検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

電気料金以外に取られているお金

2012年02月19日 | 東京電力の値上げ問題
電気料金の領収書(検針票)には電気料金以外に「燃料費調整額」「太陽光促進付加金」がついています。これ以外に「電源開発促進税」と「使用済み核燃料処理費」(原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律)も取られています。
 原発推進の費用が知らない内、知らされないまま、毎月徴収されているのです。一方、「太陽光促進付加金」は明記しています。「{太陽光発電を取り付けていないのにどうして?」と疑問や反発する人は多い。この扱いの違いは問題だと思います。

火力発電の発電単価と電気料金

2012年02月17日 | 東京電力の値上げ問題
上の表は東京電力の主な「電気料金」です。一番下の単価はこの2月13日発表があった「第3四半期決算」に記載されている火力発電で電力を1kWh作るために要する単価(10.5円)です。
 10.5円の費用をかけて作る電気、家庭用電灯料金からは24.13円取り、契約電力が500kW以上の大口(企業)からは11.47円です。
 この違い、この差別! 問題だと思っています。なかでも「電力自由化」になって大口企業との契約は相対取引になり、実態が公表されなくなりました。電力会社も公表しない。相手企業も言わない。すべて闇の中、一体いくらで電力を販売しているのか。「電力自由化」は賛成ですが「相対取引」は反対です。オープンな取引、電力「卸市場」を通じた取引にすることが大事です。

東電の決算を検証

2012年02月16日 | 東京電力の値上げ問題
東電の23年度第3四半期決算から下記のことが分かりました。
 火力発電総合単価=10.5円

22年度同期比
 電力販売量は257億kwhの減少。(23年度販売量は1,930億kwh)
 電気料収入は1,908億円の減。(23年度電気料収入は3兆3,715億円)
 火力発電量は228億kwhの増。(23年度火力発電量は1,478億kwh)
 火力発電の燃料費は4,844億円の増。(23年度火力発電燃料費は1兆4,913億円)
 燃料費価格の上昇(全日本原油CIF価格)。通期平均1.2倍の上昇、3,350億円増。為替レートの円高
 原子力発電の発電量は391億kwhの減少。(23年度の原子力発電量は246億kwh)

以上のことから下記のことが分かります。
 販売電力の原価は1kwhあたり7.42円
 電気料収入減(1,908億円)÷販売電力量減(257億kwh)=7.42円

 平均販売電力料は1kwhあたり17.46円
 電気料収入(3兆3,715億円)÷販売電力量(1,930億kwh)=17.46円

火力発電燃料費、4,844億円の増について。
 この4,844億円には輸入燃料費の価格上昇分が含まれています。
この間の円高による為替レートを勘案した燃料費の上昇分は2,580億円です。この上昇分は「燃料費調整」で電気料金に上乗せしてすでに徴収しています。したがって原子力発電停止による火力代替で増加した燃料費は2,200億円ですが発電した電力は販売しています。原価(10.5円)でなく17.46円(平均販売電力料)で販売していますから燃料費以上のお金が電気料金収入として入っています。ところが東京電力は原子力発電停止による火力発電の稼動によって燃料費が前年同期比4,844億円も増えた。と大問題にしています。収支バランスで見ると火力発電の稼動は電気料金収入を上げているのです。

火力発電単価の引き上げの問題
 火力発電の単価は22年度は8.06円でしたが23年度は10.5円に大幅に上っています。この間、化石燃料価格が大幅に値上がりしていますが、値上がり分は需要者(消費者)に「燃料費調整」で転嫁して回収しています。電力会社としていっさい負担をしていません。したがって23年度の火力発電総合単価=10.5円はみかけの単価(水増し単価)です。実際に近い単価は「電気料収入減(1,908億円)÷販売電力量減(257億kwh)=7.42円」です。
 このように東電の決算報告には不透明で辻褄が合わないことがいくつもあります。だれもが分かる資料公開と説明をしなければいけないと思います。電力事業は民間企業とはいえ公共的事業です。わかりやすく透明であることが大事です。

東電の23年度第3四半期決算報告書を検証

2012年02月15日 | 東京電力の値上げ問題

 東京電力は2月13日、23年度第3四半期決算を発表しました。 東電の決算のポイントで「人件費や修繕費が減少したものの、原子力発電の減少などにより、燃料費が増加したことなどから経常費用が増加したため、経常損益は連結・単独ともに減益」と説明。新聞は「本業のもうけを示す営業損益は、原発の代わりに動かす火力発電の燃料費が前期同期より4,780億円増え、1,443億円の赤字」(朝日2月14日)と報道。
 あたかも、原発の運転停止により、火力発電の燃料費が増えたことが経営を圧迫しているかのように言っていますがこれはまつたく違います。
 燃料費は確かに増えていますが生産(発電)した電力はすべて燃料コスト(10円9銭)よりも高い価格(17円46銭=平均単価)で販売しています。だから燃料費の増加は売り上げを増やしているのです。
 この間、グラフのように化石燃料価格は大きく上昇。平均1.2倍になっていますがこの価格上昇分はすべて「燃料費調整」で毎月の電気料金に上乗せしてすでに回収(徴収)しているので電力会社としては痛くもかゆくもありません。

