検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

県の合併シミュレーションソフト 連載小説39

2012年06月30日 | 第2部-小説
  平成の大合併は1999年から2010年までおこなわれ、市町村数は3232から1728と半減した。合併が一気にすすんだのは小泉内閣になったときだった。小泉政権は身を切る改革、小さい政府をぶち上げ、それまでの自民党政府が断行できなかったことを実行した。市町村を震え上がらせたのは平成16年から18年の3年間で地方交付税を約5兆円減額したことだった。
 そして「もし合併しなければ、その市町村に対する地方交付税は2割減額される」という出所不明の話が全国市町村会議で噂されていた。そしてその噂が一人歩きした。2割も削減されたら職員給与は払えなくなる。それほど衝撃的なペナルティだった。

 それは単なる憶測でなかった。県から合併シミュレーションソフトが送られてきた。
ソフトは、役場職員、議員、各種委員などの人件費の縮減、道路の新設改良、維持管理費用の縮減、少子化の進行により、更なる学校統合。による学校規模の適正化。介護や高齢者等の生活支援等の維持・サービスの地域ぐるみ互助の精神による運営。戸籍等関係事務の手数料、保育料、水道料やゴミ収集手数料、介護保険料などの引き上げ。各種団体等への補助金の削減や廃止などがぎっしり織り込まれていた。それらは地方交付金の2割減額を想定したものであった。

 シミュレーションは住民協働の形態例として、公共施設の建設や維持管理、住民の生活支援等のため私財等の提供。趣味的な内容を目的とした講座は、自治公民館や地区公民館の自主講座として開催し、住民の熱意・協力で行う。町道・農林業・作業道の路肩の草刈りや路面補修、公共施設の清掃や公園周辺の環境整備はその地域のボランティア活動として協力をする。

 地域の互助・自治に関することについては、地域内住民の負担により賄う(町は補助しない)などまでがこまごま書いてあった。
「これでは合併しない自治体はもたない」と思ったと松本は述懐していう。

合併対策シミュレーションソフト 連載小説38

2012年06月29日 | 第2部-小説
  町長は庁内に「合併対策室」を設置すると松本博を室長に任命した。事務局は3人体制で町長諮問機関として有識者、議員、農林業・商工業団体、NPO、市民などで構成する「合併対策検討委員会」を設置した。松本の主な仕事はこの対策委員会の運営に必要な資料作成と委員会記録、議会資料の作成であった。
 検討委員会は月1回開催し、6回開催して委員会報告をまとめることになった。
「あれは激務だった」と松本は振り返っていう。
 まず手がけたのは、客観的にデーター資料づくりだった。項目を事務局で出し合い大体、以下のような資料をつくった。

 一つは、市町村合併により一般的に期待される効果及び懸念される事項
そのために、周辺市町村の上下水道など社会資本整備状況、手数料など公共料金等の現況一覧。各市町村の財政状況の比較として、経常収支比率、自主財源比率、積立金現在高(住民一人あたり)の一覧。
 合併が及ぼす影響として「合併特例」と「過疎特例」の比較表。普通交付税の合併前と合併後の比較。

 この他に、合併による行政経費の節減として見込まれる分野と金額。この資料は県が作成したシミュレーションソフトを使って作成した。ソフトは、各市町村の決算の状況、人口の推移などをもとに、一定の条件で推計し、いろいろな合併パターンを簡単にシミュレーションできるようなっていたが最大の問題は合併を選択しない場合、地方交付税の減額があるといわれているがいくら減額になるのか、減少額は政府で検討中ということで不明だったことである。
 しかもその不明は合併協議が山場を迎え、住民説明会が開催される時期になっても不明のままだった。

合併推進派と町長の懸念ー連載小説37

2012年06月28日 | 第2部-小説
 平成の市町村大合併は昭和の大合併が政府の強権発動ですすめたのとは違った。合併する、しないは市町村と住民の自由な選択によって決めることが強調された。とはいえ合併した場合は合併特例債の特典があり、合併をしない場合は地方交付金を減額するアメとムチを用意したので合併推進派は「国から金をもらえるのは今がチャンスだ。金をもらってこれまで建てられなかった施設を建てよう」と推進の幟までつくって町を推進一色にしようとした。
 だが町長は喜べなかった。

