検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

中国人、韓国人がいなくなる  連載小説144

2012年11月02日 | 第2部-小説
   予約をした将太は上野駅で下車した。5時前だった。改札から10分ほど歩いた場所に通称・韓国村と呼ばれ、焼肉店が集積している場所がある。レバ刺しがうまい。いっぱいやりたくなった。

  3月も下旬になると日がずいぶん長くなり、5時だというのに昼間のように明るい。軒を連ねる店はほとんど開店していたが客足はほとんどなかった。こういうところはやはり6時を過ぎる頃からにぎわうようだ。何度か入ったことがあり馴染んだ店に入った。
  席に座ると大柄な男が慣れない日本語で「いらっしゃいませ」といって氷水とおしぼりをもってきた。この界隈の店の店員は韓国人ばかりだと聞いている。日本に来て、まだ日が浅いのだと思いながら将太はその場でレバー刺しとビールを頼んだ。

 ビールはすぐきたがきたのはビンビールだった。将太としては生ビールを頼んだつもりだったが違うものがきた。しかしそれは自分の注文の仕方が悪かったと思い、だまって飲んだ。そしてメニューを手にして追加料理を考えた。レバー刺しを持ってきたら頼むつもりだ。ところが5分たっても店員は持ってこない。10分ほどたってももってこない。店員は調理場の者とハングル語でおしゃべりをしている。

 そこに女オーナーが姿を見せて食材などの整理をはじめた。たまりかねた将太はオーナーに声をかけて「注文したものが出でこない」といった。女オーナーは大謝りしてレバ刺しはすぐに出てきた。
「まだ日本語が分からないんだね」と将太はオーナーにいうと「働いていた人が全員、韓国に帰ってしまって、息子に昨日から手伝いをしてもらっている」といった。
 福島第一原発の水素爆発に驚いた従業員が全員、身の危険を感じて国に帰ってしまい。夫と自分と息子だけになってしまったのだ。
「他の店もそうなの?」

「韓国、中国から来ている人はいっせいに国に帰ったよ」とオーナー。とそのとき大学生らしき青年がグループ10人ほどのグループを従えて「こごここだ」といって入ってくると「食べ放題2時間2500円でいいんですよね」と出迎えた女オーナーにいった。
「2500円でオッケーね」
「メニューのどれでも全部」と男は念をおす。食べ放題の場合、別メニユーの場合がある。若者たちはそのあたりの事情に詳しい。
 女オーナーが「全部、オッケーよ」というと若者たちはいっせいに席に座り、メニューを手にした。腹いっぱい食べるつもりだ。この男たちが競い合って食べるといったいどういうことになるのか。店の儲けは恐らくないだろう。

 そんな心配を将太がしていると女オーナーがホルモンを一皿持ってきて「これはサービスね」と笑みを浮かべて将太のテーブルに置いた。
 東北大震災後、街は喪に服すかのようにひっそり沈んでいた。客足を伸ばそうと必死なのだと思った。