観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「タワマン」「保険」「相続」「医者の給与」「国民年金」を考察する予定。

宗教界と対立するムハンマド・ビン・サルマーン皇太子

2017-11-19 14:36:39 | 政局・政治情勢
ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が11月4日の一斉逮捕で物議を醸しています。最近ではレバノンのハリリ首相の拘束疑惑もありましたね。欧米での懸念に理解できるところはあります。

でもムハンマド・ビン・サルマーン皇太子はイスラム諸国の中でも超保守的とされる宗教界と戦ってきた人物とされています(サウジ突然の政変、その真の狙いはどこにある Newsweek 2017年11月17日(金)15時40分>社会的な側面では、超保守的な宗教界を相手にムハンマドは戦っている。宗教界はあらゆる手段を使って、特に女性をめぐる変化を阻もうとしてきた。サウジアラビアは女性の自動車運転を禁じていた世界で唯一の国で、女性の運転禁止は国家のイメージを悪くするだけだった。これを変えようとする過去数十年間の努力がやっと実った形だ)(サウジアラビアの改革は宗教と衝突する(Financial Times 2016/4/28 15:45 archive.is))(サウジ、女性の運転容認 宗教界の反対押し切る 日経新聞 2017/9/27 9:42)。

だからと言って政敵相手に何をしてもいいという訳でもないと思いますが、政治的安定がないと、古今東西難しい問題を解決するのは難しいのも確かなことです。中東ではフセインという独裁者を倒したら、ISというよりタチが悪いのが出てきたという事実もあります。

宗教弾圧が望ましい訳ではありません。ですが決め付ける訳ではありませんが、イスラムとテロの関係は囁かれて久しく、今のところこれといって打開策がある訳ではありません。宗教を隠れ蓑にテロが許される訳ではなく、過激派であるところのヒズボラなどの勢力に厳しい姿勢(シーア派過激派のみに厳しいのかもしれませんが)のサルマーン皇太子が宗教界に対して優位に立つことは、対テロの観点から一歩進むと考えられなくもありません。あまりに閉鎖的なブラックボックス組織は何を考えているか分かりませんし、宗教テロは現実の話です。サウジ王家も閉鎖的かもしれませんが、サウジのイスラム保守派よりは開明的なところがあるでしょうし、行動を見る限りは、現実を踏まえながら、改革を進めているようにも見えます。

サルマーン皇太子の全てを認める必要はないと思いますが、一歩引いて改革を支援する必要があるのではないでしょうか?

サルマーン皇太子とて国民の支持、支配者階級の支持が必要ですから、欧米の操り人形と見られる訳にはいきません。自分の方がサウジを良い方向に導けると味方に対し説得できることが重要で、あまり全力でサルマーン皇太子の悪い(ように見える)部分を批判することは良い結果をもたらさないように思えます。

実際問題、(同じ中東の)ヒズボラのような過激派と戦うためには強い指導者が必要なところもあるのではないですか?

アフガニスタン安定の鍵を握るのは中央アジアの安定と南北ルートの開拓

2017-11-19 13:11:04 | 政策関連メモ
誰しも難しいと考えるアフガニスタン問題でしょうが、筆者は最近の国際情勢の変化を受けてひとつアイディアが出てきました。それは中央アジア情勢の好転です。

中ロの裏庭に変化あり 中央アジア「共同体」の現実味(Newsweek 2017年11月18日(土)14時40分)

何でも昨年末に就任した域内で最大の人口と軍事力を持ち唯我独尊の姿勢を貫いてきたウズベキスタンのミルジヨエフ大統領が域内で友好協力の姿勢に転じて団結の機運が出てきたようです。中央アジアは資源が豊富ですし、情勢が安定さえすれば、可能性がある地域だと思います。

ここで重要なのは、資源をどこに輸出するかでしょう。ユーラシアは東西に長い大陸ですので、中央アジアの繁栄を考えると、東西のルートも良しですが、南北がルートも鍵になると思います。歴史的に中央アジアの交通の要衝とはアフガニスタンです。アフガニスタン自身も資源が多く眠る国ですが、更に中央アジアの資源も合わせて通すことによって、経済が活発になります。中央アジア自身も資源の搬出ルートの安定は重要ですので、アフガニスタンの安定に協力も見込めるのではないでしょうか?

