明日につなぎたい

老いのときめき

ひとつの花を添えれば

2017-12-22 12:11:48 | 日記

 昨日は定期の診察日。病院には自転車だと15分で行ける。受診日は、天候が悪くないかぎり自転車に乗れる日である。実は、これが私のささやかな楽しみになっているのだ。もう冬なのに、穏やかな陽をうけて気持ち良く走った。診察もいつもと違っていた。事前の検査がなかったからなのだろうが、電子カルテとのにらみ合いがない。主治医の先生が自ら血圧を測ってくれる。胸と背中に聴診器をあててくれた。

 ある精神科医の書いた短編小説集『風花病棟』を思い出した。そのうちの一編「百日紅」に、老医師(公立病院長)の臨床講義の場面がある。その医師は聴衆環視のなか、モデルになった患者との短い問答のあと、聴診器で入念に打診、心臓の具合などの所見を説明した。それらは、最新の検査機器が示した、すべてのデ―タ―とぴったり重なり合っていた。急速に進む医療のⅠT化、私もこれで救われた人間の一人だが、何か、医療の原点・あり方を説かれたような気がした。

 

 先日、このブログで取り上げた川上貫一代議士(共)は、1968年、心臓の病気で亡くなっている。80歳だった。私は83歳のとき、開発されていたカテ―テル治療で助けてもらっている。「あのとき、僕のような治療がされていたら、川上さん、もうちょっと頑張れたのでは」。何人かの親しい知人に言ったことがある。コンピュ―タ―システムも故障することはあるだろうから、これだけに依存するわけにはいかないだろう。あの老医師のような診察が常に求められているように思えた。

 『風花病棟』の「あとがき」は言っている。「医師は患者という教科書によって教育される」「医師は患者によって病の何たるかを教えられるのではなく、人生の生き方を教えられるのである。良医は患者の生き様によって養成されるのだ」。ここまで言われると、患者である私も襟を正さねば、考えさせられる。私の身内にも医療現場で働く者がいる。門外漢の私は何も言えないが、いま未読なら、この『風花病棟』を読むよう勧めようと思う。「ひとつの花を添えれば・・・明かりが灯せる」と願ってネ―ミングされた書である。

 


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2 コメント

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医師と患者 (西浦宏親)
2017-12-22 20:33:07
医者と患者の関係。非常に大事だともいます。日野原先生も、患者との関係を非常に大事にされていました。鎌田実先生も同様です。医療機器や医療技術の発展とともに、医師と患者との関係は改めて見直されていいと思います。
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師匠が亡くなった (田畑正信)
2018-10-04 11:42:47
私が「師匠」の一人として尊敬していた西浦さんが亡くなってしまいました。数学が好きで、歴史に造詣が深く、カーペンターズが大好きだった方でした。礼儀作法から立ち居振る舞いまで、教えていただきました。このブログの定期投稿者でもありました。最近、コメントがないなぁと思っていたら、訃報に接してしまいました。誠実なえがたい先生でした。冥福を祈るばかりです。
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