検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

新企画を開始します

2013年09月02日 | 第2部-小説
 「自然エネルギーですべての電力をまかなうわが町」連載小説は構想を練るため、途中ですがひとまず中断します。
 政局の変化が連載小説より早く、物語の方がついていけなくなりました。

 エネルギー問題は引き続き、日本の大きな問題だと思っています。おりしも安倍内閣は今年4月「電力システムに関する改革方針」を閣議決定し、その内容にそった「電気事業法の一部改正法案」を国会に出しました。衆議院は通過しましたが参院で審議未了により廃案になりましたが次期、国会に再提出するのは間違いないと思います。

 この法案はあまり良く知られていません。発送電分離、小売全面自由化になると歓迎する声がありますが、私は手放しで歓迎できないと思っています。再生可能エネルギーの普及にとっても大きな壁になると思います。
 なぜか。次回連載は、検証「電力システムに関する改革方針」にします。

太陽光発電のすごい力 連載小説354

2013年08月09日 | 第2部-小説
 このポテンシャルの太陽光発電には住宅は含んでいません。日本の住宅戸数は約5,758万戸もあります。首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)では1,659万戸です。(総務省平成20年「住宅・土地統計調査」)

 出力4kWの太陽光電池を設置すると首都圏だけで発電容量は原子力発電13基分になります。都市は電力消費地から巨大な電力生産地になります。エネルギー消費を削減し、さまざまな自然エネルギーを組み合わせ、全国は1つで電力を融通し合い、真剣に本気で取り組めば原子力発電に依存しなくても電力はまかなえる。そしてそれ以上に大きな効果がある。何だと思います?
「電力以外に何かがあるということ?」

「ええっ、何だろう」
 みんなはお互いの顔を見合わせながら相談し合う声で部屋はざわついた。
「お金が入る!」
「すごい、すごい、その通りです。電力がまかなえるだけでなく、お金も入る。町の住民所得が増えるのです。これが自然エネルギーのすごいところです」

原発ゼロでも電力はまかなえる 連載小説353

2013年08月08日 | 第2部-小説
 日本は自然エネルギーが豊富な国です。例えば、日本に降る雨はインドネシア、フィリッピンについて、世界第3位ですよ。水に恵まれ、森林に恵まれています。火山列島日本は地熱も豊富です。まわりを海に囲まれています。海と陸があるので海風と陸風が必ず吹きます。海岸線は風力発電の適地なのです。日本は世界に類を見ない自然エネルギー豊かな国です。

 環境省が2011年(平成23年)4月、再生可能エネルギーの賦存量と導入ポテンシャル調査を発表しています。賦存量というのは現在の技術水準では利用困難なものを除き、法規制や地形形状を考慮しないエネルギー量。ポテンシャルというのは賦存量の中で法規制や形状を除いたエネルギー量です。例えば、日本は森林面積が多いが急峻な地形が多く、植林できる山は限られる。川もそうです。水力発電に利用できる川も限られる。そうした利用不可地を除いて算出したエネルギー量が導入ポテンシャルです。

 その環境省調査によると、太陽光(非住宅系)は1.5億kW、風力が19億kW、中小水力(河川部と農業用水路、3万kW以下)が1,400万kW、地熱が1,400万kWあります。合計すると20億7,800万kWです。電力10社の発電設備容量(平成22年度)は2億657万4千kWですからポテンシャル調査の範囲だけでも潜在力は10倍以上です。


風力発電普及、かなめは送電網整備 連載小説352

2013年08月07日 | 第2部-小説
  こんな時は参加者の感想を聞くのが一番いい。
「私の話、どうですか?、面白いですか?」
「面白くない。難しい!」

 前に座っていた占部林業の貝田が真っ先に言った。
「すみません。話しベタなので面白く話しができないのですが私がここで言いたいのは、風力発電など自然エネルギーを利用したり、活用する事業は、地元を豊かにするものでないといけないのです。先に紹介した資源エネルギー庁の送電網整備計画に、その考えがまったく入っていない。自然エネルギーは地域資源ですよ。その資源を使って電力をつくり、送電して儲ける者がいる。その事業計画が地元抜きで進められる。地元に入るとすればせいぜい固定資産税程度。その固定資産税も高圧鉄塔が建つ、山林だから大したものじゃない。なぜ地元が無視されるのか、私の疑問の第一はここにあります」
 みんなの顔に富田の話を聞く、様子が見えた。聞こうとする気持ちが生まれたのが分かった。