 一番に思い浮かんだのは合併すると占部町の名前が消えることだった。町の名前が消えるのは故郷がなくなるように思った。そして次に浮かんだのは、占部町はへき地を多くかかえるがもし合併すると占部町全体が新市制のもとでへき地扱いを受けると思う。庁舎は支所になり職員も激減する。住民はなにかにつけて不便になるのは間違いない。占部の町民の暮らしについて十分、不十分はあっても職員は愛着をもって仕事をしている。問題をかかえる町民の様子はだいたい承知していたから大雨が降ると崩落の危険がある町道を巡回し、崩落があるとすみやかに補修した。合併するとおそらくそうはならないだろうと思う。

 第3に思ったのは、合併すれば合併特例債があるというが占部町の場合、過疎債が認められるので合併特例債は特別有利な特典ではない。合併しなければ地方交付税は減らされるので町政運営はさらに厳しくなる。だが合併した場合、今より良くなることはありえない。だとしたら合併しないほうが住民にとって良いのではないか。と思っていた。

 実はその考えは松本課長が係長だったとき、町長と職員懇談会で発言を求められた際、文書であげた内容だった。

平成の大合併1-県の合併パターンから消えた占部町ー連載小説36

2012年06月27日 | 第2部-小説
 一柳虎夫は自分が仕える占部町選出の県会議員から県が近々発表予定の県下全市町村を対象にした合併プラン原案を見せられていた。この原案をもとに各自治体による合併協議会を発足させるという。その原案に占部町はパターン7に入っていた。一柳は甲府市を核としたパターン1に属するかと思っていたが県の線引きは笛吹市を核としたグループだった。
 甲府市になるのと笛吹市とではまるで違う。県議に「甲府市と合併するのが町民の希望だ」といって再考を県にいってもらうよう頼んでいた。そうした経緯があるから一柳は県の発表は訂正されたものになるだろうと思っていた。
 そして県は「山梨県市町村合併支援プラン」を発表した。ところがそれは原案とはまるで違ったものだった。しかも占部町はどのパターンにも入ってなかった。

 町長をはじめ議員は大騒ぎになったのはいうまでもない。県に問い合わせた。
「原案について意見が地元よりあったため、要調整の処置になった」と回答した。
「地元の意見とはだれか」
執行部のなかでも議会でも問題になったが町長は「事前に県から相談や連絡はいっさい受けていない」と答弁した。
 一柳は議長だった。まさか自分が県議と通じてやったことがどこでどう間違ったのか知らないが自分が関係しているとはいえない。知らぬ顔で黙っていた。
 占部町で大騒ぎをしているのを尻目に他の市町村は県が示したパターンに沿って合併協議会を立ち上げ、協議を始めた。議員や町民の一部から「町長の失態」と責任追及の声が出た。占部町はどうするのか。合併する相手も定まらない状況の中でどうするのか方針を示さなければいけないことになってしまった。そこで町長は現業と技術職をのぞいた行政職の47人、全員を集め、意見を集約して議会に臨んだ。


オール与党の議会に変化ー連載小説35

2012年06月26日 | 第2部-小説
  「町長と議会はうまくいってないのか」と公平がきいた。
「3期で交代の話があったらしい。しかし町長はそんな話はなかったし、約束もしたことはないと」
「それでもめているのか」
「まあ、そういうことだ」
 「この町始まって以来のことだなあ」
「この町の町長は大体、温厚な人物を選んできた。まとめ役のような感じで。ところが今議長をしている一柳虎夫は町長になりたくて自分から議員に名乗り出た男だ。議会の多数派工作をしてきて、多数派になると町長に引退を迫ってきた。その強引さに町長はカチンときたようだ」
 政治の世界は理念や政策でなく多数を取るかどうかだという。いくらいい政策をいっても議会で少数だと否決されて実現しない。絵に描いたモチとなる。しかし多数会派になれば思いのままだ。町長をはじめ執行部はつねにご機嫌伺いで接するし、待遇もよい。議長、副議長は一年交代で回ってくる。占部町の議会は歴史的にオール与党だった。執行部と議会の対立はいっさいなかった。その意味でも占部町は平和で穏やかな町だった。

