検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

EU主要諸国の電気料金 連載小説346

2013年07月31日 | 第2部-小説
 富田は欧州連合(EU)がまとめた欧州主要国の1kwhあたり電気料金の一覧表を映した。
「日本の電気料金はドイツとイタリアの中間あたり、イギリス、フランスはずっと下、ここにあります。それよりも低い国もこんなにある」
 説明を始めた途端、参加者から「えっ」と声が漏れた。
 多くの国の電気料金が軒並み、日本より「安い」かったからだ。

 富田は言った。
「すごいでしょ。軒並み日本より安い。発電事業は国が違っても使うエネルギーは水や風、石炭、石油、天然ガスなど、どの国も同じです。発電技術も世界共通と見てよいと思います。その電気料金がどうしてこれほど違うのか。これは私自身、調べて大変驚いた。特に、日本は原子力発電のコストは各種電源の中でいちばん安いと言っていたでしょ。その原子力発電が総発電量の33%を占める日本の電気料金が欧州各国より高い」
「ふーん」

 呆れたような声が参加者から漏れる中で富田は話を続けた。
「ドイツは日本より高い金額になっていますが、実質電気料金は日本の方がはるかに高い。それを次に紹介というか、見たいと思います」

日本とドイツの電気料金 連載小説345

2013年07月30日 | 第2部-小説
  化石燃料の中で二酸化炭素の排出量が突出して多い石炭を使うのはなぜか。
 この話になると必ず出るのが電気料金です。石炭から天然ガスに切り替えると燃料コストが上がり、電気料金を上げないといけないという。では日本の電気料金はどうなっているのか。調べると、日本の電気料金は世界一、高いと言われている。

「えっそうなの、ドイツの方が高いという話を聞いたけど」
「それは表面的な電気料金です。ドイツと日本の電気料金を次に見たいと思う」

電力10社の設備投資の推移 連載小説343

2013年07月27日 | 第2部-小説
 このグラフは電力10社の設備投資の推移です。設備投資は一貫して減らし続けていることが分かります。ドイツはこの間、懸命に再生可能エネルギーの割合を増やす努力をしています。その中には発電所の二酸化炭素排出係数を下げる取り組みもあります。その結果、発電所の排出係数は引き下げています。

 しかし日本は排出量を増やしています。これは設備投資を減らしたことと関係するのは明らかです。今回の福島第一原発事故後でも東電が増設をしようとしているのは石炭火力発電です。

 なぜこうした姿勢をメディアは問題にしないのか、それがとても不思議に思う。電力会社に本当に甘い。きちんと問題を指摘して、改めさせる。それが日本は弱いと思う。どうしてそうなるのか。なぜだと思います。

直接でも間接でも排出を増やしている電力会社 連載小説341

2013年07月26日 | 第2部-小説
 このグラフは、直接排出(一次エネルギー消費)と間接排出(最終エネルギー消費)の京都議定書の基準年(1990年)からの二酸化炭素排出量の推移を各部門別に表わしています。

 直接排出とか間接排出とか言われても「分からない」人が多いと思います。そこでちょっと説明します。直接排出は一次エネルギーの消費です。電力会社は化石燃料(石油や石炭)を焚いて発電します。家庭で使う石油ストーブは灯油を焚きます。原料を直接燃焼した時に排出した二酸化炭素の排出量、それが直接排出です。間接排出は最終エネルギー消費です。化石燃料を焚いて作られた電力を使う。これが最終エネルギー消費です。

 さて、話をグラフに戻します。
2つのグラフを見ると直接排出でも間接排出でも増やしているのはエネルギー転換部門(発電部門)だけです。政府やメディアは家庭部門の排出を大きく取り上げますが家庭部門は直接排出ではかなり奮闘しているのがわかります。両方とも増やしているエネルギー転換部門はどうなっているのか、もっと問題にしなければいけないのではないでしょうか。
 そう思いません。

 富田の問いかけに占部和紙工房に集まった仲間は、うなずいた。
「はっきり言って、私は電力会社は二酸化炭素排出削減に真剣に取り組んでいるとは思えない。それがこの資料です」
と言って、別のグラフを映した。

エネルギー削減はかなり難しい 連載小説340

2013年07月25日 | 第2部-小説
(前号のつづきです)
 日本とは何が違うのでしょうか。日本とドイツの産業構造、経済指数はほぼ似ています。2001年度の温室効果ガスの直接排出量(一次エネルギー消費)を分野別に見ると際立って違うのはエネルギー転換部門と産業部門、家庭部門です。産業部門は日本が27%、ドイツは15.7%です。これは日本の産業部門は温室効果ガスをドイツより42%も多く排出していることを意味します。一方、日本の家庭部門は5%、ドイツは15%ですから日本の家庭部門のエネルギー消費はドイツの3分の1です。

