検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

栄村の村づくり憲章

2013年09月30日 | 栄村の今
 栄村は前号で紹介した通り、長野県の最北端に位置し、東西19.1キロメートル、南北33.7キロメートル。南部に苗場山など2000メートル級の山岳がつらなり、92.8%を山林原野が占める山村。平地は少なく山すそを切り開いた棚田で稲作。年間積雪は130日から160日という日本有数の豪雪地帯で人口は2,203人、65歳以上高齢者が45.6%(24年)を占めています。

 農家人口は平成17年度調査で2,160人といいますから村民は全員農家と言ってよい。しかし事業所分類によると農林漁業は6事業所しかない。事業所で多いのは卸・小売・飲食が64事業所、サービス業68事業所、これに建設業26が続く。飲食、サービス業が多いのは秘境で有名な秋山郷や栄村の風景を見に來村する観光客が多いから。
 千曲川沿線は年間9万3千人が訪れ、秘境・秋山郷には2万6千人が訪れる。しかし観光客数は年々減少。経営耕作地も減少している。
 その中でいかに村民が元気に生涯を栄村で過ごすか。その理念をあらわしたのが栄村民憲章  
  その村民憲章をはじめに紹介します。

栄村民憲章
一、自然を愛し、環境を整え、美しい村を作ります。
二、生産をすすめ、豊かな、くらしよい村をつくります。
三、子どもをはぐくみ、おとしよりを敬う、温かい村をつくります。
四、体をきたえ、大自然の中で躍動する、活力ある村をつくります。
五、心のふれ合いを深め、礼儀に厚い、連帯感にみちた村をつくります。
六、教育を尊び、知識を求め、創意にあふれた村をつくります。
 こうした憲章を持つ栄村。独自事業を展開した村づくりを紹介します。次回
  栄村の村づくりを話してくれた鈴木敏彦村議

栄村の今、黄金色の風景と土石流

2013年09月27日 | 栄村の今
 9月23日の栄村(人口2,203人、65歳以上高齢人口45.9%)は一面、黄金色。国道117号線に並行してJR飯山線が走り、右手に水量豊かな千曲川が流れています。栄村は新潟県津南町と隣り合わせ。いずれも日本一の豪雪地帯ですが訪れた日は気温29℃。

 立ち寄った森宮野原駅近くのお店で飲み物を買って挨拶代りに店番の女将に聞くと、「台風のせいだ」とうんざりした顔で言葉が返ってきた。いつもは涼しい季節なのだと思った。しかし元気な奴もいた。駅の草むらに棲みついたキリギリス、鳴く季節でないのにあちこちで鳴いているのには驚いた。

  栄村の鈴木敏彦村議さんとの約束時間は午後3時。それまで4時間ほど時間がある。村の秋の風景と地震、台風18号の被害状況を見ておこうと、車を秋山郷に走らせた。千曲川を渡り、秋山郷に向かう道はゆるやかな登り道が続きます。 
   平地は少なく、小さな棚田が山すそから谷に向かって連なり、道はその真ん中を縫って奥に続く。奥は秋山郷。その先は2000メートル級の山が連なり、その先に道はない。秋山郷は秘境中の秘境。

  1つの集落を抜けると山道、そして10戸から20戸の集落が現れる。その中には本家と分家だけの集落もあるとききました。先祖伝来、何代も続く農業を中心とした集落です。栄の米は有名、5キロ3,000円です。現地の道の駅でこの値段ですから都内だともっとすると思う。

  すごいと思ったのはほぼどの田の稲も稲架けをした天日干しだったこと。埼玉で天日干しの稲はめったに見かけない。しかし栄村ではどこもが天日干しをしている。その手間、もともと美味しい米をさらに美味しくしているのだと思った。

  車を走らせていて秩父の中山間地と違うと思った。耕作放棄地、廃屋がないのだ。気がつかなかっただけなのかも分からないが、少なくとも目にした範囲、廃屋はなかったし、耕作放棄で荒れ放題の農地は目にしなかった。

  棚田は稲刈り時期の真っ最中、刈り入れがまだ済まない田の方が多いので集落は黄金色に色づいていました。そして各地で目にするイノシシや鹿よけの防護柵、網がまったく見かけなかった。「この山奥で、熊が出るというところで獣よけの柵や網がないのは」と思ったがよくよく考えると、栄村の積雪日数は年130日~160日。冬眠をしないイノシシ、鹿は棲息できないのだ。

