タカタは27日、同社が製造したエアバッグの欠陥問題を巡り、同社と米国子会社2社がカナダの消費者から3件の集団訴訟を提起されたと発表した。米国子会社2社はそれぞれ訴状の伝達を受け取っているという。
訴えたのはオンタリオ州でタカタ製エアバッグを搭載した車両を保有する消費者やリコール(回収・無償修理)の対象車両を保有する消費者らで、損害賠償を求める集団訴訟をオンタリオ州の裁判所に起こした。訴状によると原告側は一般的賠償及び懲罰的賠償として合計で約2288億円を請求している。
タカタ製エアバッグに関しては米国やカナダで複数の集団訴訟が起こされているが、「損害賠償請求額が明らかになったのは今回が初めて」(同社)という。
タカタ側は請求金額について「あくまでも原告らが現時点で請求している金額であり、実際に支払われることが決定されたものではない」としたうえで、「現時点で訴訟等による金額的な影響を合理的に想定することは困難」としている。〔日経QUICKニュース(NQN)〕15/3/27
[メキシコシティ/デトロイト/東京 22日 ロイター] - 米国で09年5月に起きた死亡事故をきっかけに、世界2位の自動車安全装置メーカー、タカタ 製エアバッグへの不安が拡大、いまだに連鎖的なリコールが続いている。欠陥の有無については米政府機関が調査に乗り出しているが、ロイターの取材によると、当局が対象にしている時期だけでなく、その数年後も同社の製造現場では安全性を脅かしかねない複数の問題が起きていた。 同社製エアバッグによる重大事故や大量リコールを受け、米高速道路交通安全局(NHTSA)は今年6月、基幹部品であるインフレーターに何らかの問題があったかどうかなどを中心に原因の究明に着手した。調査対象となっているのは2000年から07年に製造された製品で、過去の事故ではエアバッグの膨張時に金属片が車内に飛散し、運転者の死亡やけがを引き起こした。 しかし、ロイターが入手したタカタのエンジニアリング資料、社内プレゼンテーションやメール文書などによると、同社製品に欠陥が生じる懸念があったのは、その時期だけではなかった。米国向けエアバッグに搭載するインフレーターについては、少なくとも11年までの10年間、メキシコにある同社の主力工場で、不十分な溶接や不良品の出荷など、ずさんな安全管理を示す事態が相次いでいた。
<「欠陥」指摘する内部文書> メキシコ北部のモンクローバ近郊には、タカタが主として北米市場向け製品に搭載するインフレータ―のほぼ全量を生産する自社工場がある。この工場では01年以降、溶接やさびなどの欠陥も含め、製品の不良につながる危険がある様々な問題が記録されていた。 ロイターが入手した「潜在的な欠陥」と題された内部文書によると、この工場では01年から03年の間に少なくとも45件のインフレーター製造上の問題が起きている。02年には、出荷したインフレーター100万個の中に60から80ほどの欠陥品がみつかった。それはタカタが品質管理上の上限としている数量の6倍から8倍にもなる水準だった。 05年と06年の間には少なくとも3回、同工場で製造したインフレーターに「リーク(漏れ)」と呼ばれる問題が見つかり、作業員が解決しようとしていたことが工程記録に残っている。05年には、米国のエンジニアリングコンサルティング会社「シャイニン」が溶接の不良があったことを見つけた。ロイターの取材に対し、シャイニン側は顧客あるいは特定の案件について話すことはできないとの立場を示したが、タカタ製品に関する同社の指摘は文書で残っている。 さらに、同工場から溶接が不十分なインフレーターが誤って出荷されたことも明らかになった。工場の指導役であるギラルモ・アプド(Guillermo Apud)氏は、11年3月、一部従業員向けに「欠陥、欠陥、欠陥」と題したスペイン語のメールを送り、「溶接されていない部品は、ひとつの命が失われることを意味する。つまり、ミッションは達成されていない」と強い言葉で指摘した。タカタはこの後、溶接の検査手順を厳しくしたという。 その翌月、同氏は別のタカタのエンジニアらに、インフレーターの中にチューインガムが見つかったことを報告し、「深刻な問題」のひとつとして注意を喚起している。同氏は現在、エンジニアリングマネジャーに昇進している。この問題についてロイターへのコメントは控えている。