 様子がおかしくなったのは平成の市町村大合併以降だった。
 占部町は合併しない選択をした。一柳虎夫は合併推進派の筆頭だった。町長は推進も反対も表明しなかった。どうするかは町民総意で決めること。町としては、町民が判断できる資料を提供し、町民意見をさまざまな方法で集約して公表する。とした。
 この議会答弁に反対質問をする議員はなかった。合併推進派は楽観していたようだ。ところがその楽観は小細工があだになって、頼りにしていた県によって無残に打ち砕かれた。


町長不信任の布石―連載小説34

2012年06月25日 | 第2部-小説
  公平が松本課長に頼んだ資料は「占部町だより」と「議会報告」の3年分だった。それを読めば占部町のおよそのことは分かる。あとから読むことにして町の重点施策と関係する取り組みを案内してもらうことになった。
 「占部町」と書いた町の公用車は軽自動車だった。松本が運転し公平が助手席に将太は後部座席に乗った。
「シートベルトをしてくださいね。公用車に乗っている人間がシートベルトをしてないと大変なことになりますから」と課長は2人がシートベルトをしていることを確かめて車をスタートさせた。
 行き先は林業振興と関係する製材工場、もう一つは中山間地農業振興が軌道にのってきたという棚田で米つくりをしている農家、あと一つは介護施設だった。そこで将太が主に話を聞く予定になっている。

 車が公道に出ると公平が口を開いた。
「それにしても庁舎、もう少しきれいにできないのか。トイレのドアも穴があいたままじゃないか」
「ひどいだろう」
「お前が感心することないだろう。お前の決済でできることじゃないのか」
「あそこだけならそうだが、あっちにもこっちにもある」
「営繕費はあるだろう」
「あるがやらないのが判断だ」
「どうしてそんな判断を」
「町は金がない。それを町民に知ってもらうために、あのままでいいと」
「町長がいっているのか」
「まあ、そういうことだ。議会でも議員からもトイレのドア、早く直せ。なぜ直さないのかと質問があった」
「町長はなんと」
「先立つものがない。今の町財政がどうなっているか尾上議員にもご理解いただいていると思いますがだった。それで質問議員は黙ってしまった」

 話を聞いていた将太はいまどき珍しい町長だと思った。地方財政が厳しいといわれているなかで庁舎建替えを優先する自治体は少なくない。名目は耐震だ。庁舎は災害時、被災者救援の拠点だ。住民の生命、財産を守る施設が倒壊しては役割を果たせない。それを大義名分にして庁舎の建替えをしている。先ほど見た占部町の庁舎は耐震診断では倒壊の危険があると判定されているのではないか。将太は松本課長に質問した。
「ガラスや壁、天井の崩落の可能性があるという診断です」
「どうするつもりですか」
「過疎債を使って、耐震補強をすべきだといっています」
「過疎債?」
「過疎債の発行を国に認めてもらえば、町の負担は工事費用の3割ですみます」
「で、町長は?」
「建替えを考えてます」
「トイレの穴を直すお金もないといって、庁舎の建替え?」
「議員が全員一致で建替えの特別決議をしたんですよ」
「実現の可能性は?」
「むずかしい。町の実質公債費比率は現在16%です。過疎債といっても地方債の一種ですから庁舎 建替えで組むと20%を超して財政健全化団体に近づく。国は許可しないですよ。そこまでして庁舎の建替えをする緊急性はないと私などは思っている。特別決議は町長不信任の布石ですよ」

玄関スロープはボコボコの庁舎―連載小説33

2012年06月23日 | 第2部-小説
 翌朝、昼まえ、町庁舎に公平の同級生という総務課長を訪ねた。庁舎の前の駐車場の白線ラインはところどころ名残が見える程度で手入れはできていなかった。庁舎はペンキがはげ、みるからに薄汚れていた。
 庁舎は地面より1メートルほど高い造りになっているため階段のほかに、車のため石畳のスロープがつくられていた。だがそのスロープは石がゆるんでガサガサになり、一部欠けていた。これが庁舎かと思うひどい玄関だった。外から見る庁舎内玄関のフロアは薄暗い、消灯しているのだと思った。入ると案の定、蛍光灯が間引きされ、点灯しているのは半分もない。
 将太は総務課長に会う前に、用を足しておこうとトイレに向った。トイレも消灯して暗かった。入って驚いた。大の個室ドアの下部に穴が開き、ベニヤの裂け目がむき出しになっていた。穴の開き具合から見ると中から金づち様のもので叩かれて出来たようだった。

