なぜ、この街にはこんなに人が多いのだろう…。リラは、そんなことをぼんやりと考えながら歩いていました。
もちろん、それは、ここがパリだからでしょう。でも、こんなにたくさんの人が歩いているのに、
リラと関係ある人は誰もいないようです。
たくさんの仲間や友達を一度に失ってしまったリラとつながりのある人は。
あの蜂起の日から何ヶ月も経ちました。でも、今のリラは、月日の感覚も、時間の感覚も、あまりわかっていません。
あれから長い長い時が過ぎたようにも思うし、つい昨日のことのようにも思えるのです。
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リラは、多分、最初のうちは喪服を着ることができなかったと思います。どこかにアンジョルラスが生きていて
戻って来てくれるんじゃないかと・・・
けれど、いくら待っても、どこを探しても、もうどこにもいないことに気付きます。
もしかしたら、その日からリラは喪服を着たかもしれません。
ふと、リラは誰かに呼ばれたような気がして周りを見ました。でも、やはり知らない人ばかりが歩いています。
気のせいだったと思い、下を向いて歩き始めようとした時、また声がしました。「…リラ!」
少し先に馬車が止まっています。その横に一人の青年が立って、リラを見ていました。
最初、リラにはそれが誰だかわかりませんでした。二歩、三歩とそちらに近づいて、リラは動けなくなりました。
「…マリウス。。。」
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マリウスは急いで歩いてきました。見覚えのある、ちょっとはにかんだような笑顔で。
「リラ…。よかった、会えて。時々、どうしているかと気になってはいたんだけど。」
「マリウス…。ほんとにマリウスなの?」
「そうだよ、僕だ。信じられないかもしれないけど…。リラ、聞きたいことも話したいこともたくさんあるよ。
さあ、行こう。時間はある?僕は家に帰るところなんだ。そんなに遠くないから、一緒に行ってゆっくり話そう。」
馬車に揺られながら、リラは黙ったまま、マリウスの顔をまじまじと見つめていました。
リラは、砦の戦いで学生達は一人残らず死んだと思っていました。…リラが愛したアンジョルラスも。
アンジョルラスの親友だったマリウス。そのマリウスが生きていて、今、自分の目の前にいる…。
それはとても嬉しいことですが、リラにはまだ信じられないのです。
リラの表情に、マリウスは、ちょっと困ったような笑顔になりました。
「家に着いたら、妻を紹介するよ。」
「…マリウス、結婚したの?」
「そうなんだ。…ついこの間のことだけど。」
リラの頭に、あの蜂起前夜のミュザンの部屋が浮かびます。あの時、マリウスはどこかへ出かけていました。
誰かが、あいつは女の子に一目惚れして夢中になっているから、もうここには戻ってこないよ…と、ふざけ気味に言っていました。
でも、マリウスは戻ってきて蜂起に参加したのです。
「もしかして、あの頃、みんなにからかわれていた…その人…?」
「そうなんだ。」マリウスはもう一度そう言って、また、はにかんだような笑顔になりました。
Lilasさんの記事に便乗して、ちょっとマリウスについて語りますね。
ミュージカルは尺の関係で、マリウスのキャラがだいぶ損な感じになってると思います。
マリウスのイメージは、革命に熱中していたのに、彼女ができると、彼女以外そっちのけの色ボケ。
そして、彼女の行方がわからなくなると、やけで革命に参加。
エポニーヌを犠牲にして、バルジャンに助けられて、仲間が全員死んでものうのうと結婚。
ブルジョワに戻って、可愛い妻と幸せに。
コゼットも、小さいころは可哀そうだけど、何も知らずに着飾って楽しく暮らして~
エポニーヌに謝れ!このやろう
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まあ、ひとつ言わせてもらえば、マリウスは別に革命から逃げてないし、コゼットはエポニーヌのことを
知らないよね。
名前もなぁ、ポンメルシー
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へぇへぇ・・・俺の負け、俺の負け・・・
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でも、原作のマリウスは、なかなか生真面目な苦労人で、実はかなりのイケメン。
アーロンがやっても良さそうな役です。まあ、アンジョルラスが、あまりに似合ってたんで、
