新・エンゲル係数

肥満と痛風に悩まされながらも新鮮な食ネタを捜し求めて・・・

休肝日

2017年01月09日 | おいしんぼうネタ

「休肝日」という言葉を作ったのは、じつは私の親父(故・市田文弘新潟大学名誉教授)です。私と同じ肝臓内科医の父は、肝臓の負荷を下げる目的で「休肝日」を提唱しました。

 親の教えを子が覆すようで気が引けるのですが、あえて言いましょう。

 酒は毎日飲むべし-。

 この連載の第2回でも書きましたが、体内に入ったアルコールは、肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドという毒性のある化合物に分解され、これにアセトアルデヒド脱水素酵素が作用して酢酸になり、最終的に水と二酸化炭素に分解されていきます。
 この2段階の分解の際に、肝臓から「CYP2E1」という補酵素が出て、それぞれの脱水素分解酵素を助ける働きをします。

 CYP2E1はアルコールを多く摂取した時に活性が高まる物質で、普段はあまり働きません。毎日酒を飲めばCYP2E1が徐々に活性化されて肝臓の働きをサポートしてくれますが、酒を1週間飲まないでいると酵素活性は元に戻ってしまう。つまり、毎日休まず酒を飲み続けることで、肝臓ではつねにCYP2E1活性を維持させることができるのです。

よく、ウコンやシジミエキスのサプリメントを飲んで安心している人がいますが、残念ながらそれらに肝機能を維持する作用はありません。それより大事なのはCYP2E1活性を高めること。そのためには適量(日本酒換算で3合以内)を守って毎日酒を飲み続けるべきなのです。

 ただし、つい飲み過ぎてしまった時は、「1週間の総量」で計算する-という逃げ道も無くはありません。この場合は「週の上限を2升」とし、休肝日を設けて調整します。

 いずれにしても、「適量を守る」ことが重要で、これが守れないなら飲むべきではないし、遺伝的にアルコールを受け付けない人も、無理して飲む必要はありません。
 信楽焼のたぬきを思い出してください。胸と腹がだらしなく出て、陰嚢が地面に付くほど膨らんでいます。これを医学的に検証すると、胸は「女性化乳房」、腹と陰嚢は「腹水貯留」。いずれも肝硬変の特徴的な症状です。彼らはアルコール性肝硬変なのです。その証拠に、手には酒の入った瓢箪がぶら下がっている…。
 酒を上手に飲んで「百薬の長」にするか、あるいは際限なく飲んでたぬきになるか-。決めるのはあなた自身なのです。 (湘南東部総合病院・市田隆文院長/構成・長田昭二)



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