたは私のところに帰ってきてくれた…。そんな私に会うのは、彼女にはつらいかもしれないわ。彼女自身は気づいていないかもしれないけど…。」

 エポニーヌほど、辛くはないだろうがな。

外に出たリラは、通りをゆっくりと歩いていました。マリウスが馬車で送ると言ってくれたのですが、リラはお礼を言って断ったのでした。
リラは、マリウスとの会話を思い出していました。マリウスは、遠慮がちにこうも言ったのでした。「故郷に帰ることも考えてみたら…。」その時、リラはちょっと微笑んで首を横に振ったのでした。
そのことは、リラも以前にほんの少しだけ考えたことがあるのです。でも、リラはここにいたいと思ったのでした。

このパリで、リラは身を切られるような悲しい思いを経験しました。その悲しみは、決して消えることはないと思っています。



それでも、リラは、この街にいたいのです。アンジョルラスが懸命に生きて、闘った、このパリに。ここで、アンジョルラスは自分を愛してくれ、強く抱きしめてくれたのです。
…ねえ、あなたはいつも見ていてくれてるのよね? リラは心の中でアンジョルラスに話しかけます。
私は今だってあなたを愛しているわ。あなたが私を愛していてくれるのもわかる…。
あの後すぐには全然わからなかったの。でも、今は、あなたが傍にいてくれるのが感じられるのよ。だから…私は大丈夫なの。
どうか、これからも私を見ていてね。ずっとずっと…。
リラは、少し足を早めて、パリの街を歩いてゆきました。



ショスタコーヴィチの「馬あぶ」です。
変な題名ですよね。こんな美しい曲なのに、馬につく害虫の名前だなんて。

1955年アレクサンドル・ファインツィンメル監督のソ連映画「馬あぶ」に付けた音楽で、
この映画は19世紀イタリアを舞台に、権力に翻弄され悲劇的な最後を遂げる活動家の純愛を描いたものです。その主人公のあだ名が「馬あぶ」で、権力に絶えず警告を発するような人の事をそのように言うそうです。


より詳しい解説はこちらにどうぞ


悲劇的な若い活動家の恋と死・・・リラとアンジョルラスに捧げます。(作ってないけど)
ああ・・・Lilasさん、これで終わり? いやだ~~もっと書いて