詩・続まほろばへの道

2016-09-17 01:10:29 | 
    続まほろばへの道

今日まで人を殺(あや)めていないことが不思議でならない 切通しの道から外れたこの廃屋(あばらや)の裏手ときたらすごい荒れようだ 〈罪人が隠れている〉 ドクダミの匂いの海 もつれにもつれた蔓 割れた看板の滲んだ文字〈法事ご宴会承ります〉 伸びたタチアオイの傍の納屋 棚に並んでいる茶色い壜 親父はこんなものを飲んで死のうと思ったのか 運がいいのか悪いのか 或いは神々のおめがねにかからないだけのことなのか ぼくにはまだ人を殺める衝動が訪れない カクレミノのように生きている 〈殺める〉ことを 非難も擁護もできやしない 僕だって危ない 誰もが憧れるまほろば まほろばへの道は不安だらけだ 獣が棲んでいる 人ごとではない 日々は自分を疑うために訪れている そのうち 必ずや運命の番人は 僕に擦り寄ってくるだろう まほろばへの道で自分の体臭を嗅いだ時 ぼくは自らを殺める言語を手に入れるだろう 切通しを歩く人の声 廃屋を覗いている肥えた豚の目 父がしたように 棚から取った農薬の壜を割り 白い液体をドクドク 葉に振りかける 道が消される


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詩・ホイヤーソレソレ

2016-09-16 03:50:29 | 
    ホイヤーソレソレ

プロヴァンスの軽い赤ワインを飲んだのは
ディナーの時だったから
もうとっくに酔いは醒めていた
終電車が出てしまってから
ビルの中の密閉した部屋で
ジョージア・オン・マイ・マインドに声を嗄らした
ぼくにはジョージアがない
壁から襲ってくる寒気
こんな時なのかもしれない
あなたにいて欲しいのは
ぼくはまだ眠らない
ひたすら歩く
ホイヤーソレ
港町までひたすら歩く

ぼくに向って吹く真夜中の砂嵐
その先にぼくは何を見ようとあがいているのか
振り払ってもふりはらってもつきまとうものを
絞め殺す力が足りない
寝静まった家々の戸口でぼくはつぶやく
いつか決着をつけよう
そして歩く
地球のデコボコを
踏んで踏んで踏んで踏んで
ホイヤーソレソレ
午前三時
ミッドナイトはこれからさ
ぼくのジョージアはどこだ

冷たいワゴン車の床
こんなところでも
海老になってあなたを抱いて寝たいが
待っている女よ
ぼくたちの距離はちぢまらない
あなたは何億光年も先にいるお方だ
無理な話さ
光にでもならないかぎり
それでも叶わぬことかもしれない

鬼さんこちら 手の鳴る方へ
耳をすましてぼくは眠らない
執行人よりも素早く
死を完結するふりをして
だらしなく横になっている
朝が来てしまう
ホイヤーソレ
あなたの合いの手が聞こえない
ホイヤーソレソレ
あなたに会うための時間が
どんどん足りなくなる
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タイガースファンと大阪の話芸

2016-09-14 02:24:47 | 阪神タイガース
ついでにひとつ、タイガースファンを象徴するエピソードを紹介しておこう。場所は甲子園球場、対巨人戦の九回裏ツウアウトでランナー2、3塁、得点は2対3で阪神が1点リードされています。ここでヒットが出れば逆転サヨナラです。その時球場全体から「川藤コール」です。
「川藤出さんかい!」の大合唱、その期待に監督は「代打川藤」を告げます。川籐選手がガニ股姿でバットをブンブン振り回して颯爽と登場です。黄色いメガホンが上下左右に振られ、スタンドは最高の盛り上がりです。しかし結果は、あえなく2塁ゴロでゲームセット。するとスタンドからは落胆のため息と「アホ、ほんまに出してどないすんねん。」のきつ~いお言葉。オヤオヤ、怒りの矛先は川籐を出した監督に向けられました。川籐に対するヤジはありません。しかしこれが大阪のジョークなんです。濃ければ濃いほどしこりが残らない、もうこれは大坂の話芸ですね。悔しいけれど憎めない川藤選手へのお叱りなんです。しかもこの話芸が阪神ファンによる選手の育成方なんです。このファンにしてこのチームあり!と言ってしまえばオシマイなんですが、このいい加減さで恨みっこなし!だから阪神ファンを止められない!ああ、生きているうちに美酒にありつけるだろうか?(2011・10・1記)来季期待です。金本さん!
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華やかなりタイガース鳴尾浜球場

2016-09-13 09:31:22 | 阪神タイガース
数日前、掛布さんの姿が見たくて鳴尾浜球場へ行った。対オリックス戦、ファームの試合は初めての観戦、無料というのが有り難い。ニュースなどで知っていたが掛布人気はこれだけの人をあつめるのかと思ったが、同時にオリックスのファンも負けてはいなかった。今やカープ女子が世の話題を独り占めしているが、なんのなんの、オリ姫たちもすごいじゃないか。この時間(お昼12時半)旦那は上司の目を気にしながら仕事をしているんだろう、なんて余計なお節介、お気に入りの選手の名をあげながら、ベンチやブルペンにスマートフォンを向け続ける。「ベンチに姿は見えないけど、ブルペンに居るみたい。居ることがわかればいいわ」バックネット裏の僕の隣りにいたオリ姫たちの会話。するとその横へ黄色いタイガースのハッピを着た小柄な可愛いトラ姫が来て、望遠レンズを付けたカメラをタイガースベンチに向けて向けてバシャバシャ。これにはおじさんも試合どころではなくなってきたのだ。しかも1軍2軍行ったり来たりの若手には実力の差を感じているし陽川、横田馴染みになりつつある名前にも結果はハズレっぱなし。楽しみは2軍戦とはいえ、埋め尽くしたスタンドに華を添えている両軍の姫たちの姿になってしまったというわけです。それにしても低迷タイガースをこの鳴尾浜がどれだけ救っていることだろう。どうやら当分鳴尾浜にハマリそうだ。
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詩・ほおずき

2016-09-08 11:47:35 | 

     ほおずき
               

  つかの間の
  逢瀬の
  時間の流れを惜しみながら
  橋の上で昔話にふける
  幾枝もの流れを集めた暴れ川の
  上流と下流をしずめる堰

  あなたの耳朶の向こうの
  湯の町の道に
  ほおずきのような
  灯りが点いた

  戻りましょうか 宿へ
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