 その厳しさに耐え、育った稲は埼玉で見る稲と比べ、かなり丈が短かい。それは余談として、収穫前の棚田風景は本当に美しいと思った。沢山の人が訪れるというのも納得。心いやされながら、2年半前の地震の痕跡を探しましたが見当たらない。台風18号の豪雨で住民に避難勧告が出たのですがそんな様子もない。ただ道を走り続けると秋山郷につながる道は「通行止め」の看板。災害の痕跡があったのはただそれだけ。それ以外、山の緑と澄んだ谷の水、黄金色の棚田、美しい日本の原風景が詰まった栄村だった。

村議と約束している場所へ。
  村議の鈴木敏彦さんから1時間ほどお話を聞く中で分かったのは、2年半前の地震で被害が大きかったのは秋山郷周辺でなく、栄村役場を中心とした地域でした。そして台風18号の豪雨で避難勧告が出たのも地震被害が大きかった青倉地域。
 土石流が襲った中条川の現場に鈴木村議さんの案内で行った。(写真) 
 (土石流は谷を埋め道路にあふれ、事務所を破壊)   2年前の地震で上流の山が崩落して土石流が発生。その後、3つの砂防ダムが造られた。完成したばかりの3つの砂防ダム、これが再び発生した土石流ですべて埋まり、谷からあふれた土石流は道路にまで達して、事務所を直撃して破壊した。谷底から道路まで50メートルはあるかと思う深さ、それが土石で埋まり、川幅は数十倍の広さになって荒々しい姿に一変。

 上流を見ると、彼方に土石流の原因となった山の緑が消え、崩落の跡をさらしていた。土石流は集落の手前でかろうじてとどまったが山に亀裂が入っている。再び、土石流発生の恐れがあるという。そうなるとどうなるのか。不安は尽きない。

 土石流は一瞬にして襲ったという。「危険」と言われている地域に住んでいる場合、避難勧告が出たら、早く避難する。様子を見て、判断するのでは間に合わない。土石流の現場に立って、自然の破壊力の恐ろしさを実感。

 おだやかな集落と自然の破壊力にさらされている集落。関係者のみなさんのご苦労を推察しました。

  土石流が襲った中条川の下流にかかる橋の真ん中に役場職員が川の様子を見に来ていました。
「この川も暴れ川になったなあ」。職員のつぶやきが聞こえました。地震前まで中条川は渓谷美が自慢の美しい川だったという。その川が一変したのです。急流の下に集落(青倉・中条)があります。

  職員は川の様子が気になり休日にもかかわらず様子を見に来たのです。村を思い、村民を思う気持ちが伝わりました。そうした職員がいる栄村は村づくりでいろいろ知恵を出し、創意的な取り組みをしていることで有名です。次回

栄村の復興住宅

2013年09月26日 | 栄村の今
  突然ですが、上記の写真は長野県栄(さかえ)村の復興住宅(村立住宅)です。
 栄村は東北大震災が発生した翌日、3月12日未明、震度6強の地震(長野県北部地震)が発生、全壊33棟、半壊169棟など大きな被害が出た村です。
 地震発生のあと、一度訪れましたがその後、復興がどうなったのかこの9月23日、訪ねました。

 鈴木敏彦村議さんに教えてもらった場所に行くと、あったのが写真の復興住宅です。軽自動車と比べると大きさがわかると思います。一戸建てです。村立住宅ですから家賃を払います。その家賃は所得に応じて違いますが8000円から2万円です。
 下記の住宅も村立の復興住宅(賃貸)です。

 写真の建物は一つの家に見えますが一棟2戸の造りです。2世帯が入居しています。素晴らしいと思ったのは一戸一戸が集落や住宅の中に建てられていたことです。1か所に集中して建てていなかったことです。これは本当に良かったと思います。
 仮設住宅は仕方ないとしても生涯住む「復興住宅」はやはり家として、周りと比べても見劣りしない家であって欲しいです。

 その点、栄村の復興住宅はそうしたことにも十分配慮しているように思いました。
東北3県の復興住宅も栄村のような家が建つようになって欲しいと思います。

 しかし残念なこともありました。「設計がすべて同じ」です。同じ家が建っているのです。鈴木敏彦村議は「一つ一つ変えるべきだと主張したが「届かなかった」と残念がっていました。これは村の意向だけで決めることができず県や国の意向が大きく影響しています。お金を出すところの意向が大きい。経費の削減、緊急ということで同一仕様になっています。