「私が思う第2は、資源エネルギー庁が考える電力システムは、相変わらず地域独占の電力システムです。送電網計画に参入できるのはこれまでと同じ、電力会社ということになる。そして、その投資は、風力発電事業者が支払う利用料で回収するという。風力発電の売電価格は、固定価格買取制度で決まっており、この価格設定に送電網新設費用は入っていません。その中で送電網コストは風力発電事業者の負担になると風力発電の事業性は極端に悪くなる。だからちょっと試算すればこれは儲けにならないということになって、風力発電事業に乗り出す事業者は現れない。結果として、風力発電に適した土地があるのに風力発電は建たない。そんなことになる。しかし、ドイツ方式で送電網整備をすると、こうした問題は起こらない。風力発電を建てると事業収益が見込める、確実な投資になるとすることで住民は安心して「共同発電所」づくりに励むことができる。各地で風力発電が生まれます」

風力発電の課題 連載小説351

2013年08月06日 | 第2部-小説
  この図は、日本の風力発電対策を説明した資源エネルギー庁の資料です。
こういうことが書いてあります。
「風の強さが一定以上あり、大規模に風力発電を展開することができる地域は北海道や東北の一部に限られている。一方で、こうした地域は人口密度が高くないため、送電網が脆弱で、既に希望量の風力発電を電力会社が接続できない状況」
まさに日本の風力発電はこの状況にあって、適地はあるが建てられない。そこでどうしょうと考えているのか。ここにこう書いています。

「北海道や東北地域の風力発電の適地を風力発電の重点整備地区と定め、送電網整備を行う民間事業者を支援し、そのビジネスモデルや技術課題の実証を行う予定。具体的なスキームは、風力関係の民間事業者が過半を出資(残りは一般電気事業者が出資)するSPC(特定目的会社)を設立し、風力発電事業者が支払う利用料で投資を回収。ただし、採算性が悪いので、事業費の1/2を補助(北海道・東北全体で、総事業費は計3,100億円、平成25年度当初予算で250億円を要求中)」と。

 これはドイツのやり方とずいぶん違う。ドイツはインフラ整備を全体計画の中で整備しようとしている。だからお金も電気料金に含んだ再生可能エネルギー普及付加金の中で調達して使う。そうすることで国全体の電力需給を安定的にまかなうことをめざしている。

 それに比べると日本のやり方は、再生可能エネルギーの普及に本気度が見えない。これでは風力発電は地域の発展につながらない。
富田は話しながらみんなの顔から反応がなくなったのを感じた。人の反応は実に正直だ。理解できた時と理解できない時、落語や漫才、よく分かる時は笑い声が起こり、涙を流す。
 富田は話ながら次の展開をどうするか、考えた。

日本の取り組みはおざなり 連載小説350

2013年08月05日 | 第2部-小説
 この図はドイツの電気料金の内訳にあった「再生可能エネルギー普及付加金」5.3セントの使い途を説明したドイツ・再生可能エネルギー機構の図です。
日本でも再生可能エネルギーの固定価格買取制度が昨年7月1日から実施されました。買取価格はご承知の通り、電気料金より高い価格です。その電気料金から上回るお金はすべての電気消費者から徴収してまかなうのがこの制度のシステムです。そのシステムはドイツも同じです。

 でも日本の場合、固定価格買取と電気料金の差額はすべて太陽光パネルを設置した人に支払われます。ところがドイツはこの図のように違います。
 設置者に支払われるのは5.3セント全額ではなく、49%だけです。残り51%は右半分の部分、すなわち25%は電力多消費の企業支援に使います。この支援は基準があり、電力消費が売上高の30%以上を占める場合です。大企業でそんなに電力を消費する企業はありませんから結果的に中小企業支援になっています。

 あと25%は送電網の整備などに使っている。ドイツはこのように再生可能エネルギーを普及するインフラ整備に力を入れている。本気で取り組んでいると思う。それに対し、日本は将来の戦略を持っていない、その場しのぎのおざなりと言っても、言いすぎじゃないと思う。

