検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

敷地に山積みされた樹皮  連載小説151

2012年11月12日 | 第2部-小説
  将太には気になることがあった。山の木はどうなっているのか。航空機モニタリングでは一帯は放射能汚染されている。当然、山の樹木も汚染されている。林業はどうなっているのか。車を走らせていると木材加工場のそばを通った。原木の丸太が積まれ、その隣にスレート葺きの加工場があった。占部林業の貝田の加工場より大きいと思った。

  そして車が敷地を抜けようとした時、敷地の奥に、屋根の高さほど積みあげた樹皮が目に入った。樹皮は堆肥やペレットなどに利用するので加工場でこれほど積み上げることはない。その光景を写真に撮ると事務所をたずねた。

 ドアを開けると女性職員が1人いた。
「ごめんください。少しおたずねします」
「はい、なんでしょ」
 女性は席に座ったまま、にこやかに応対した。
「工場にバークが積まれていますがあれはどうしてですか」
 単刀直入な将太の質問に女性職員は表情を変え「どちら様でしょうか」と質問した。
「ドライブにきた通りがかりの者ですがふと目に止まったものですから」
「それでどのような目的ですか」
「目的といわれると、何かあってではなく、バークが積み上げられているのは珍しいので・・・」
「いま、所長がいません。午後には戻ると思いますのでもう一度、お越しいただけますか」

  将太はドライブの途中だからもう一度、戻ることはないのでというと木材工場を後にした。女性職員は自分の質問に警戒し、防衛本能で追い返したようだと思った。
自宅に帰ってから占部林業の貝田に電話した。貝田は「あそこは放射能の除染地域になっているからバークは移動禁止になっているようです」とあっさり説明した。

 やはりそうだったのか。あの女性職員は放射能汚染でピリピリしていたのだ。おそらく売上にも影響しているに違いない。移動禁止がいつまで続くのか。どこで処分するのか。放射能の除染問題、汚染物質の処分方法と最終処分地はいまだに決まっていない。被害は福島だけでない。250キロメートル離れた場所でも発生し、いつ終息するのか分からないのは関係者にとって大変なことだと思う。