 そうではなく、やはり一戸一戸設計が異なる。入居者の希望を取り入れた復興住宅にしなければいけないと思います。いかがですか、みなさま。


 

信用できない東電発表資料

2013年09月25日 | 検証・電力システム

上記の資料は東京電力が「平成23年3月11日、東日本大震災の地震と津波によって、太平洋側の発電設備を中心に大きな被害を受けました。」として、ホームページに載せている資料です。
 被害の大きかった原子力発電、火力発電の合計は1,830万kwです。一方、震災による供給力の低下は2,100万kWと説明しています。これは比較的小規模被害による発電停止などを加えた数字です。
 そして震災・福島原発事故により供給力は5,200万kWから3,100万kWに減少したと言っています。

 しかし、私は前号で東京電力の「認可最大出力」を紹介しました。東京電力の認可最大出力は6,532万kWです。

これまで供給予備力を取り上げてきました。災害や事故に備えた予備力。震災・福島原発事故で2,100万kWが損失したとしても供給力は6,532万kW-2,100万kWとなり、供給力は4,432万kWとなります。
 もしそうでなく、東京電力の言う5,200万kWであるとすると、資源エネルギー庁が発表している「電力調査統計」はデタラメだということになります。「電力調査統計」がデタラメとは思いません。
 あの震災と事故で東京電力の供給力は2,100万kW消失した。しかし4,432万kWの供給力はあったと見るのが順当です。

 そしてそうだとすると、東京電力が一方的に実施した「計画停電」と「電気使用制限」は実施の必要性、緊急性はなかったのです。
 なぜそう断言てきるのか。次回

原発ゼロと日本の電力供給力

2013年09月24日 | 検証・電力システム
 発電量に占める原子力発電の割合は電力各社によって違います。下記表はその割合です。 
  また、下記グラフは東北大震災、福島第一原発事故前の2010年(平成12年)8月と震災と事故が発生した年(2011年)8月と翌年(2012年)8月の自社発電と他社受電を加算した供給力(発電量)です。 
  各社によってずいぶん違いのあることがわかります。北陸電力は他社受電より北陸電力から他社に融通しています。北陸電力の原発割合は21.6%です。少ないとは思いませんが原発が停止した中でも他社に電力を融通(供給)しているわけです。

 四国電力は原発停止により自社発電は減少し、他社受電が大きく増加しています。
 東京電力を見ると、他社受電は震災前と比べて変化はなく、自社発電でまかなっています。
 
 ところで震災当時、東電は3月末まで計画停電を一方的に実施、夏季(7月1日~9月9日の平日9時から20時)に、政府は電気事業法第27条に基づく電力使用制限を発動しました。私をはじめ、恐らく多数の人はその措置を「やむを得ない」と思って受け入れたと思います。(不同意を表明しても一方的実施でしたから抵抗のしょうがなかった)

 供給予備力も吹っ飛ぶ発電と送電停止が発生したのだと・・・
 その後、震災当時の電力需給資料が東電と政府から相次いで発表されました。
 その資料を見ていて「オャ!」と思う数字がありました。資源エネルギー庁が発表している「電力調査統計」の「認可最大出力」と違うのです。
 一桁、二桁の違いではありません。次回

日本の電気事業、供給予備力

2013年09月21日 | 検証・電力システム
 前号で触れた「地域間連系線」は万一の事故で電源喪失(発電所が発電できなくなるなど)した時、他社から電力を融通してもらうためです。この連係線は電力の安定供給を確保するための仕組みですがもう1つ、安定供給を確保するために備えている取り組みに「供給予備力」というものがあります。
 下記表は全国大の電力供給力と供給予備力です。この資料は電気事業法に基づいて電力10社から提出された「電力供給計画」からまとめた資料です。 
 はじめに表の説明をします。
「需要電力量」とは、その年の年間電力消費(需要)量です。単位はkwhです。
「最大需要電力」とは、ピーク需要電力量です。この表では年間を通じてもっとも電力消費が多かった電力量を示しています。

 「供給力」とは、電力10社が所有している発電施設の発電能力(出力)をあらわしています。供給力を超える電力は生産できません。ですからピーク需要は常に電力会社の所有する発電施設の「供給力」以内です。「供給力」を超えた発電はできません。
 「予備力」は「ピーク需要」と「供給力」の関係で決まる数値です。計算式は「供給力」から「最大需要電力・ピーク需要」を差し引いて算出した割合です。

