新・名も無い馬ですが・・・・・

2013年11月3日に旅立ったマイネルスティング。
その想い出と一緒に、これからも名も無い馬たちの応援をしていきます。

津軽海峡とび越えてオキテに会いに行ってきたぁ!パート3

2014-11-03 | 日記
楽園イグレットから現実の世界に戻り、東京駅で今日の締めとして夕食を取り、またの再会を期してコラボは終了しました。
翌日はちょっと遠出の為、ホテルに戻って早寝です。

そして、毛玉さんと待ち合わせた上野駅から各駅で1時間40分、なげぇ~~~~!
新幹線で行けば1時間もかかりませんが、お値段が倍以上・・・・・(涙)
「急ぐ旅じゃないし。」「そだね」 などと行きは呑気モードです。
その目的地とは・・ジャジャジャジャ~ン・・群馬県でっす!
群馬でも伊香保温泉に近いかなり奥の方です。
そこの乗馬クラブに、ずっと会いたいと思っていたキョウエイボーガンがいるのです。

そうです。 1992年の菊花賞
皐月賞、ダービーと勝ち進んだ怪物ミホノブルボン。
シンボリルドルフ以来の3冠馬誕生か!という期待を一身に背負ったブルボンの単勝1・5倍。
距離の適性という心配があったにも関わらずです。
2番人気のライスシャワーが7・3倍でしたから、どれだけ確実視されていたかがわかります。
その、ブルボンの3冠達成を邪魔したとんでもない奴と言われた、その、キョウエイボーガンです。

競馬に“たら、れば”は禁句だと言いますが、もしあの時ボーガンが大逃げをうたなかったらブルボンの3冠は達成されていたのでしょうか?
それは誰にもわかりません。
でも、ライスシャワーという根っからのステイヤーが、あの時「やっと自分の出番が来た」と虎視眈眈とレースを待っていたわけです。
すんなりと勝てただろうか・・・・・・?
ブルボンファンの方には反論を受けそうですが、あの距離に関しては、どんな設定でもライスの方に分があったと私的には思うのです。

逃げ馬は、逃げなければ勝負になりません。
ボーガンもその逃げ馬でした。
“白い逃亡者”と云われたホワイトフォンティン、“狂気の大逃げ”のツインターボ、日本馬として初めてジャパンカップをを勝ったカツラギエース、そして悔しい悔しい思いをさせられたメジロパーマー(笑)と、逃げ馬には個性的な馬たちが多かったような気がします。
逃げ切るか、玉砕かのギリギリのところで勝負している姿に、何故か哀しさを感じてしまうのは私だけでしょうか・・・?
今はそういう個性派が少なくなったような気がします。

余談ですが、サイレンススズカは、逃げ馬ではなく天性のスピードが違うだけなのだと、武騎手が何かに書いていました。

1989年、4月27日、テュデュナムとインターマドンナの間に誕生した小さな馬、それがキョウエイボーガンでした。
1991年、11月に競走馬デビューした時も馬体重420キロそこそこの見栄えのしない仔だったようです。
それが、レースが始まるとポンと先頭にたちそのまま逃げ切り。
2着馬に2馬身半の差をつけるという楽勝。
そこで陣営が色気を出したのか、2戦目、3戦目はおさえる競馬をしたところ惨敗。
おまけに骨膜炎を発症し、休養を余儀なくされたのでした。

そして翌年の5月に復帰すると逃げに徹して4連勝。
それも、中日スポーツ賞(G3)神戸新聞杯(G2)を含めてですから凄いです。
一躍、夏の上がり馬として注目を集めますが、京都新聞杯でブルボンと対戦して、鼻を奪えずに9着と大敗。
その結果の菊花賞での大逃げ作戦だったようです。

ブルボンに勝つには一か八かのあの逃げしかなかったのでしょう。
でも、一人旅のボーガンとブルボンの間はかなりあったのですから、ある意味、ブルボンが先頭を切っているとも考えられるのですが。
当時、折り合いを欠いたブルボンのメンタル面を指摘した方もいました。
私的には「本当に強い馬は、どんな状況でも負けない」と思ってしまうのです。(ブルボンファンの方ごめんなさい。)

私は特にボーガンのファンではありませんでした。
ライスシャワーとマチカネタンホイザーの馬券を買っていたくらいですから。(当時まだワイドはなかったのです)
ただ、レース後、ある競馬評論家の方が 「くだらない馬が逃げた為にブルボンが3冠とれなかった」 と言ったことを知り、もの凄く悲しかったのを記憶しています。
それからです。 頭のどこかにキョウエイボーガンという名が焼き付けられたのは。