 ではなぜ赤字なのか。電気事業についていえば一番の理由は販売電力量が「節電」で大きく落ち込んだからです。その減少電力量は257億kWhです、東京電力の平均電気料金は17円48銭です。これを減少電力にかけると4,492億円になります。(減収)

 販売電力を増やすために原子力発電を再稼働させたい。ところが夏の電力需給は原子力発電がすべて停止してもやりくりできることははっきりしています。なぜ原発の稼働に執着するのか、目的は地域独占体の経営と総括原価方式の経営を維持するためです。


総括原価方式を温存した料金値上げはとんでもない

2012年02月14日 | 東京電力の値上げ問題
 上記図は東京電力が電気料金の値上げ説明に使っているものです。(東京電力HPから作成)
 この図から東京電力の今回の電気料金値上げの妥当性を検証します。

「燃料費等」と「燃料費等以外の費用」
 まず費用の問題です。「燃料費等」と「燃料費等以外の費用」と区別していますから、今回の値上げは「燃料費」の他、燃料費にかかわる保管・貯蔵費用など付帯的な費用の増加を含んだものであると推定できます。そう考えると「燃料費以外の費用」が燃料費本体を上回ることはありえません。
 実際、燃料費等について東京電力は「火力燃料費、核燃料費、購入電力料など」と説明をしていますから「燃料費」の増加を問題にしているのは明らかです。ところがよく検証すると「違う」のです。

有価証券報告書の燃料費
 火力発電には石炭火力、石油火力、天然ガス火力の種類があります。それらを含めて火力発電と呼んでいます。東京電力の有価証券報告書の損益計算書に電気事業営業費用明細書があります。燃料費の内訳として石炭、燃料油、ガスに区分して燃料費を記載しています。その合計金額は1兆4,329億円です。
 一方、20年度営業費用明細に記載している電気事業営業費の汽力発電費は2兆3,654億円です。これは今回値上げ説明に使っている2兆3,656億円とは端数の違いを無視すれば一致します。東京電力は電気事業営業費を基準にしていると推認できます。
 そうであれば東京電力が問題にしているのは「燃料費」ではなく「経費」全体を問題にしていると言えます。そうなると話はまつたく違ってきます。

総括原価方式の特権を撤廃する
 問題になるのは電力会社だけに認めている「総括原価方式」という特権的、特例的な会計処理です。「総括原価方式」ではすべての経費に一定利潤を上乗せしたものが「原価」です。投資をすればするほど、お金を使えば使うほどパイがふくらむシステムです。だからテレビでオール電化の宣伝をじゃんじゃんする。原発立地の自治体に寄付金をふんだんにつぎ込む。記者や政治家を接待する。学者・研究者に研究費を渡して取り込む、OBが天下った子会社に世間相場より高い単価の仕事を発注したり、備品を購入します。
 それらすべてが経費になり、その上に利潤を乗せることができるのです。普通の会社は違います。経費削減に努力どれだけ努力していることか。みなさん、体験していることです。
 この「総括原価方式」を残して従前の利益を確保するのが今回の料金値上げです。これはとんでもないです。普通の企業と同じ会計処理、税法を適用し、現行「総括原価方式」は撤廃することです。そうすれば寄付金、広告費、接待交際費を削減することになり、現在の営業コスト増加は電力会社内部で吸収できます。
 重ねていいます。電気料金の値上げは必要ありません。


節電が大きな力を発揮、23年夏

2012年02月05日 | 東京電力の値上げ問題
 昨年(23年)夏の電力需給は、国民の「節電」が大きな力を発揮したことが調べでわかりました。
上記表は「電力調査統計」の昨年と一昨年の4月~11月の電力需給を比較した数値です。
原子力発電が次々停止した結果、原子力発電の発電量は22年度同期比で816億kWh減りました。この減少をカバーしたのは「節電」と火力発電の稼働率を上げた増産です。
 今、問題になっている「燃料費」の増加はこの560億4391万kWhについての燃料費です。
以下、次号

