─光る波の間─

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ともだちの定義

2009-08-08 23:57:48 | つれづれ

私がクレジット会社で働いていたころ、勤務先の婦人服コーナーに
服飾専門学校を出たばかりの彼女が配属されてきた。

彼女はナチュラルで淡々としていて、
大きく感情を出すようなタイプではないけれど、
自分の意見はしっかり伝えて、譲らないところは譲らない人。
休憩が彼女と一緒になるのは楽しかった。

彼女のほかにも、サブカルチャーの話とかたくさんして、
合コンや彼氏の話や噂話や悪口ばかりを言わない少数派な人々と、
よく一緒に休憩をとって楽しかったことはいい思い出だ。

そんなふうに、結構仲良くしていたにも関わらず、
売り場以外でのつきあいはまったくといっていいほど無く。
住んでいるところも近かったはずだけど、お互いの家に遊びに行くようなこともなく。
私が当時住んでいた、河原に面したアパートの下を彼女が散歩していて、
部屋にいた私と目が合って、上と下で話したりはしても、
「じゃあ、またね」 で、終わり。(笑

私が会社を辞めたり、売り場が無くなったり、
バラバラになってしまうとその後は音信不通になる。
なにしろ、彼女は携帯電話を持たない主義だし。


それでもどういうわけか、ある日思いがけない場所でばったり遭遇するのだ。


今度もそういう再会だった。
地下食品街の鮮魚コーナーで(普段そこへは行かないのにどういうわけだか)
通路を塞ぐ外国人の年配女性。
横をギリギリのところで通ると背後に聞き覚えのある声が。
その外国人女性と電子辞書でコミュニケーションしていたのは、“彼女”だった。


「河原を散歩してて、あのお部屋が空になってたからもういないんだな~って思ってたんです」

「うん。引っ越したの。でも近くに引越したからあまり変わってないの」

「そうだったんだ。私、今(仕事)なにもしてなくて、妹の彼氏とそのお母さんが
 ボストンから来ていてお世話してるんですよ(笑」

「ガイドしてるんだ!」

「そう。英語も話せないのに。料理も苦手なのに、お母さんをウチに泊めてるんで
 毎日食事作るの大変なんです(苦笑」


先月、彼女のお母様の1周忌が終わったそうだ。


「ようやくひと段落ついたんです。…ご両親は健在?」

「父は5年前に」

「お母様は?」

「まあ、元気。」

「そう。じゃあ、いいですね。」


彼女と私はまた分かれた。やっぱり連絡先を知らないまま。


「あいかわらず携帯持ってないのね。連絡先も交換しないのよね。でも、
 また会えるんだものね」

「はい。(貴方とは) そういうの無くていいんだダイジョウブなんだと思うの。
 それじゃあ、妹の彼氏とお母さんが向こうで待ってるんで」

「うん。またね」


彼女はアパートを変えていないようだったから、前よりもっと近くに住んでいる2人なはずだ。
こんな関係はふつう、ともだち とは言わないんだろう。
だけどなぜだか、強い確信があるのだ。

必ずまた 会う という。

次は家の電話番号くらい交換するのかもしれないし、しないのかもしれない。
どっちでもいい。
そうして10数年間、つきあっている。



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