アフガニスタンの先は9割9分パキスタンになると思いますが、パキスタンの安定も重要です。パキスタンの先には大人口があり、発展も見込めるインドで、資源を必要としているのは間違いありません。

1分の可能性でイランがないとも言えません。ミサイル開発の断念と革命防衛隊が国外での活動を控えるぐらいのウルトラCがないと無理だとは思いますが、本来はアフガニスタンとイランの関係は無視できるものではありません。

中央アジアのバックでもあり、また中央アジアの国でもあるロシアも重要ですね。東西にシベリア鉄道はありますが、南北のルートが重要であることは間違いなく、ソ連はアフガニスタンに侵攻しています。邪魔する理由はないでしょう。

中央アジアを交通の要衝アフガニスタンを通すことによって、南北にルートを確立します。資源がある北と人口があり発展性があって、海があり更に世界に対する積み出し港にもなり得る南の組み合わせはかなり有望のように思えます。こうした有望に思える構想を示すことによって、アフガニスタンの人自身に自国の安定が重要なのだと認識してもらい、協力してもらうのが狙いです。当事者の協力なしに地域の安定は中々難しく、これまでその協力が中々得られなかったことが問題です。ケシ栽培を生業にしている人々にそれに代わる生業を与えないと中々上手くいきません。

中央アジアに荒涼とした砂漠のイメージはありますが、活況を呈することは可能と思います。モンゴルのゴビ砂漠では実際にえらいことになっているようです(アングル:モンゴル国境で大渋滞、対中国「石炭ブーム」脅かす ロイター 2017年11月18日 / 08:55)。

一帯一路は交通の要衝アフガニスタンが入っていません。ですから、中央アジアの発展を中国はやる気ないかもしれませんね。多分、中央アジアの資源が我々のところにくればいいと思っているだけでしょう。ウイグルの資源は中国に供給するためのものでしかないんでしょう。中国が考えているのはその道を更に延長することだけだと思われます。あるいはチベットの支配を確定してインドに繋ぐとか(ヒマラヤが邪魔であまり経済的なルートとは思えませんが)。

元々自由と繁栄の弧構想もありましたし、安倍政権も然りで日本はわりと中央アジアに注目してきたと思います。南北ルートの開拓は日本にとっても重要でしょう。

アフガニスタンが安定すれば、勿論アメリカを中心にした自由主義諸国にも多大なメリットがあります。安全保障面でもそうですし、企業にとってビジネスチャンスが眠っていることも間違いありません。

※12月9日追記:トルクメニスタンの存在を忘れていました。申し訳ありません。ただ、トルクメニスタンも一帯一路に含まれていませんので、中国が中央アジアに関して自分のところに資源を持ってきたいだけで、ロシアにとってそれほど有利な構想ではないという部分に関しては訂正する必要は感じません。ロシアや中央アジアは資源商売をするなら(それ以外の商売をするにしても)、南北ルートを開拓する必要性があると思います。カスピ海以西を通るルートはありますが、テロの問題など政治情勢が微妙だと思いますし、インドは遠回りになります。トルクメニスタンルートに関しては、筆者はトルクメニスタンを良く知りませんが、トルクメニスタン自体が謎の国として知られていることと、イランがアメリカと敵対していることがネックになると思います。パキスタンとインドが歩み寄りしてロシア・中央アジアが協力してアフガニスタンが安定したらいいなと思っています。政治的に難しいのは分かっていますが、そういう記事ですね。発展するビジョンがないと中々アフガニスタン情勢は落ち着かないだろうと思います。