電気料金値上げ、根拠をきちんと説明せよ

2012年02月04日 | 東京電力の値上げ問題

電気料金値上げ、根拠をきちんと説明せよ
 東京電力の電気料金値上げ問題は、他の電力会社もかたずを飲んで成り行きを見守っているようです。
 それにしても1月17日に発表した東京電力の「自由化部門」(大口需要者)を対象にした17%になる電気料金値上げ発表は誰もが納得できないものでした。
 大幅値上げをするのに「根拠」資料の公表がまったくないのには驚きました。普通の会社は「理由」を説明書も作って理解してもらうため、頭を下げ、ていねいに説明します。
 東京電力には頭を下げる姿勢がまったくありません。記者会見で料金値上げは「権利であり、義務だ」と西沢社長は発言し、社会の批判を浴びましたがそれに対する反省はまったくありません。心底、料金値上げは「権利であり、義務だ」と思っているからです。
この姿勢は「地域独占企業」のおごからきます。この体質は東京電力だけではありません。他の電力会社もすべて「地域独占体」です。例外を除いて、電気は購入先を選ぶことができない環境をよしとして電気料金を「通告」で値上げしようとする行動を生んでいます。だが今回の東京電力の振る舞いには道理がありません。道理のない振る舞いは「横暴」です。
 そうした中で、東京電力を除く8社の平成23年第3四半期(4月から12月)の決算を1月末にあいついで発表しました。2月1日、朝日新聞が「9社が使った石油は、前期の2.3倍の958万kl、液化天然ガスは1.3倍の2,099万㌧、東京電力は11年度全体の燃料費が前年度比、8,300億円増える見通しを明らかにしている」との記事と共に22年度比燃料費増加額の各社別一覧表を載せました。
この記事を読むと、どう読んでも「電力会社は大変なことになっている」としか思えない記事です。電気料金値上げもやむを得ない。原子力発電も早く再稼動した方がいい。読者をそんな気持ちにさせる記事です。

朝日の記事、出所が不明朗
 朝日の記事と電力会社が発表した「平成23年第3四半期(4月から12月)決算」を比較すると燃料費に下記表のような違いがあります。従って朝日の数値は発表の決算資料とは別の情報による数値だと推測するのですが「9社が使った石油は、前期の2.3倍の958万kl、液化天然ガスは1.3倍の2,099万㌧」は、「本当!」とびっくりです。
 原子力発電が相次いで停止している関係で火力発電の稼働率はあがり、火力発電の発電量は対前年比で上がっているのは事実ですが「電力調査統計」の毎月統計を集計すると、火力発電が前年同月比、2.3倍稼動した数値はありません。どこから出てきた数値なのか、朝日は出所も明らかにすべきです。
 ただ、各社の有価証券報告書を見ても、昨年4月~12月、電力生産がどのように行われたのか。どうように経費が増加したのか、説明はできていません。今後、電気料金値上げは間違いなく浮上します。電力会社は国民が状況を理解できる資料を公表し、ていねいに説明すべきです。
 昨年4月~12月、電力生産はどうであったのか。資料公開・説明で何が欠けているのか。(次号につづきます)

 上記表、左欄の数値は朝日新聞が掲載した燃料費、右欄の数値は各社の中間報告から拾った燃料費。「燃料費」が多かったり、少なかったり。電力会社はていねいに状況を説明すべきです。

政府の電気料金値上げ予想は過大

2012年01月25日 | 東京電力の値上げ問題
電気料金1,000円引き上げ」は過大、月270で収まる
 政府のエネルギー・環境会議は下記のイメージ図も使って、「原子力発電による発電量を火力で代替すれば電気料金が約2割、標準家庭で約1000円の引き上げになる」と言っています。

 最新の「電力調査統計」(2009年度)によると原子力発電は設備(供給力)4,623万kWを動かして年間2,800億kWhの電力を供給しています。政府試算はこのすべてを「火力発電でまかなえば」を基準にしているのですが政府が今夏に予想している最大不足電力は▼1,250万kWです。これは原子力発電の年間発電量2,800億kWh の27%ですから756億kwhです。
 ですから原子力発電が作ってきたこれまでの電力量をすべてまかなう必要はありません。
すると燃料代のコスト増加は756億kwhの範囲ですむわけですからこのすべてを電気料金に加 算しても政府試算の1,000円にはならず、270円で収まります。
政府の電気料金は、標準世帯で月1,000円になるという試算根拠は荒く、過大です。

