*4号基使用済み核燃料は引き出した瞬間に周囲の人間がバタバタ即死するほどの放射能放出、1331本の使用済み核燃料の放射能は広島原爆1万本超!水中で100tの鋼鉄製のキャスターの中に入れ、それを取り出す作業、1331回繰り返す、
小出裕章氏(京大,原研教授)インタビュー:
福島原発の現状を告発 溶けた炉心の在処、未だに不明 調査のロボットが次々と“討死”。格納容器に“穴”の可能性濃厚(ピープルズニュース)
小出…福島第1原発では4つの原子炉が壊れたのですが、1~3号機は、運転中、4号機は、定期検査のために停止中で、燃料棒も装着されていませんでした。1~3号機は、炉心を冷やすことができず、メルトダウンして大量の放射能を放出してしまいました。圧力容器の底に熔け落ちた核燃料は、厚い鋼鉄の底を溶かして、放射能を閉じこめる最後の防壁である「格納容器の床に落ちた」と、東京電力は言っています。私もそう思いますが、その後、熔けた核燃料がどうなっているのか? 実は誰にもわからないのです。
理由は、猛烈な放射能汚染のために建屋に人が入ることができないので、目で確認できないからです。ロボットを入れて写真撮影させていますが、戻って来られずに討ち死にするロボットが、後を絶ちません。猛烈な放射線環境で電子機器が故障するのと、散乱しているがれきが行く手や岐路を阻んでいます。東電は、残っている計測器で核燃料の在処を判断しようとしていますが、そもそも過酷事故を予想していなかったので、計測器が配置されていません。通常運転に必要な各種計測器はありますが、放射線と水蒸気のために次々と壊れていって、センサーによる情報も失われつつあるのが現状です。
格納容器の底はコンクリートで、1㍍の厚みがあるのですが、「熔けた燃料は70㌢のところで止まっており、核燃料は格納容器の中に閉じこめている」というのが東電の公式発表です。ただし、「閉じこめている」はずの格納容器は、あちこちに穴があるのは確実です。格納容器に注入する水が、中で全く溜まらず、漏れ続けているからです。最後の防壁である格納容器が破られて、現在も放射能が漏れ続けているのが現状です。
私は、熔けた燃料が格納容器を突き破り、地下水を汚染しているかもわからないと思っています。もし、燃料が格納容器の底も突き破って地面に達していれば、地下水を汚染し、いずれ海に出て行きます。汚染の拡大をくい止める手段がなくなります。私は、一昨年5月から、「炉心が地面に熔け落ちる前に、原子炉建家周辺に、鉄板などで地下バリアを張り巡らすべきだ」と提言してきましたが、今も手つかずです。一方、地上部分では、毎時1000万Bqの放射能が漏れ続けている、と東電は発表しています。この数値は、事故直後2週間あまりに放出された放射能量に比べると、劇的に減少しています。
危機的状況続く4号炉/使用済み燃料の取り出し至難の業
小出…4号機は、メルトダウンはまぬがれたのですが、ここには大量の使用済み燃料がプールに沈められています。その放射能総量は、控えめに計算しても広島原爆1万発分です。事故直後、消防庁や自衛隊が大量の水をかけている映像が流れましたが、これは、使用済み燃料プールへの対応でした。プール自体は、たぶん大きくは壊れていませんが、危機的状況にあります。原子炉建屋が爆発で激しく破壊され、プールが埋め込まれている階の壁がほとんどないために、プールは、いわば宙づり状態です。
東電も危機感を持ち、事故直後に応急耐震補強工事をやりましたが、被曝環境での突貫工事だったために、今もプールの半分が宙づりのままです。余震でプールが破壊されるようなことになると、これまでの放出量とは桁違いの放射能が出てくる危険が存在しています。
この使用済み核燃料を取り出すために東電は、今年末をめどに、クレーン用の大規模な構造物を作ろうとしています。現在は、プールの上部にある最上階の柱や壁をすべて撤去した段階です。この建設作業も、建屋に入れない1~3号機に比べればマシですが、過酷な被曝労働です。
プールの中には、1535体の燃料棒が入っており、そのうち1331体が使用済み、204体が未使用です。未使用の燃料棒は、人の手で触っても大丈夫くらいの放射能レベルですので、昨年7月、東電は、試験的に未使用燃料棒の取り出し作業を行いました。燃料の状態を知るためですが、これも未使用燃料棒だからできた作業です。使用済み燃料となると、プールから引き出した瞬間に、周囲の人間がばたばたと死ぬほどの危険物です。
そのため、使用済み燃料については、100tもある「キャスク」という容器をプールに沈め、水の中で燃料棒を入れ、蓋をしてキャスクごと水面から出す、という作業となります。ただし、プールの中には、大量のがれきが散乱しているので、まず水中のがれきを撤去しなければならないし、燃料棒がゆがんでいれば、吊り出すのは困難です。もし、燃料を落として破損するようなことになれば、大量の放射能が放出されます。1331体の使用済み燃料を完璧に安全に吊り出す作業となるので、どれほどの被曝労働と時間がかかるか、私には想像もできません。