今さら、マリウスをやって欲しかったとは思わないけど。
■3分でわかるマリウス・ポンメルシー(原作)講座
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マリウスはヘタレだとよく言われますが、原作のマリウスは全然そんなじゃ
ないです。むしろ祖父や叔母からの援助も受けず、毅然とした態度で貧乏と戦います。
父のことを悪く言われて育ったけれど、実は父は尊敬できる人で、自分を愛していたと
知って、父を受け入れなかった祖父と袂を分かっていたんです。
その父(ナポレオンの軍の将校)の影響で彼はナポレオン崇拝者になっていました。
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※生前は祖父たちの言葉を信じ、父を悪く思っていた。けれど、父の知り合いから、いつも父が教会に来た
マリウスを影から見て、涙していたと聞かされて、父にせめて一度だけでも会いたかったと思う。
そして、父の墓前に赴く。彼はその後、父を認めない祖父の家を出る。
アンジョルラスたちのグループには、クールフェラックに連れられて行きますが、一度
演説をぶって、それを一言で片付けられてからは、多少距離をおきます。
自分の主義主張が、さほど固まっていなかったから。
アンジョルラスたちの強い主張に、そこまでのめり込めなかったんです。
そして、ナポレオン派じゃなくなるのが、父への裏切りに思えたんです。
マリウスは、自分の貧乏な格好を見られてる気がして、女性には臆病でした。
笑われてる気がしたから。でも実際は、イケメンだったので、ふり返られてたんです。
そんなマリウスが怖くない女性がふたり。一人はひげの生えた掃除婦のおばあさん。
もうひとりは、散歩でよく会う、少しも綺麗でない小娘。
娘は、白髪の生真面目そうだが悲しげな初老の男といっしょに、リュクサンブール公園に毎日座っていました。
学生たちは、白髪の彼に「ルブラン氏(白)」娘が黒衣なので「ノアール嬢(黒)」とあだ名をつけるけど、
娘が、まったく綺麗でないので、無関心。
小娘と老人は、コゼットとバルジャンです。
そして、しばらくぶりに公園に来たマリウスは最初、コゼットをあの醜い娘の姉か?と思います。
それほどコゼットは短期間に大人びて美しくなっていました。
けれど、マリウスはそれでも無関心。コゼットは彼をみつめているというのに。
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そんなある日、ふと娘と目が合います。
それは淫蕩な女の流し目よりも、彼の心を搔き立てます。
その目は現在の純潔と将来の情熱を表していた・・・そうです。
て、どんな目だよw
まあ、清純派美少女が、自分のほうを気がありそうな目でみてくれたってことかなw
マリウスは、その日から恋のとりこ。
新しい服をおろして、急にお洒落を始める・・・
「今、僕はマリウスの新しい帽子と上着にあったよ。奴さんはその中にいたよ。
きっと試験でも受けに行くんだろう。ひどくぼんやりしていた。」とクールフェラック
マリウスは躁状態で、皆といても、なんか変なところに食いついたりする。
みんなが講義の話をしてるのに、急に「それでも十字勲章もらうのって悪くないぞ」って
いきなり話をさえぎって叫んだり・・・
「これは、おかしい。」クールフェラックが、ささやいたら
「いや、奴はまじめなんだろう」と、プールヴェール。みんな、生暖かく見守ってる?
実際、マリウスは、まじめなまま、熱に浮かされておかしくなるんですよね。
コゼットのほうは、バルジャンに気づかれないように、こっそり視線を送る術を知っているのに
マリウスは、気付かれてバルジャンにウザイと思われる。
大事なコゼットに近づくな!って。それで公園には来なくなる。マリウスがっくり。
そのころ、マリウスはゴルボー屋敷という貧民窟に住んでいて、ある日、となりの娘が金の無心に来ます。
エポニーヌです。そして、マリウスさん、あなた自分が美い男だって知ってる?って言います。
この時、エポニーヌは、マリウスをロックオン。マリウス、顔を赤くして、多少引く。
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けれど、娘のあまりの貧しさに同情をおぼえ金を与える。そして隣を節穴から覗いて見て、その荒れ具合に驚く。
だが、彼はもっと驚くものを見ることになる。
篤志家がやってくるんだけど、それが、あのルブラン氏(ジャン・バルジャン)。
そして『彼女(コゼット)』が・・・いた。