 これを2011年度の最終エネルギー消費(間接排出)で見ると日本の産業部門は35.7%、ドイツは34.65%に変化します。これは日本の産業部門のエネルギー効率はドイツより劣っていることを意味します。家庭部門を見ると、日本は16.1%、ドイツは27%です。日本の家庭部門は最終エネルギー消費でドイツの6割です。これは日本の家庭は十分に省エネ生活をしているということです。

 実際、日本のエアコン使用は部分使用です。部屋すべてのエアコンを稼動させる人はまずいません。さらに就寝するときはエアコンを止め、寒いときは湯たんぽを使います。これ以上のエネルギー削減はかなり難しいことが分かります。

Co2削減で社会保障費が減ったドイツ 連載小説339

2013年07月24日 | 第2部-小説
 温室効果ガス排出量削減のためドイツが力を入れて取り組んでいるものに建物の省エネ・コジェネレーションがあります。これは何かというと、ドイツでは全エネルギー消費の4割を建物が占めているといわれています(日本は3割)。そしてその消費の9割は暖房と給湯が占めていますがエネルギー効率は3割、7割は損失している。そこで建物の断熱と暖房の性能を向上させて損失を25%~30%削減させる。この取り組みで全エネルギー消費を13%削減するというのが目標です。

 2006年から始めた住宅の高断熱化リフォームでは、2011年までの6年間に302万3000戸が国補助を受けてリフォームをしました。また、再生可能エネルギー分野に投資された資金は2010年度だけで279億ユーロ(1ユーロ110円換算で3兆3,480億円)、再生可能エネルギー分野に37万人の雇用が生まれました。雇用が生まれると何が起こったかと言えば、国の社会保障費の支出が減ったのです。


乾いた雑巾をしぼるような取り組み 連載小説338

2013年07月23日 | 第2部-小説
日本はドイツの取り組みを、東西ドイツの統合で旧東ドイツの熱効率が悪い設備を代えるだけで温室効果ガスはいくらでも下げることができる。日本は高効率の設備を導入しているからドイツのようにはいかない。「乾いた雑巾をしぼるような取り組みだ」と言って、ドイツを評価しませんでした。しかしドイツは電力部門について燃料を石炭から天然ガスに転換をすすめると同時にエネルギーの変換効率を高めました。その成果を表わすのが二酸化炭素(CO2)排出係数です。

 ドイツのCO2排出係数は1990年744g/kWhでしたが2012年度には576 g/kWhに改善しました。この改善によって電力の消費量は1990年480億kWhから2012年度には550億kWhと増加しましたがCO2の排出量は1990年の357万tから2012年度には317万tへと減少させています。

 一方、日本の電力会社は直接排出でも間接排出でも増やし続けています。背景として、電力会社の設備投資削減があります。こうして見ると、日本の電力会社は温室効果ガスの排出削減に真剣に取り組んできたとは言えないと思いませんか?

日本とドイツの違い 連載小説337

2013年07月22日 | 第2部-小説
  私たちは日本のことしか知らない場合が多いのではないでしょうか。国境を接した国がないから他の国を意識することはない。だからあまり他国と比較して考えることがない。そこで少しドイツと比較します。日本の鳩山首相が国連総会で排出量の「25%削減」を表明したのは2009年です。私を含め、多くの国民は歓迎したと思います。ところがドイツはそれよりも9年前、2000年に、「2005年までに1990年比で25%削減」を決めていました。だから鳩山首相の「25%削減」表明は国際社会をリードするようなものじゃなかった。

 さらに決定的な違いは、福島第一原子力発電事故を受けて対応です。ドイツは脱原子力発電を国会決議しました。それと同時にドイツはそれまでの再生可能エネルギー(水力、風力、バイオマス、廃棄物、太陽光、地熱)の総電力量に占める目標、「2020年までに30%以上」を改定しました。2020 年までに35% 、30 年までに50% 、40年までに65%、50 年までに80% 以上に引き上げたのです。

 1990年、ドイツの再生可能エネルギーの総電力量に占める割合は3.1%でした。これが2011年度には20.1%を占めています。2010年度までの再生可能エネルギーの増加は毎年1ポイントほどですが2011年度は対前年度比で3.2ポイントも増えました。ドイツが脱原発を国会決議したのは福島第一原発事故後の6月30日です。以降、ドイツは猛烈な勢いで再生可能エネルギー普及に力を注いだことがうかがえます。
 国の姿勢がこれほども違うのです。

GDPを伸ばし、温室効果ガス排出を下げているドイツ 連載小説336

2013年07月20日 | 第2部-小説
  冨田の話は出席者の質問で脱線したが「原子力発電に依存しなくても温室効果ガス排出量は削減できる。実際、GDPをあげながら温室効果ガスの排出量を削減させている国がある」と言った冨田の説明に「ホウ!」と驚きの声が起きた。
 これはドイツのGDPと温室効果ガス排出量の推移です。先に見た日本とはずいぶん違うでしょ。

 ドイツはGDP上昇の中で、温室効果ガス排出量は減少しています。日本は違ったでしょ。GDPに連動して温室効果ガス排出量が増減していたでしょ。