「トイレのドア、穴が開いたままだぞ」
トイレから出た将太は公平にいった。
「もう1年以上あのままだよ」
 苦笑して答えた。
 すると執務室の奥から男が手を上げ、近づいてきた。背広をきちんと着て、細身で頭が少し禿ていた。
「よう、久しぶりだなあ」と男がいった。総務課長だった。
「メシは?」と聞いた。
「食ってきたよ」と公平。
「そうか、ここら辺も昔は食堂もあったが今は一軒もなくなった」
「いま、通りを通ってきたよ。開いている店が数えるほどになったね」
「夜は志乃はやってるぞ」
「おおそうか」

 志乃というのは公平たちの同級生で居酒屋だった。高校のとき、陸上部の短距離ランナーで公平たちより速かった。21歳で結婚して2人の子どもに恵まれて幸せだった。しかし夫が甲府市内で交通事故に遭い亡くなった。そのため実家に戻って2人の子どもを両親に見てもらいながら店を開いた。いまでは通りで1軒だけの店だった。
「はやっているのか」
「結構、がんばっているぞ」
「ほう」
「料理が旨い。野菜中心だがいろいろある。客がきてからその場で作るから旨いし安い。お前の京香さんとも親しいぞ。ところでお前から頼まれていた資料は揃えてある」
 といって、フロア一画に作った相談室に案内した。
 公平はソフアに座る前に、将太を自分の上司だった人でいまは定年退職をして、自然エネルギーの普及と地域振興に取り組んでいる人だと課長に紹介した。課長と名刺交換をした。

 課長は松本博と名乗った。
ソフアに座ると課長は手にした公用封筒を公平に差し出すと頼まれていた資料だ」といって渡すと声を落とし、体を公平に近づけると「こういうものが欲しいということは町長選挙に出る積もりなのか」とささやくようにきいた。
 公平はあわてて手を振り、「そんなことは考えたこともない。びっくりするようなことをいうな」と即座に否定した。
「違うのか、それは残念だ」
 課長は落胆の面持ちを隠さなかった。
 将太は課長の不用意な話に驚いた。いかに親しい間柄とはいえ町長選という政治的な話を庁舎内で持ち出すのはよくない。しかも役場の相談室で・・・
 口がすべったことに課長も気づいたようで「いや、この話は今夜、お前の家に行くから、その時、話をしよう」と話を資料の説明に移した。

町おこし隊5―話し合は発展して-連載小説32

2012年06月22日 | 第2部-小説
京香の工房に集う参加者も仲間という気楽さがあって普段は聞けないこと、思っていることをここぞとばかり聞く。
  木下は質問にていねいに答えた。だがその内容は「町だより」や「議会報告」で広報している範囲であった。その範囲であれば地方公務員法34条が規定する公務で知りえた秘密を守る義務に触れる心配はなからだ。

「町だより」は毎月発行し、「議会報告」は定例議会が開かれたとき発行していた。木下は毎回、バインダに綴じて丹念に読んでいるのでイノシシが今年はどこに出たとか、その顛末もよく知っている。急病人が出て入院先が決まらず大変だったことや国保税がどういう計算式で決まるのかとか国保会計がどうなっているかなどスラスラと説明した。どれもみな「町だより」「議会報告」に載っていることばかりだが、参加者は「よくわかった」と喜んだ。
  木下は「今いったことは全部『町だより』などに書いてあることばっかりですよ。たまには読んでくださいね。一生懸命書いているんですから」というのが毎回だった。

 何回か話し合っているうちに、話は町をなんとか活性化できないか。このままじゃさびれる一方だ。何か考えられないかとなり、町の歴史を勉強しょうということになっているのがいまの状態だという。
ただ、これまでの話し合いで町は大変なことになっていることがわかったと京香はいう。