偶然過ぎるといえば、そうなんだけど、テナルディエは、片っ端から恵んでくれそうな相手に
金を無心していたし、バルジャンは乞食を見ると施しをしていたから、まあ・・ね。
明日までに家賃の溜まった分を払わないと追い出されると聞いたルブラン氏は、6時に持ってくると
言って、帰って行く。
マリウスが、その瞬間を覗いたのは、確かに偶然すぎるけどw
後をつけようとしたけど、さきほどエポニーヌにお金をやったお陰で馬車に乗るお金がない。
やっとみつけた彼女は、また行方知れずに。(6時に来るって言ってるのに、聞こえてない)
そこへエポニーヌが来て、悲しそうね、何か私がお役に立てない?って聞く。
マリウス、最初は冷たかったけど、その申し出を聞いて、さっきの初老の男の住所を探ってくれって頼む。
すると、エポニーヌは、さすがに恋する乙女。
「さっきの綺麗なお嬢さんの住所が知りたいのね・・・」
そこから、まあ、ちょっと映画にはない複雑な展開がある。超かいつまんで話すと・・・
マリウスが部屋でぼんやり思いに耽っていると、隣から大きな声が聞こえる。
「やつは8年前に俺からヒバリ(コゼットの少女時代のあだ名)を盗んでいった奴だ。」
テナルディエの女房が驚いて「あの綺麗なお嬢さんが、ヒバリだって?」
そして、ジョンドレット(テナルディエの偽名)たちは、共謀して、6時に来る彼と娘を捕まえて
金を取ろうと計画する。
マリウスには、半分も話の内容が理解できなかったが、老人と、彼女が危険だと思い、
警察(ジャベール)に話をする。そして、ジャベールにピストルを渡され、これで奴らが何かしたら
合図しろって言われる。
ルブラン氏が6時にやって来た。すると、部屋にテナルディエに呼ばれた悪党が集まってくる。
マリウスが発砲して知らせようとすると、
ジョンドレットが
「俺の名前はテナルディエだ。モンフェルメイユで宿屋をやっていた、覚えているか?」
それを聞いてマリウスはびっくりする。実は父からワーテルローで命を救ってくれた男の名前を聞いていたのだが
それがテナルディエ。まさかと思っていると、
「俺はな、弾の下をかいくぐって、ワーテルローで将軍の命を救ったんだ。」
もちろん、テナルディエは命を救ったんではなく、戦場で死体からめぼしい物を盗んでいただけ。
軍隊について行き、酒を売るなど商売をして、戦死者が出れば、盗みを働いたりした、いわば戦場のハイエナ。
マリウスの父から、金の指輪や、勲章、金貨などを盗んでいるところを、助けていると勘違いされただけ。
しかし、マリウスはそんなことは知らないので、父の恩人を警察に売るのか、しかし見捨てたら、ルブラン氏と
彼女はどうなる?と、悩み続けて、なかなか発砲できない。
結局、ルブラン氏(バルジャン)の超人的な強さと、いつまでも合図が聞こえないのに、しびれをきらしたジャベールが
乗り込んでくるのとで、テナルディエ一味は捕まる。バルジャンは素早く姿を消す。
テナルディエが逮捕された後、マリウスはゴルボー屋敷を引き払い、クールフェラックのところに居候する。
裁判にかり出されて、テナルディエにも、ルブラン氏にも、不都合なことを言いたくなかったから。
エポニーヌはといえば、かわいそうに逮捕されてる。でもまだ15歳だから、すぐに釈放される。
そして、執念でマリウスを探す。彼女は、ひょんなことから、コゼットの住所も手に入れていた。
ひさびさの再会にも、冷たいマリウスに
「あのお嬢さんの家がわかったの。」と複雑な思いで言う。
「僕を連れていってくれ。君の望みのものは何でもあげる。」
そして、お礼にお金をあげて、「お金が欲しいんじゃないわ」のシーンになる。
まあ、ここからは、映画と原作はわりと同じ展開になる。多少は違うけどね。
リラ、あなたは、まだ幸せだよ。アンジョルラスに愛されたんだから。
アンジョルラスに、他に好きな女性がいて、その仲介を頼まれたら・・・嫌すぎる
一番の歌詞は、和製On My Ownだね
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_uru.gif)
マリウス、ひどい!って思うけど、コゼットを、アンジョルラスだと考えたらどうだろう?
まったく好きじゃない男が思いを寄せてきても、心はアンジョルラスに行くと思う。
恋心ばかりは、どうにもならない。
たとえ、どんなに心を捧げられても、思いは、恋する人へしか向かない。
誰が悪いんでもないよね。
ああ、ごめんなさい。Lilasさん。
ちょっと書くつもりがダラダラと長くなってしまって。邪魔してしまった・・・
では、次回、マリウスのうちに行くリラに続きます。