菊花賞で非難の的にされたボーガンは、その事が原因なのかわかりませんが、その後まったく勝てずにひっそりとターフを去ります。
重賞2勝もした仔でも生き残る事は砂浜からコンタクトレンズを探すくらい難しいことです。
ボーガンも馬運車に乗せられ兵庫県にある牧場に連れていかれました。
そこは場に送られる馬たちが一度集められる所でした。
ところが、ボーガンは持っている仔だったのです。
ある1人の女性が、ボーガンを探して探して、ここまで追いかけてきたのでした。
そこでボーガンは10万円で引き取られます。
1億3千万稼ぎだした馬の価値が10万円です。
どこかおかしい気がします。

引き取った女性は、普通の主婦の方でした。
たまたま読んだ雑誌に菊花賞出走馬の話が載っていて、ボーガンの事も出ていたそうです。
ボーガンの母インターライナーは、11才でボーガンを産み、それが最後の出産になったのです。
というのも、その年1989年でインターライナーは用途変更になり、牧場を出されてしまったからです。
産まれて7カ月で母を失ったボーガンに、この女性はいたく心を打たれ、菊花賞で先頭を走る姿に「この仔を飼ってみたい」と思ったそうです。
何故そんな風に思ったのかは、きっとご本人にもわからないでしょう。
神様のちょっとしたいたずら心だったのかも知れません。
それが縁というものなのかも知れません。
そして、ボーガンが引退したことを知ったその方は、無茶を承知で厩舎さんに行き先を尋ねたそうです。
普通は決して教えてはくれません。
適当な事を言ってあしらわれるのが関の山です。
でも、その方の気持ちの強さに負けたのか、ボーガンを助けてやりたい気持ちがあったのか、その行き先を厩務員さんが教えてくれたのです。

それから、あちこち点々と場所は移動した様ですが、オーナーさんはいまだにその女性の方です。

ボーガンの命は、若くして散ってしまった母インターライナーの思いが繋いだように思うのは人間的見方すぎるでしょうか。

今はもうすべて想い出という宝箱の中にしまわれ、時折誰かが取りだしては懐かしむ話になってしまいました。
その時の仲間、ライスは早世し、タンホイザも天に還っていきました。
この話を紡いでいくのはブルボンとボーガンだけになってしまいました。
だから、どうしても会いたかったのです。
そして「貴方は何も悪くない、間違った事などしてないよ。 素晴らしい名馬だったよ」と伝えたかったのです。
奇しくも今日は第74回菊花賞がおこなわれる日です。


前置きが長くなりました。
高崎で乗り換えて、小野上と云う所で降り、親切なおばさんにバス停まで案内されて歩くこと10分。
やっとたどり着いたバスの時間は1時間後・・・・・・(爆)
クラブさんに電話してみると、「駅まで迎えに行ったのに」と・・・・・早く言ってよ~。
とりあえず車で迎えに来ていただき、や~~~~~っとの思いで到着です。

いましたよ~!!ボーガン君。
童顔なのかまだまだ少年みたいな可愛さです。
やっぱり小柄で、この小さな体で3000メートルを逃げ切ろうとしたんだなぁとウルウル。
「悪者みたいに云われていますけど、おとなしいし、性格が良い。 可愛いですよ」と場長さん。




          
      明るい洗い場に出して下さいました。「初めまして、ボーガン君」 「あんた誰?」by ボーガン




          
           優しい瞳の穏やかな仔です。今年25才です。
       



          
           「お母さん、どこ行ったのかな?」by ボーガン




                                
           「何にもくれないし、帰りたいよ」by ボーガン





この場長さんは乗馬の先生でもあり、学習院の馬術講師もなさってきた方です。
長年ヨーロッパで修業をなさってきたと云うだけあって、きちんとネクタイを締めて馬に乗る、これが欧米風のホースマンなのでしょうね。
何よりも“馬第一主義”のお手本のような方で、レッスンの前に必ず馬を洗い場に出し、聴診器で心音を聞くのだそうです。
それで、少しでもおかしいと感じたら、その日のレッスンは中止。
ここは遠いので、生徒さん達は泊まりがけで来るそうですが、それでも、馬の体調によってはレッスンを受けられなかったりすることもあるのだとか。
先生にとって、お金儲けよりも馬の命の方が大切なのです。
「だからお金には縁がないんですよ」と笑う先生に、深い畏敬の念を感じざるを得ませんでした。



        
  
          
          馬に乗る時は常にきちんとした服装で。 本物のホースマンです。



そして雑談の中で、引退馬協会の話がでて、ナイスネイチャの話題になった時、「ここにも渡辺さんの生産馬がいるんですよ」と、奥様がおっしゃいました。
驚きながら、さっそくその仔の所へ。
ちょっといたずら心を出して、シャメを取り、渡辺牧場の奥様はるみさんに送ってみました。