<米当局は「強い姿勢で調査」> また、タカタのメキシコ工場で発生していたこれらの問題は、NHTSAによる今回の調査対象にはなっていない。NHTSAの規定では、タカタだけでなく他の部品サプライヤーも、同工場で起きたような品質管理上の問題を報告する義務はないからだ。 NHTSAは自動車メーカーによる報告や消費者などからの事故に関するクレームや欠陥についての告発に基づいて調査に着手する。企業側には安全上のリスクを起こしかねない欠陥があれば、それを見極め、NHTSAに報告する義務がある。 ロイターの質問に対し、同当局は、タカタの内部文書に記録されている製造上の問題にはコメントを控える一方、一連のリコールと現在の調査に関連して、「この潜在的に安全性を損なう問題については強い姿勢で調査」していると表明した。 しかし、タカタのエアバッグ問題に対しNHTSAが調査を開始したのは、13年と14年にホンダ 、トヨタ自動車 、マツダ の車で起きた3件のエアバッグ破裂事故の報告を受けた後だった。これらの破裂事故は全て米国の高温多湿地域であるフロリダ州とプエルトリコ自治領で発生した。 ロイターの調査によると、タカタがリコールした車両に関するNHTSAの記録には、エアバッグが事故の際にちぎれて飛び散った、あるいは金属やプラスチックの破片をまき散らしたという17件の事例がある。ロイターがNHTSAの記録にある車両の製造年などから分析したところ、これらの車は、事故が起きる前、平均して7年もの間、使用されていた。
<新たなリコール絶えず>
1990年代以降、タカタ製エアバッグは世界の自動車メーカーに採用され、多くの事故から人命を救ってきた実績をもつ。その安全イメージに重大な打撃をあたえたのは、09年5月に米国オクラホマ州で起きた死亡事故だった。 犠牲になったのは、ホンダ「アコード」01年モデルを運転していた18歳の女性。同社製エアバッグが衝突時に爆発、飛散した金属片で頸動脈が切断された。その半年後にはバージニア州でもホンダ車で同様の事故が起き、33歳の女性が2人目の犠牲者となっている。 「欠陥エアバッグ」の不安はいまもなお続いている。トヨタが10月20日、高温多湿な気候で不具合が発生する可能性が高まったとして米国で約24万台をリコール。NHTSAは翌21日、タカタ製エアバッグの不具合でリコール対象となっている日米欧自動車大手の約610万台の所有者に対し、すぐにエアバッグ部品を交換するよう改めて呼び掛けた。NHTSAの声明を受け、タカタは22日、当局ならびに修理を実施する自動車メーカーに全面的に協力すると発表した。 NHTSAは2000年から07年に製造された一部製品を対象にした現在の調査で、インフレーターの容器が密閉されているかどうか、容器内のガス発生剤が外気や湿度などの影響を受けていないかどうか、を確認する作業などを行っている。フロリダのような高温で高湿度の地域でリコールされた車から回収されたインフレータ―の分析が焦点だ。この調査にはタカタと自動車メーカー9社が協力している。 タカタ製エアバッグを理由に行われたリコールは08年11月に始まり、対象となった台数は全世界ですでに1600万台を超えた。そして、ロイターの分析によると、タカタ製エアバッグが原因で米国でのリコール対象となった車種では、160の死傷事故もNHTSAに報告されている。リコール台数は、NHTSAが行っている調査の結果次第で、さらに増える可能性もある。 相次ぐリコールはタカタにとって高い代償をもたらした。同社は過去2年間でリコールに関連して約750億円の特別損失の特別費用を計上。10月21日までの株価は今年に入って44%下落している。 同社の最大の顧客であるホンダは今月16日、9月に米ロサンゼルス近郊で死亡事故を起こした高級車ブランド「アキュラ」ブランドのセダンにタカタ製エアバッグが搭載されていたと発表。この事故については捜査当局から犠牲者の顔面に「エアバッグ内の異物による損傷が認められた」との報告が出ている。 関係者によると、すでに数年前からホンダは、一部のタカタ製エアバッグ内に、ダイセル 製のインフレーターを導入すべく動いているという。ホンダの岩村哲夫副社長は今年7月、タカタとの取引を継続するどうか検討していると表明。ロイターの取材に対し、その決定は「総合的な評価」にもとづいて行うと述べた。 こうした厳しい状況について、タカタは詳しいコメントを控えている。広報担当のアルビー・バーマン(Alby Berman)氏は「タカタは(自動車を)運転したり、搭乗したりする人々の安全を確保するため、最高品質の製品を生産するという使命に引き続き取り組む」と話している。 (JOANNA ZUCKERMAN BERNSTEIN, BEN KLAYMAN, 久保田洋子 編集:北松克朗、白木真紀、加藤京子)