何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

小説に学び 小説に勝て

2017-01-18 00:17:51 | ニュース
昨日1月17日は、阪神淡路大震災から22年だった。

あの時には、これほどの惨事を二度と見ることはないだろうと思ったのだが、あの日から22年、地震だけでなく噴火に土砂災害など、毎年毎年 被災地と呼ばれる場所ばかり増えてきた。
それにともない、災害を取り上げる小説が増えるだけでなく、その過激度も増している、増しているのも拘わらず、それより更に信じがたい大災害が起るのだから、来るべき南海トラフや富士山噴火はいかばかりか。

ただ、災害小説が単なるフィクションの絵空事ではいことも確かである。
災害パニック小説という分野があるとすれば、間違いなくその第一人者として名を挙げられるであろう高嶋哲夫氏の作品は、あまりに先見の明がありすぎ、恐ろしいくらいだ。

災害三部作と云われる「M8」「TSUNAMI 津波」「ジェミニの方舟 東京大洪水」のなかでも特に強烈に印象に残っているのは、「TSUNAMI 津波」だ。
図書館で借りて読んだ本なので正確ではないかもしれないが、2005年に出版された本書は、三連動の大地震で引き起こされた大津波に襲われた原発がメルトダウンしそうになるという話だ(ったはずだ)。

出版から間もない時期に読んだ時には、そこに、電源喪失の恐ろしさも、水蒸気爆発の危険性も、それらを経てメルトダウンに至ることも書かれていたにも拘らず、何も理解できていなかった。
それが、東日本大震災後 改めて読んだ時、「TSUNAMI 津波」に書かれていた用語の一つ一つの意味が実態をともない胸に迫ってきた。
しかも、本書では原発職員の英雄的行為によりギリギリのところで回避されたメルトダウンが、現実には起ってしまった。

事程左様に、かなり過激だと思える小説を超える事態が生じてしまうのが、悲しいけれど現実で、まさに「事実は小説より奇なり」だが、著者・高嶋氏の日本原子力研究所の元研究員という経歴を考えれば、本書は高嶋氏にとって奇想天外な絵空事ではなかったはずだ。ご自身の研究と経験に基づき想定される最悪の事態を小説にされたのだとすれば、何故これを(実際に)危機管理にあたる人々が想定し、対応してこなかったのかと悔やまれてならない。
だが、悔んでばかりでもいられない。
高嶋氏はその後も、強毒性インフルエンザのパンデミックを「首都感染」で書き、経済に壊滅的打撃を与える首都直下型大地震を「首都崩壊」で書き、富士山噴火はそものもズバリ「富士山噴火」で書くなどし、世に警鐘を鳴らし続けておられるので、今度こそ対処を万全にしなければならない。
危機管理を統率する人々にこそ心して読んでほしい本だと、阪神淡路大震災の日から22年、思っている。

ところで、阪神淡路大震災の時には、海外から災害救助犬派遣の申し出が多数あったにもかかわらず、検疫に拘ったために受け入れが大幅に遅れ、生存者の発見につながらなかったと記憶している。
この手痛い経験から、現在では国内でも災害救助犬が養成され活動しているのは、殺処分寸前のところを救われ災害救助犬となった※「夢の丞」の活躍もあり、広く伝えられているが、そんな災害救助犬が山岳救助犬としても活躍する本が、「南アルプス 山岳救助隊 k-9」(樋口明雄)シリーズだ。

東日本大震災で、災害救助犬として活動したボーダー・コリーのメイとそのハンドラーである星野夏実が、山梨県警山岳救助隊(南アルプス山岳救助隊K-9)として北岳で活動する本シリーズ。
シリーズ当初の「天空の犬」「ハルカの空」は所謂山岳救助モノだったのが、最近では大規模テロの首謀者を山で迎え撃つ「ブロッケンの悪魔」や、誘拐犯が人質を連れ込んだ山で大規模噴火が起る「火竜の山」へと、過激度を増している。

山に、’’山’’以外の要素をあまり紛れ込ませないで欲しいと思わずにはおれないが、明らかに噴火警戒レベルをあげる状況にありながら、市議会の多数派や商工会議所の青年部が、山を観光資源としてしか見做さないため、その判断が遅れる場面(「火竜の山」)を読んでいると、最近の観光地での噴火警戒レベルのスッタモンダを思い出し、高嶋氏にも樋口氏にも、警鐘を鳴らす本をどんどん書いていただかなければならないとも思っている。

「火竜の山」などにみる、犬と人との絆については、又つづく


K-9について「火竜の山」より引用
欧米では警察犬や災害救助犬を使うチームのことを、ラテン語が語源の犬をあらわす英単語、canineの音をもじってk-9と呼ぶらしい。


※ 夢の丞の活躍
「命をつなぐ夢」「夢が生き、夢で生かされる」「ワンコと人の絆は永遠」

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする