ナポレオン

男は夜の町を歩いていた
一つの看板に目をやった



ナポレオン
良い名前じゃないか

重厚な扉を



決して重厚ではなく、白塗りのどちらかというと軽い感じのドアを開け店内に入る



整然とした店内
老舗である
ここの場所に移転されてまだそれほどたっていないとのことだが
男は数十年の空白期間を埋めることは出来なかった

要するに移転されてからは初の訪問である



世界第三位のバーテンダー



とてもそんな風には見えない気さくな男である
田舎町のバーだ
其れで良いのだ



チャームのポタージュとジンリッキー

スイカのカクテル



高校野球の話になって挑発の慶応が優勝した



話の流れからマルゲリータを注文してしまった



流石に老舗
間違いない

5900円

＠㐂

「今日は何処へ連れて行ってくれるんかのぉ～」
「そうですね。フラッと入ってみるやりませんか」
「いいねぇ、それ」



「こんなお店があったんですね」
「案内人のお前でも知らんのん？」
「案内人っていっても、多少呉の町を知ってるだけですから」
「女将さんが出て来たぞ」
「ここは何のお店ですか？」
「お肉を中心とした一品料理をお出ししております」
「今、大丈夫かのぉ～」
「いいですよ。どうぞ」
「即決ですね」



「本日は佐賀牛がお勧めになっております。よろしかったらどうぞ」



「生ビール発注したはずなんじゃが、お前どっかに隠したん？」
「また消しちゃったんですか」



「お通しの隅っこに写ってるので良しにしましょう」



「カウンター７，８席のこじんまりした感じですかね」



「夜は金曜日だけなん」



「そうだんですよ。子供がまだ小さいけん、最近、金曜だけ夜もお店を開けることにしたんです。」
「ランチがメインなんですね」
「メインって程ではないですが、お昼は焼肉定食をお出ししております」
「昼からでも飲んでエエん？」
「もちろん、大歓迎です」

「佐賀牛のステーキです」



「流石にA5ランクですね」
「知らんけど」



「美味いですね」



「ハイボール」



「サラダお待たせしました！」



「お客さんがそれほど多い訳でもないんじゃけん、肉の前にサラダ出して欲しかったのぉ・・・」
「改善の余地ありですか」



「次は昼飲みに来てみるかのぉ」
「いいですね」



「カード貰ってきましたよ」