 ご紹介した表で見ると、平成20年度の供給予備率は10.2%、平成21年度は26%、平成22年度(計画)は14.4%となっています。

 「予備率」は「ゆとり」です。万一、なんらかの事故で発電が停止した場合、「予備力」でその穴埋めをします。国は指導基準として最低でも3%、平常時は8%~10%の予備率(ゆとり)を確保することとしています。すなわちこれはピーク需要を上回る「発電施設を持て」ということです。

 平成21年度の予備率は26%ですから、これは国指導基準を大幅に上回っています。発電余力があるということです。平成22年度(計画)の予備率が下がったのは最大需要電力(ピーク需要)を多く見積もり、「供給力」を少なく見積もったためです。供給力が下がる要因としては定期検査などがあります。
 原子力発電が実質ゼロとなって、電力各社の「供給力」はどうなっているのかをみます。次回

日本の電力事業の基本的な仕組み

2013年09月20日 | 検証・電力システム
 前号は「表向きは「安定供給」。想定は福島第一原子力発電事故の再発。そして再発事故が起きても安定供給する。その事業とは何かを見ます。」で終わりました。
今回、検証するのは「その事業」です。

「その事業」とは、地域間連系線の強化事業です。これは何かというと電力会社同士の送電網を連係する送電施設、送電網を強化する事業です。
なぜこの事業の強化が必要なのか。それには日本の電力事業はどうなっているのか知っていただく必要があります。

 いま、日本の電力事業は下記絵の通り、全国を10にブロック割りして、1つのブロック(地域)に1社だけ電力事業の営業を認める、地域独占体制になっています。
   そして、電力会社が消費者(需要者)に電力供給の責任を負うのは、自社エリアだけです。例えば東京電力は東京、千葉、神奈川、埼玉、山梨、静岡の一部、群馬、栃木、茨城の1都8県です。

 ですから電力会社はエリア以外の電力需給に責任はなく、他の電力会社の地域に電力を供給することはしません。

 しかし、万一の事故に備えて、他社と連係した送電網は構築しています。だが目的は緊 急時、非常時に融通し合うためですから平常は使用しません。

 このように、各電力会社は自分のエリア内の電力需要だけを考え、まかなうために必要な発電を行い、所有する送配電網でエリア内の需要者に電気を供給しています。
 これが日本の電力システムの基本構造です。

(図出典:電力システム改革専門委員会)

電力の安定供給に原発は不要

2013年09月19日 | 検証・電力システム
 「電力システムに関する改革方針」は「安定供給の確保」のために次の3つの取り組みをするとしています。

 ひとつは、「送配電事業については、引き続き地域独占とし、総括原価方式等の料金規制により送配電線等に係る投資回収を制度的に保証する。また、引き続き、系統全体での需給バランスを維持する義務を課すことにより、安定した周波数や電圧など、経済活動の基盤となる高品質な電力供給を確保する。」
 ふたつ目は「さらに、緊急時等における国、広域系統運用機関、事業者等の役割分担を明確化し、国が安定供給等のために必要な措置を講じる枠組みを構築する。」
 三つ目は、「このほか、全面自由化に当たって、小売電気事業者の供給力確保や、広域系統運用機関が将来の電源不足に備えて行う発電所の建設者の募集等、必要な制度を新たに措置することで、安定供給に万全を期す。」

 いづれも短い文書ですが重要な事項を盛り込んでいます。一つ一つ検討が必要ですが今回は「供給力確保」を取り上げます。

ここでやろうとしていることは「義務を課す」という仕組みづくりです。これまでも電力事業者は電力供給義務が課せられていました。しかし東北大震災、福島原発事故による停電で「供給義務違反」を問われた電力会社はありません。

 重要なのは「義務違反」の追及ではなく「必要量を確保させる責任を負わせる」ことが目的です。

一見、当然のことの様に感じますがこの2年余り、原子力発電の稼動は実質ゼロの中での「安定供給確保」策です。この程度の対策で必要な電力量を確保できるのだとすると原子力発電は不要、ということではないでしょうか。