付加金の負担増、ドイツ国民は 連載小説349

2013年08月03日 | 第2部-小説
 日本ではそういうことを書く新聞やコメンテーターがいますね。その真意は私の印象では、自然エネルギーの普及を喜ばない、裏返して言えば、原子力発電の再稼動にもって行こうとする意図が強いように思います。
 去年10月、自然エネルギー財団がドイツに視察調査をして報告書を出しています。表題は「エネルギーヴェンデ(大転換))を進めるドイツ」、これは環境省のHPに載っています。

 調査団は日本大使館で次のような質問をしています。
「 自然エネルギー政策の成否は、現在の需要家への賦課金は3.6セントユーロ/kWhで来年には5ユーロセントまで上昇する見込み。どの程度になったら消費者が負担に耐えられなくなるかという議論。日本国内では、ドイツは自然エネルギー負担に耐えられなくなってきている、との報道がされており、経済界もネガティブキャンペーンを行っているが、実際にはどうか」

 この質問に対して、日本大使館の担当者は「実際にそういう議論があるのは事実。ただし、現時点で見直すべきといった議論はない。世論は多少コスト負担が上昇しても自然エネルギーの方が良いという理解。経済界も世論のそのような認識を受けて、国全体がその方向で進んでいるので仕方がないという雰囲気。ドイツ人の安心を重視する、不安心理が強い(German angust)国民性が関係しているのではないか」
 と答えています。

 一覧表はドイツ第一公共放送(ARD)が2011年4月12日-14日、ドイツ在住の18歳以上の男女約1000~1500人の有権者を対象に実施した世論調査の結果です。(表は、平成24年7月 資源エネルギー庁がまとめた資料)
「 他のヨーロッパ諸国が原子力依存路線を維持しても、ドイツの早急な脱原発を支持する」について。
はい 72%
いいえ 23%
分からない 5%

「はい」が高い。こうした気持ちの中に、コストが多少上がっても仕方ないという受認の気持ちがあるように思いますがいかがでしょ。
 その中で、私が日本と違うと思うのは政府の姿勢です。付加金をどのように使っているのか、国民に丁寧に説明をしています。
 と言って、富田はパワーポイントの画面を切り替えた。

ドイツの電気料金内訳 連載小説348

2013年08月02日 | 第2部-小説
 この円グラフはドイツ・再生エネルギー機構がホームページで公表している電気料金の内訳です。右半分の上から①付加価値税、②公道使用料、③電気税(環境税)、④コジェネ普及付加金、⑤再生可能エネルギー普及付加金の5つが電気料金に含まれています。その合計は48.8%にもなります。

 ようするに、2013年度の電気料金は1kwhあたり28.7セントの内、14.1セント(49.1%)は税金など。電力会社が電気料金として売上に計上できるのは14.7セント(51.2%)、日本円に直すと約15円です。

 日本の場合、2012年度の電気料金は1kwh当たり約27円です。日本の電気料金に含まれる税金と付加金(サーチャージ)は約6%程度ですから電気料金からこの分を引くと電気会社に入る売上金は約23円、ドイツは15円。 

 日本の電気料金はいかに高いかが分かりますね。いかがですか?
とにかく日本の電気料金は世界一高いと言って間違いないです。日本の電気料金がこんなに高いって、知っていた?
 冨田はみんなの顔を見渡しながら言った。
「すごく高いのね。知らなかった」
「ドイツは日本より高いと言う話は聞いたことがある。そうそう、最近は再生可能エネルギーが普及するに従って、日本でいまやられている固定価格買取制度のサーチャージが年々、上がり、大変なことになっている話を聞いた。そのあたり、どうなっているの?」

ドイツと日本の電気料金 連載小説347

2013年08月01日 | 第2部-小説
  このグラフはドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)のHPからダウンロードしたドイツの1kwhあたり電気料金の推移です。
 グラフは2011年度までです。2012年度の電気料金を見ると日本は1kwh当たり約27円、ドイツは26.4セント(約28円)です。ドイツの電気料金は日本と比べると少し高いです。

 だがグラフの明細からわかるように、ドイツの電気料金には営業税や電気税、消費税、再生可能エネルギーの付加金(サーチャージ)が44%を占めています。

 一方、日本の電気料金に含まれる税金と付加金(サーチャージ)は約6%程度です。電気料金に含まれている税金やサーチャージを除くと、実質電気料金は日本約23円、ドイツは15円です。
 額面金額は同程度ですが、実質料金は日本がはるかに高いのが分かると思いますが、いかがですか?