Heal-log

つれづれなるままに。

スペイン散歩2 -ゲルニカとセゴビア-

2009年04月26日 | 
4月26日朝。スペインの夜明けは遅い。午前7時でもこんなもんだ。
さらに、細かい雨まで降っているようだ。


「大丈夫、すぐ止むよ」とベルボーイが言ったとおり、出かける時間には雨は上がった。
本日最初の目的地は、ソフィア王妃芸術センターだ。
ここにはピカソのゲルニカを始め、現代美術が展示されているらしい。

ホテルからはバスが便利なので、バス停で待つこと5分。お目当てのバスがやって来た。
・・・と運転士のおっちゃんが慌てた様子で降りてきて、他の客に何やら告げ、私たちの泊まっているホテルに駆け込んで行った。
周囲の苦笑っぷりからすると、どうやら「トイレ」のようである。

生理現象は仕方がない。とはいえ日本ではこんな光景にお目にかかった事はない。
大学時代は毎日バスのお世話になっていても、だ。
お腹が痛くなることもあるだろうに、運転士さんには頭が下がる思いだ。

・・・などと考えていたら、おっちゃん悠々と帰還。
タバコをふかして。
おーい。でも、ここはスペインなのだ。

いざバスへ乗り込もうとしたら、おっちゃんに止められる。
なになに、今日はマラソンがあるから、このバスは目的地方面には行かない?
おーい、そういうことはトイレに行く前に言っとくれ。でも、ここはスペインなのだ。

気を取り直して地下鉄へ。


マドリッドの地下鉄の乗降ドアの開閉は手動だ。
このツマミを上に上げると、ドアが開く。新しい車両だとボタンになっていたりもする。
私が生まれ育った富山の冬の電車(地元では汽車と呼ぶ)のようで、少し懐かしい。

さて、地下鉄2駅で目的地に到着。


元々は病院だったという建物にモダンなエレベーターがくっついた外観は、一目で分かる。

ここでの目玉はなんと言ってもゲルニカ。
遠い昔に美術の教科書で見て以来、ずっと本物を見たかった作品である。

思ったより大きな壁画。
写真では分からない、書き直された跡。
そして、夥しい数の下絵。馬だけで、犠牲になった子供を抱える女性だけで何枚あるのだろう。

天才ピカソは、いきなりキャンバスに向かって絵を描くのだと勝手に思っていた。
感情の赴くままに筆を動かすのだろうと。
予想に反して、ゲルニカの両側の部屋が埋まるぐらいの下絵が残されていた。
そして、ピカソくらいになると下絵まで展示されちゃったりするのかと思ったりもした。


絵画を堪能したあとは、胃袋にも栄養を。


パンに生ハムを挟んだだけのボカディージョは、昨日訪れた「ハムがぶら下がっているバル」で注文。
立ち食いで、おまけにコーヒーもない酒場だけれど、さすが本場である。美味。


午後からは半日観光でセゴビアに出かけた。
このたび唯一のガイド付きツアーである。
集合場所に着いてみると、本日のゲストは私たち4名だけらしい。
マドリッドからセゴビアはバスで約1時間15分の行程だ。
治安面での不安が大きいスペイン。その中での貸切バスということで、盛大に爆睡。

到着すると、のっけから世界遺産に出迎えられた。


紀元1世紀に建てられたというローマ水道橋。日本ではまだ弥生時代の頃である。


アーチ部分は、左右から力がかかっているので石が落ちて来ないとのこと。
この水道橋は、町の橋にあるアルカーサル(要塞・城)まで水を供給していたらしい。
水のあるところに暮らすのではなく、暮らすところまで大掛かりに水を引く。何とも壮大な考えである。

町を歩いていると、家々の外壁の模様が美しい。


これは「掻き絵」と言われる手法らしい。
壁に漆喰を塗り、それが乾く前に模様を掻き取る。気の遠くなるような作業である。
この装飾には各家の個性があって、見ていて楽しかった。

町の中ほどにはカテドラル(大聖堂)がある。


16世紀から18世紀にかけて建造されたものとのことだ。


内部の様子。
天井のアーチまでもが石で作られている。ただただ見事だと思う。
ポルトガルのジェロニモス修道院の天井アーチに似ているのだが、イベリア半島の特徴なのだろうか。
イタリアの大聖堂が天井画で埋め尽くされているのとは対照的である。
個人的には、絢爛豪華な天井画よりも、こちらの方が好みである。

反対に、飾ってある彫像や絵の類は素朴というか、ちゃちいというか(失礼)、イタリアの洗練っぷりを再発見する結果となった。バチカン凄し。


短い滞在の最後はアルカーサルへ。
ここはディズニー映画「白雪姫」の城のモデルになっているそうだ。
といっても、ディズニー映画のお城は「シンデレラ城」しか思い出せないのだが・・・。


従って、似ているかどうかは判別不能。


内部にはイスラムの幾何学紋様が多く、影響を受けていることを物語っていた。


ポルトガルでもよく目にしたアズレージョ。やはりお隣の国だ。

アルカーサルからの眺めは城自体よりも印象に残るものだった。



「こら(これは)日本では考えられへんで」
今回の旅行中、何百回と繰り返された父の言葉。
「いや日本でもそうだってば」と(心の中で)ツッコミを入れる事も多々あったけれど、この景色は日本にはない。
雲の陰が大地に写るのを高台から眺めることは、そうないのだから。


この日は日曜日。お店が軒並みクローズするヨーロッパでの過ごし方は悩みの種だった。
結果として美術館&遠出という選択は正解だったように思う。

マドリッドにもどった後、ガイドさんに教えていただいた「日曜でも営業している百貨店、イル・コルテ・イングレス」で買い物をして一日を終えた。


スーパーにも生ハム。
キッチン用品売り場には、生ハムをスライスする機械。
うん、さすがだ。

歩数、20,000歩。明日は古都トレドへ。