明日につなぎたい

老いのときめき

" 約束の海"から

2016-11-04 21:40:48 | 日記

 11月3日は”文化の日”。京阪モ-ル内の紀乃國屋書店で、数冊の時代物、現代物を物色したが、いちばん重みを感じて手にしたのは、山崎豊子さんの『約束の海』(新潮文庫)であった。この本の帯には「国民作家が日本人へのメッセ-ジをこめた絶筆」とある。正真正銘の「最後の小説」「未完の遺作」である。惜しい!そんな感傷を覚えながら読み始めた。いきなり海上自衛隊の潜水艦が出てくる。まだ途中だから感想も何も書けないのだが、私の脳裏から遠のいていたある事件を思い出さされた。1988年7月に起きた海難事故「なだしお事件」である。

 

 相模灘での訓練を終え、横須賀港に向かう海自潜水艦「なだしお」(2250トン、乗員74名)が、釣り船「第一富士丸」(154トン、定員44名)と衝突した。船は2分間で沈没、乗客、乗員30名が死亡した。マスコミ報道も大々的だった。私も覚えている。「海自史上 最大最悪の事故」。当時の防衛庁長官は引責辞任し、艦長、船長には裁判で有罪判決が下された。小説は、この事件を主要な題材にし、潜水艦を「くにしお」、釣り船を「第一大和丸」と名づけ、かなりのスペースを割いて読むものに迫っている。

 

 それから20年後の2008年2月に、イージス艦衝突事故が起こっている。当時、最新鋭と称されたイージス護衛艦「あたご」(7,700トン)と、千葉県勝浦の漁船・清徳丸(7・3トン)が衝突、船長とその長男が命を失った。「あたご」はハワイ・真珠湾から横須賀に向けて帰港中であった。はるか彼方の海ではない。東京湾での哀しい事故である。私は「約束の海」を読み、痛ましい海難事故の数々を追いながら、日本の海の安全はどこで保障されるのだろうか。それを”軍艦”に求めるのは筋違いではないかと思ったりしている。


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