          
          「この仔だぁれだ?」
       



すぐに返事がきて「ラックですね! 」と。
ビンゴ~!!
そうです。  キシュウラックの息子キゼンラックです。
さすが、もうかなり長く会っていない筈なのに一発でわかってしまう、強い愛のなせる業ですね。
そして、ここの先生は、はるみさんの著書「馬の瞳を見つめて」に写真が載ってらっしゃる方なのだそうです。
“昔から本当に生き物を大切になさってる方ですが、今も変わってらっしゃらないんですね”
とのはるみさんの言葉通り、犬も猫も可愛がっていらっしゃいました。
だから、そういうお気持ちに共鳴なさった方達が、交通の便もあまり良くないにも関わらず、「この先生でなければ」と自馬を預け、泊まりがけでレッスンに来るのでしょう。
この日も、何人かの方たちと、先生の教え子だと云う宮内庁の騎馬隊の方がお子様連れでいらしてました。




        
        「ども、ラックです」 ラックは先生の馬場馬術の素晴らしいパートナーだそうです。




        
        毛玉さん、引き馬させて頂きました。 様になってます。



                        

キョウエイボーガンに会えて、キゼンラックにも会えて、そしてこんな素敵なホースマンご夫妻に出会えて、ホッカホカの気持ちで帰途についたのでした。
に、しても、時間かかったぁ!!  帰りは倍に感じちゃったです。
次に来る事があったら、ケチらず新幹線にするぞっと。
それでもまた来てみたい所でした。
ボーガン、それまで元気でね!!



         
        





今回は長~くなってしまいごめんなさいです。
でも~、まだまだ続くのですよ~~~~(笑)。







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4 コメント

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あの景色は忘れません (毛玉)
2014-11-03 17:30:38
長い電車旅(片道だけど)のあと、《バス停、あの川の向こうだよ~》と教えられ、川を渡り、山を登った時のあの田園風景。
忘れません~^^;

キョウエイボーガンに会えて良かったですね^ ^
幸せそうでした。
ラックにも乗せて頂き、宮内庁さまに引き馬させて、何様な毛玉でしたが、ラックの背中の感触は、今迄、味わったことがないくらい安心感がありました。

馬に負担をかけずに、いい仕事をしてもらう。ご主人のポリシーに感動しました。

疲れたけど、いい旅でした^ ^
絶景でしたよね、たぶん(笑)。 (エドリン)
2014-11-03 20:28:14
バス停はどこだ?という不安定要素がなかったら、きっとあの景色は素晴らしかったんですよね。

今日中に着くんだろうか?とかあのおばさん、大丈夫?とかネガティブな発想ばかり頭に浮かんで、景色に見とれるゆとり無しでした。

でも、その分、素敵な人達に出会えたと思います。よね、ね。(半強請かな?)

また、そちらに行く事があったら、必ず行きたいと私は思っています。

ただし、その時には各駅停車はやめます!(笑)。
いい旅ですね! (でぃらろーしぇ)
2014-11-04 10:48:16
エドリンさん、こんにちは!
交通の便とか、山あり谷ありの道中だったようですが、素晴らしい出会いのあった、充実の時間がとっても伝わってきました。
ともあれ、エドリンさん、毛玉さん、ラスカルさん、お疲れさまでした

キョウエイボーガンさんが元気で穏やかでいてくれた事、嬉しいニュースです。そしてボーガンさんのエピソード、彼を助けようと動いたオーナーさま。じーんときました。
馬と人って、このような運命的な、もう理屈では説明できないようなことってありますよね。例えば、「説明できないんだけどとにかく好きになってしまった」とか。

ああ…でも馬を好きな人って、皆さん素敵な方が多い!エドリンさんの今回のアップを拝見し強く思いました!
素敵な旅でした。 (エドリン)
2014-11-04 19:19:10
でぃらろーしぇ様、こんばんは。

ずっと会いたいと思っていたボーガンでした。
特にファンだとかではなかったのですが、何故か「絶対会わなきゃ!生きてる間に会っておかなきゃ」という思いにかられていたのです。

これは言葉で説明できる気持ちではありませんし、説明する言葉もでてきません。

つまり、きっとこれは、ボーガンが好きだという思いに他ならない、のだと今は思います。

対する相手が人でも動物でも、好きになるのに理屈はいらないのですよね。

何だかわからないけど気になる、とか、突然その相手が輝いて見えた、とか、訳のわからない状態が、好きになるという事なんじゃないかなと思うのです。

ボーガンのオーナー様もきっと、そういう何だかわからない衝動にかられて動いてしまったのではないのかな?と、私は思っています。

そんなちょっと甘酸っぱい想像を描けた、素敵な旅だったと思い出しています。

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