東電の電気料金値上げに正当性はない

2012年01月24日 | 東京電力の値上げ問題
どうぶり勘定による大幅値上げは許されない
 東京電力は24年1月17日、50kW以上の電力契約をしている24万件の事業所に13.4%から18.1%の大幅な電力料金の値上げを4月から実施すると発表しました。今回の値上げは原子力発電が定期検査に入って以降、再稼動できなければ原子力発電が発電してきた電力をすべて火力発電で代替することになる。そうすると燃料費が増大するため、電気料金の値上げが必要というのが主な理由です。
 今回、値上対象は自由化部門であることから国の認可は必要とせず東京電力は今後、値上げを個別要請すると言っています。だが電力会社は地域独占体であるため、自由化部門とはいえ、日本の電力供給網は電力会社が独占していますので需要者は東京電力以外を選択することができないのが現状。そのため企業や事業所は不承不承、値上げを受け入れざるを得ないといわれています。

 東京電力はこの値上げを第一ステップとして今後、家庭を対象にした電力料金の値上げを国に申請する予定です。認可権を持つ経済産業省はこの値上げについて認める方向だと報道しています。
 もし東京電力が今回発表したような値上げがその通り実施されると経営が困難になる事業所が続出すると予想され、家計に占める電気料金の増大は即、生活を脅かします。政府と電力会社はそうした状態を作り出して、その中から原子力発電の再稼動を求める声が出てくるのを期待しているのは明らかです。
 だが政府と東京電力の資料と文書にもとづいて値上げ内容を詳細に検討すると燃料費や経費の見積もりが過大であることが分かりました。値上げは大幅に減額でき、原子力発電は再稼動しなくても電力はまかなえることも分かりました。

つじつまが合わない東電の値上げ資料
 東京電力の今回の値上げ説明資料を見ると燃料費等は、「火力燃料費、核燃料費、購入電力料など」であるとして説明しています。その金額は平成20年度から大幅に増加するため、発電単価が平成20年度の8円から24年度には11円22銭になると言っています。
 しかしこの数値はつじつまが合いません。まず第一点は販売電力量です。平成20年度2,956億kwhあった電力量は平成24年度は2720億kwhと約8%減少します。ところが燃料費等は平成20年度2兆3,656億円から平成24年度には3兆521億円に29%(6,865億円)も増えます。販売量は減って燃料費等は大幅に増加するということはまつたくつじつまが合いません。

 第2点は燃料費等の金額です。東京電力は今回の値上げは「燃料費などの増加分に関する見直しであり、それ以外の費用(損害賠償、廃炉に係る追加費用など)は含めておりません」と説明しています。一般に「燃料費」以外に増えた費用がある場合、その費用は燃料費より低いのが普通です。
 東京電力の20年度有価証券報告書に記載されている火力発電のための燃料費(石炭、燃料油、ガス)は1兆4,329億円です。ところが値上げの説明に使っている「燃料費等」は燃料費1.6倍の2兆3,656億円です。平成20年度の営業費用で計上している火力発電費2兆3,753億円(汽力発電費、内燃力発電費)に近似した金額です。「燃料費」としては金額がケタ外れに水ぶくれしています。
 結局、東京電力の燃料単価計算は販売電力量を少なくする一方、「燃料費等」をより多く増やしてみかけのコストを上げています。

 第3点は、「燃料費等」は平成20年度の2兆3,656億円から平成24年に3兆521億円に6,865億円も増加すると見込んでいる点です。東京電力が平成22年度、原子力発電で作り出した発電電力量は838億4500万kwhです。この稼動にかかった運転費用(燃料費、人件費などすべての経費を含む)は5,186億2900万円です。そうすると6,865億円は22年度の原子力発電の発電実績をも上回る稼動を想定したものだといえます。しかしこれは現状をまつたく無視した空想的な稼動率です。

 福島第1原発(6基)は廃炉が決まっています。第2原発(4基)の稼動も不可能といわれています。10基の原子炉が稼動停止すればその分の運転費用は少なくなります。ところが値上げ理由の「燃料費等」はすべての原子力発電が稼動していた時よりも大幅に増えると想定しています。これはどう考えても、どこでそれだけの費用がかかるのか分かりません。東京電力はあくまで原子力発電を電力供給の中核にした電力事業に固執しています。

 今回の電気料金値上げも原子力発電に固執した事業展開のためであるとしたら福島第一原発事故を起こした反省はみじんもないということになります。
取り返しのつかない原発事故を発生させた反省はみじんも見せず、これまでみてきた通りの過大な見積もりによる電気料金値上げに正当性はありません。13.4%から18.1%の料金値上げは中小企業の経営を窮地に追い込む打撃的なものです。これほどの値上げをする理由として東京電力の説明は根拠がきわめて不透明で一方的です。まずは今回の値上げ発表を撤回して、だれもがなっとくできる説明をする姿勢に立つのが先決です。

大谷国夫:NPO法人「中小企業・地域振興センター」研究員/(当ブログは個人ブログです。NPO法人の考え、見解を述べたものではありません)