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オフロードバイク&釣り好きのイケイケブログ

伝えたいこと、まだまだいっぱい。

2015-12-22 22:24:52 | 仕事関係
11日金曜日の話です。
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およそ3年と少しの間、
決められた曜日に放送していた
5分の生放送番組を担当してくれていた
女性アナウンサーが卒業しました。

スラリとした手足と切れ長な瞳が印象的な彼女は
雨の日も風の日も
それこそ台風の日も
決まった時間に放送される番組のために
局のスタジオへと通い続けてくれました。


最終日となった金曜日の放送では、
卒業する彼女の挨拶のためにと
番組の最後にあらかじめ30秒の時間が
用意されました。

生放送の番組時間は5分キッカリ。
そのうち番組タイトルにおよそ15秒、
VTR2本で3分半ほど。
スタジオでのオープニングトークや
ニュースリードを入れると
5分という時間はほぼ一杯。
本当は30秒の余裕などない。
この30秒という時間は、
この日の彼女ために用意された特別な時間なのだ。

この30秒で彼女は何を話すのか。
きっと彼女は、ここ数日の間、
ずっと考え続けてきただろう。
およそ3年ものあいだ、
スタジオだけでなくロケにも出かけて体験した
楽しいことや辛いことなど
たくさんの出来事があった番組の事を話すには
30秒という限られた時間は、
どうしようもなく短いはずだ。


志半ば。

見てみたいこと。

聞いてみたいこと。

伝えたいこと、まだまだいっぱい。



いつもより言葉少なくスタジオに入った彼女の顔は
緊張からかどことなく虚ろに見えた。




しかし、時間の流れは冷酷で、
オンエアの時間は容赦なくやってくる。
生放送だから、もちろんやり直しはできない。
一瞬、頭の中で言葉を選んでいるだけでも、
時は無慈悲にも進み続けるのだ。
いつもより大きな声でディレクターが放送1分前を告げた。




時間通りに番組は始まり、
スタッフ全員が見守る中、
あっという間に時間は進み、
時計は番組開始から4分15秒を刻んでいた。

番組尺残り45秒。
エンディングタイトルの時間を入れたら
彼女に残された時間は予定通りのほぼ30秒。
彼女の30秒が始まった。





カメラに向かって喋る彼女の姿をサブで見ていた私にとっても
正直、30秒はあっという間だった。

これまでの思い出と番組に対する想いなどを話した辺りで
彼女は30秒を使い切り、
無情にも番組の残り時間は15秒を切った。



足らんな…こぼれるか?

ここからは、
それこそ一秒一秒終了時間が近づいてくる。
無理やり話を詰め込むか?
どうする?

私は、息をのんでモニター越しに彼女を見ていた。



あっという間に30秒を使い果たしてしまった彼女は、
カメラに向かって話しながら
残り10秒に迫ろうかとしている時計を確認し、
急いで話をまとめ番組を閉めた。

高ぶる気持ちを押し殺し、
きっと30秒の最後にとっておいたであろう
一番言いたかった言葉をオンエアに乗せることなく
番組を終わらせた。

儚くも短い彼女の30秒は
言いたいことが言えぬまま終わった。




番組が終わり、
スタジオから出てきた彼女は、
集まったスタッフの前で
時間が足りなくて30秒の中では言えなかったと
スタッフに対する感謝の言葉を口にして
声を詰まらせた。





志半ば。

見てみたいこと。

聞いてみたいこと。

伝えたいこと、まだまだいっぱい。







およそ3年と最後の30秒はあっという間に過ぎたけど
彼女の時間は止まらない。




次の現場でも頑張ってね。






コメント
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