  そのとき公平が「役場の知り合いに資料を頼んであるので明日、もらいに行きましょう」と将太にいった。
 公平の知り合いは総務課長だった。


町おこし隊4―気軽な集まりなのだが-連載小説31

2012年06月21日 | 第2部-小説
 集まるのは毎月第3土曜日の2時から5時と決めた。参加は自由だから連絡の案内も確認もしない。テーマもない。ただ京香に金銭的な負担をかけては悪いといって参加した人は200円を貯金箱に入れることにした。それでお茶やお菓子、電気・光熱費にあてた。

 用意するのは京香だが参加者が手土産を持ってくるのでお茶菓子はいつも余った。そのお菓子は翌日、占部和紙工房で働く者たちの胃袋に収まった。
お茶も最初は市販茶だったが1人が「自家製番茶だがもしよかったら」と持ってくるとその次には別の人が「どくだみ茶」だの「桑茶」だのを高血圧にいいからといつて持ってきたのでお茶はいろいろ集まり、自分の好みで飲むようになってきたという。
「いいですね。気楽そうで」
「でしょ。喫茶店に行く気軽さでみなさん来るのよ」
「楽しいでしょ」
「楽しいからいつも時間オーバ」と笑う。

 そこに役場の木下一郎が参加してから座が少し変化した。
木下は京香から「来ない」と誘われたとき、どうするかためらった。役場に勤めていると話に役所のことがでるはず。そこで話たことは役所の人間が話したこととして受け止められ、広がる。そうした心配もあるが木下は行政に身を置くものとして、町民の率直な意見を知ることができるのはいいことだと、思って参加した。休日の行動だから何をするのも自由ではあると思うが念のためと上司の係長に相談した。

 係長は「休日のことですから、業務ではないから休日出勤にはならないよ」といった。
「それは分かっています」
 木下はこれで少し気持ちが楽になった。だが一抹の不安を感じていた。それはのちに現実のものとなり、ちょっとした騒動になった。



町おこし隊3 メンバー 連載小説30

2012年06月20日 | 第2部-小説
  「メンバーはどういう方ですか」
 将太は記者が取材するように質問した。人と話をするときの肝要は自分がききたい事を聞き出すためには工夫が必要である。相手が話すことをそのまま聞いていてはあちこちに脱線する人がいる。ただ質問が過ぎると自分がイメージした方向にもっていってしまい、その人の真意をつかむことができない。しかし5W2Hは押えなければいけない。

 居酒屋、製材工場の二代目、キノコ生産者、木工加工所、農家が3人、この3人はいずれも自主ルートで米を販売している。猟師、スローライフで定年後移住してきた3人、一人は大手企業のエンジュニア、一人は元薬局経営者、退職後ふるさとに戻ってきた人だ。二人は野菜を自家栽培し絵を描いている。活動に積極的である。これに京香のところで働いている仲間1人、役場の職員と女性の介護士が参加している。

 メンバーは京香の幼馴染であったり、京香の「占部和紙工房」を見学におとずれたのが縁で親しくなった人たちである。気楽な世間話をしていたが話題はたいがい町内のことだった。今年は雨が多いだの昨日は風が強かったとか大豆の刈入れ時の雨は困るたぐいからガソリン代が高くなって大変だ。役場のだれそれが退職したとかどこそこのじいちゃんが寝込んで家族が難儀しているとか町一軒の八百屋兼果物屋がついに店を閉めたとか最近の若い娘の服装がずいぶん変わったなどなどとりとめもない話だったがそれがみんな楽しかった。

 昔は喫茶店もあったがとうの昔になくなり、気楽に立ち寄るところがなかった。地域振興センターや会所はあるがそれは決まった議題で決まったことを話し合う場だからのんびりくつろげない。だが人は気楽に話し合える場を求め、町の情報を知りたいと内心、欲望に近いほど渇望していた。
「わたしのところにこない。お茶でも飲みながらだべりましょうよ」
 京香のひと声に喜んで集まった。


5W2Hとは:(いつWhen、どこでWhere、誰がWho、何をWhat、どうするHow、なぜ?Why、いくらでHow Much)