検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

「ただちに健康に影響を与えるレベルではない」  連載小説145

2012年11月05日 | 第2部-小説
  若者たちの話し声で騒然となった店に長居は無用だった。食べ終わると将太は店を出た。上野駅に向かって歩きながら店内を注意深く見た。店員の姿がいつもより少ない。「そうか、韓国、中国人は国に帰ったのか」とつぶやくと将太はそういえばアメリカは福島から半径80km圏から避難を自国民に勧告していたし首都の大使館・公館勤務員を中部、関西に避難させた新聞記事を思い起した。

 その緊迫感に比べ、自分はどうしてこんなにのんびりしているのだろうと思った。本当は埼玉から関西方面に逃げればいいと思うがそれはできなかった。埼玉に家を構え、妻や娘がいる。生活のすべてが首都圏にある。それを捨てて関西方面に逃げることはできない。そう思う気持ちは放射能が差し迫った問題になっていないからだと思った。

 だがその判断は何に基づいてしているのか。放射線被曝の危険地域は福島第一原発から20kmは警戒区域、30km以内は緊急時避難準備区域。この言葉自体、危険性をあいまいにしていると思う。その言葉の影響を受けて埼玉など首都圏は200キロメートル離れているということで安心しているに過ぎない。ではまったく被曝していないのかを考えると水道の浄水場ではないが首都圏も確実に汚染されている。ただその汚染は「ただちに人体に影響を与えるレベルではない」という枝野官房長官や学者の談話に「そうか」と納得しているだけなのだ。

 しかし「ただちにではないが、将来どうなるのか」そのことには政府も学者も言及しない。断言できるのは「ただちに健康に影響を与えるレベルではない」は安全を保障した言葉ではないことだ。そう考えると政府は放射線による被曝をできるだけ低く見積もり、影響も低く見積もってその場しのぎをしているだけのように思う。
放射線被曝すると人体に何が起こるのだろう。遺伝は親のDNAが子に伝わることで受け継がれる。