明日につなぎたい

老いのときめき

こころざしつつたふれし人びと

2022-07-26 12:38:46 | 日記

 2日前、7月20日に亡くなった古くからの友人、柳河瀬  精君のことを書き終えて、いくらかほっとしていた矢先、また一人の友の死に出会った。元赤旗記者・藤原義一氏(75歳)である。関西総局在任中、毎日のように顔を合わしていた。同じ屋根の下にいたわけだから当然のことであった。高知県で幼・青年期を過ごし、1968年から赤旗編集局に勤務、70年代から関西総局へ、私はそこで彼と知り合うことになる。がっちりした体躯で、一見、豪放な人物だと思わせがちだったが、実は繊細な神経の持ち主だった。2007年に退職するが、彼の文人としての活動が続く。2020年、エッセイ、短歌を収録した単行本が贈られてきた。タイトルは「戦争に反対した人々」。300頁に及ぶ立派な書物である。

 

 冒頭は「特別高等警察と治安維持法」。1925年に天皇が制定した弾圧法である。「国体を変革」「私有財産制度の否認」を目的とするものを罰する(死刑を含む)という、途方もない天下の悪法であった。これによって政府発表でも送検者7568人、1600人余となっているが、実際は逮捕者数十万人、特高が加えた拷問・虐待による死亡者多数に及んだとされている。こんな状況下、痛ましい犠牲を伴いながら、戦争に反対した宗教者、兵士、軍部を批判した官僚、社会主義者たちがいたという事実が紹介されている。それは戦後の反戦・平和、革新運動に受け継がれている。これが歴史を進歩させる流れであることは明白。現在の自公政権・与党は、これに背をむけた逆流というしかない。

 

 この書では『戦争に反対した人々』の一人として石川啄木の名があがっている。「地図の上朝鮮国に黒々と墨をぬりつつ秋風を聞く」「時代閉塞の現実をいかにせむ秋に入りてことに思うか」は私のお気に入りである。啄木の墓地は北海道函館の立待岬にあるそうだが、jr高知駅の南に歌碑があると紹介されている。詩人・今野大力(1904年2月5日―1935年6月19日)の名もあがっている。「凍土を噛む」とのタイトルで長文の詩が載せられている。「・・殺す相手も殺される相手も同じ労働者の仲間・・この戦争をやめろ」「・・故国の仲間に呼びかけたい おれたちは故国へ帰ろう お前もおれもがんばろう」。日本近代史の汚点を突き出し、共同と連帯をよびかけた詩だ。今、求められていることだろう。故藤原君への贐(はなむけ)のつもりで、この一文を記した。


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