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12日(木) 家庭連合の解散命令請求 文科省記者配布資料へのコメント1 ー事例判例じゃない

2023年10月15日 | 法律・海外法務
12日(木)に、文科省が、家庭連合の解散命令請求を公表した際、記者に6頁の資料を配布した こちら(おってリンク貼ります、有田芳生さんのTweetから探せます)。

そのうち、いくつかに、コメントします。

まずは、おそらく法曹の方ではないとご理解が難しい、「判例の射程」の話。

A 一般論としての判断なら、射程は広い。
B その事例だけの判断なら、射程は狭い。これを「事例判例」という。

文科省は、この記者発表資料の3頁で、「法令」に民法を含まないという趣旨の、オウム高裁を、いわゆる「事例判例」(「当該事案に対する判断」、上記B)として斥けた。

A(一般論)なら、オウム高裁判断(刑法のみ)が、家庭連合に及ぶ。
だから、家庭連合の場合に「法令」違反はなし。解散要件を満たさない。

一方、B(事例判例)なら、オウム高裁判断は、家庭連合に及ばない。
だから、「法令」に民法も含まれ、家庭連合に「法令」違反があり、解散要件を満たす。

こんな関係にあります。

文科省は、B(事例判例)だと言いました。

い、いや、それは無理でしょ…。

以下の、オウム高裁(H7.12.19)をよく読むと、「刑法等の…」は、決定文7頁「1 解散命令の意義」の中の、一般論として述べられています。つまり、上記A。

ですから、いわゆる「事例判例」(B)と読めないはずです…。

このオウム高裁決定から、事例判例(B)だと解釈した文科省の、強引&稚拙&粗雑な解釈には、ただただビックリするばかりです。。。

~~~以下オウム高裁決定を引用(文章、超長いです…)~~~
第三 本件解散命令申立の当否

 一 解散命令の意義及び解散事由の存否 

1 解散命令の意義 

宗教法人法は、「宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持 運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えること」(一条一項)を主要な目的とし、それに必要な措置を講じるために制定されたものであるが、これとともに、同法が八一条一項一号及び二号前段において宗教法人に対する解散命令制度を設けたのは、宗教団体が、国家又は他の宗教団体等と対立して武力抗争に及び、あるいは 宗教の教義もしくは儀式行事の名の下に詐欺、一夫多妻、麻薬使用等の犯罪や反道徳的・反社会的行動を犯したことがあるという内外の数多くの歴史上明らかな 事実に鑑み、同法が宗教団体に法人格を取得する道を開くときは、これにより法人格を取得した宗教団体が、法人格を利用して取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を濫用して、法の定める禁止規範もしくは命令規範 に違反し、公共の福祉を害する行為に出る等の犯罪的、反道徳的・反社会的存在に化することがありうるところから、これを防止するための措置及び宗教法人がかかる存在となったときにこれに対処するための措置を設ける必要があるとさ れ、かかる措置の一つとして、右のような存在となった宗教法人の法人格を剥奪し、その世俗的な財産関係を清算するための制度を設けることが必要不可欠であ るとされたからにほかならない。

右のような同法八一条一項一号及び二号前段所定の宗教法人に対する解散命令制度が設けられた理由及びその目的に照らすと、 右規定にいう「宗教法人について」の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害 すると明らかに認められる行為」(一号)、「二条に規定する宗教団体の目的を 著しく逸脱した行為」(二号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用し てした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであっ て、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。

~~~引用終わり~~~

ここから、どうやって「事例判例」(B)と読めるのだろう、、、 大学生とか、ロースクール生でも、この判断を「事例判例」(B)とは解釈しないはずである、、、

この、どう読んでもA(一般論)にしか読めない判例から、B(事例判例)だと言い切る文科省様には、ややjaw-dropping でございます、、、


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