電力量の確保に必要がない原子力発電。「改革方針」(閣議決定)も、原子力発電の再稼動や必要性について一言も触れていません。だが別の場所(研究会)で原子力発電のための対策事業を推進しています。表向きは「安定供給」。想定は福島第一原子力発電事故の再発。そして再発事故が起きても安定供給する。その事業とは何かを見ます。次回

原発再稼動につなぐ「安定供給」と「電気料金抑制」

2013年09月18日 | 検証・電力システム
 「低廉で安定的な電力供給は、国民生活を支える基盤である。」で始まる「電力システムに関する改革方針」(閣議決定)。このことに反対する人はいないでしょ。だれもがそうだと思う言葉です。国民感情をよくとらえた文書だと思います。

 そして次に「電力システムの改革の目的」は電力の「安定供給」と「電気料金抑制」。
 こうした言葉が続くと、「まかせておいて良い」という気持ちになりませんか?
「難しいことはあると思うが安定供給と電気料金抑制を考えてやるというのだから・・・・」と、政府に白紙委任するような気持ちになるのでは?

 だが同じ商品を並べて1個48円、22円、14円、13円、8円、6円と値札がついていると、みなさんはどうします。
 私などは「これ皆同じものなの?」と聞きます。
「全部同じですよ!」と言われたら、私は一番安い値札がついたものを買います。
 電気はつくる電源は違っても、電力という商品になると品質はみな同じです。でもコストは電源によって違います。下記の表は電源ごとのコストです。  (表「コスト等検討委員会」)
一番コストが低いのは原子力発電です(このコストには政府が原子力発電関連に投入している政策費用、最終処分費用などが含まれていない)。
 今回の福島第一原発事故処理、廃炉費用などを考えると原子力発電のコストは各電源の中で最も高くなるという計算もありますが表は政府が明らかにしたコストです。

 「改革方針」はいいます。「原子力比率の低下、燃料コストの増加等による電気料金の上昇圧力の中」と。実際、今年9月の家庭電気料金は電力会社によって違いはありますが2013年3月と比べると28%~7.3%も上がっています。

 小売全面自由化では電力会社や電源を選んで契約できるようにすると言っています。そうなると生活防衛から最も安い電源を選ぶのが普通の国民心情ではないでしょうか。

「安い電源から順に使う」中に原子力発電を含んでいますから、再稼動をして契約の自由化を実施すれば、原子力発電は再び、不動の地位を獲得できる。「改革方針」の究極の目標です。
 「安定供給」、何が問題なのか。次回

「電力システムに関する改革方針」、目標は原発再稼動

2013年09月17日 | 検証・電力システム
 電力はいまや産業、生活においてなくてはならないエネルギーであり、電源です。この電力は日本を10ブロックにエリアを分割し、1社だけの営業を認める地域独占と投資を回収して一定の利益を保証する総括原価方式で保護されてきました。発電と送配電網を独占する電力会社は地域では絶対の存在で、その経済界のトップの座も占めて電力王国を築いてきました。

 この構造を維持したのは官僚との構造的癒着です。電力会社は官僚の天下りを積極的に受け入れ、国政・地方議会に議員を送り続けました。不動の王国を築いてきました。
しかしその独占的市場支配は前号で触れた通り、他の産業界からブーイングが起こり、独占的支配体制の維持は難しくなり、電力システム改革が行われてきました。これも前号で触れた通りです。

 改革の流れを加速させた1つは政権交代です。これに追い討ちをかけたのが福島第一原子力発電の水素爆発と放射線量の拡散・汚染です。この事故で東京電力は自力では対策が取れない経営破たんに墜ち、王国の振る舞いはできなくなりました。

 原子力発電を基幹エネルギー、ベース電源にして電力供給をする政官財のエネルギー戦略は根底が崩れました。だとすればエネルギー戦略、エネルギー基本計画を根本から見直すことです。政権交代した安倍内閣は「ゼロベースで見直す」と言っていますが、その一方で原子力発電の海外売り込み行脚をしたり、規制委員会が安全性を判断すれば再稼動に努力すると表明するように原子力発電を引き続き推進・強化する姿勢を強めています。

 今回の「電力システム改革」はそうした状況・情勢の中での「改革」です。「改革」推進の彼方に原子力発電の再稼動がありますから「改革」は原子力発電の再稼動をうながすことを最大の目的にしているといえます。
 その戦略こそ「改革方針」が改革の目的にかかげた「安定供給を確保する」「電気料金を最大限抑制する」です。

 この目的がどうして原発再稼動、推進につながるのか。次回