何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

悪が生まれた日、解き放たれた日

2018-09-11 18:59:49 | ニュース
いつの頃からか、9月11日というと、悪が生まれた日、あるいは悪が解き放たれた日と思うようになった。

あの日、世界中が目の当たりにした悪は、今なお悪の連鎖を招き、悪を増殖させているという最悪の状態だが、その悪が最悪の悪である理由の際たるものは、一番の悪が表舞台に出てきてはいないように思えることだ、と思う。

そう思うせいか、9月11日の悪というと、思い出す本がある。

「カーテン」(アガサ・クリスティー 訳 中村能三)

本書は云わずと知れた、アガサ・クリスティ―のポアロシリーズの完結編だが、それまで数々の殺人事件を解決し、正義を貫いてきたポアロが、法では裁くことのできない殺人者に自ら鉄槌を下すというという問題作だ。
しかも、ポアロが愛してやまなかったチョコレートに毒を仕込んで、事にあたることから、どれほどポアロが、この悪を憎んでいるかがよく分かるという、悪だ。(『 』「カーテン」より)

その悪とは、ポアロの言葉を借りれば、『触媒作用ー第三の物質が介在する場合にのみ二つの物質間に反応が起こり、しかもその第三の物質は明らかに反応に参加もしなければ偏執もしないという現象ー』で、他人を操り罪へと導く、というものだ。

ポアロは、『人は潜在的殺人者』だという。
『殺してやるとは思わないまでも』『殺してやりたいと思うほど腹が立ったよ』という感情は誰しも持つものだ、という。

仮にそう思うことがあったとして、ほとんどの人が実行しないその感情に、触媒作用を施し、罪へと導く本書の犯人。
もしかすると、本人が意識していない、その感情をわざわざ呼び起こし、罪へと導く犯人。

その犯人が、罪へと導くために駆使するのが、精神への「影響力」だという。
その、他人に影響力を与えることができるという認識は、『権力意識を育む場合がある』という。
一度この種の『権力意識』に味を占めれば、『苦痛の、そして精神的拷問の中毒患者』『食べればなお食欲が出るというやつ』になるという。

このような悪は、何も殺人やテロなどと云う極端な例をあげなくとも、存外身近なところに潜みうるように思わせる、9月11日。

今なお真実が分からぬままに、その悪だけは増殖を続けているのを見ると、9月11日は、悪が誕生した日、悪が解き放たれた日と思わざるをえない。


<アメリカ同時多発テロから17年 約1万人の人々が9.11関連の癌に 今も9.11は終わっていない>
飯塚真紀子 | 在米ジャーナリスト 9/11(火) 14:39配信より
https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20180911-00096410/


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