*今回のアシアナ航空機事故による乗客,乗員の被害が奇跡的に少なかったことに注目が集まっている、当初は事故原因が運転ミスという見方に集中、犯人探しのような雰囲気もあったが、局面が転換、事故被害の少なさに注目が集まっている、航空機を利用する機会のがますます増えているので、この事故推移の報道は、いろんな意味で参考になる点が多い、
*013年 7月 08日 JST
なぜアシアナ航空機事故で多数の死者が出なかったのか?
小柄な乗務員が負傷した乗客を背負って安全な場所に運んだ。その間、乗客2人が協力して、膨らんだ緊急脱出用スライドに挟まれた他の乗務員を救出した。アシアナ機214便が炎上する数分前に、誰もが同機から急いで避難した。
Eugene Anthony Rah
6日のサンフランシスコ国際空港での事故後、緊急隊員がアシアナ機に消火剤を浴びせた
サンフランシスコ国際空港での同機の胴体着陸後の数分のうちのこうしたとっさの判断による勇敢な行動と、ジェット旅客機の事故での生存確率を高めるためのここ数年の技術的進歩によって、6日に起きた今回の事故がより多くの死者を出さないようにした可能性が高い、と専門家たちは指摘した。
着陸失敗で事故を起こしたボーイング777型機の破片が飛び散り、事故機の天井の大半が燃える炎上の原因となった。ソウル発の同機の乗員乗客307人のうち、2人が死亡した。2人はともに16歳で、大学進学前の交換留学のため米国に向かっていた中国人の学生と教師のグループのメンバーだった。他にも180人を超える人々が負傷して病院に運ばれた。7日午後の時点で、30人が引き続き地元の2カ所の病院に収容されていた。そのうち8人は重傷で、2人は体がまひした状態だ。
今回の事故が起こった時、乗客にはほとんど何の警告もなかった。アシアナ航空を頻繁に利用し、ビジネスクラスに座っていたユージン・アンドニー・ラーさんは同機がサンフランシスコ湾上空で非常に高度を落として空港に近づいていることに気づき、その後、操縦士が高度を上げようと試みていると思われるようなエンジンの音が聞こえた、と話した。
ラーさんは「地面に激しくぶつかり、跳ね上がった。乗客は叫んでいた」と振り返った。機体は制御できずに傾いたようで、滑走路から横滑りして止まった。その後、「完全な静けさ」があったという。
ラーさんは、機内で避難用スライドが膨らみ、乗務員の1人が内部の客室の壁に押し付けられたことに気付いた。ラーさんと他の乗客がこの乗務員を助け出そうと、スライドに穴を開けるための尖ったものを探した。もう1人の乗客が結局、スライドから空気を抜く方法を見つけ出した。ラーさんはこの乗務員の夫から連絡を受け、彼女は重傷を負ったが、状態は改善していると聞かされた。
機長はすぐに、全員に避難するように拡声器で叫び始めた。他の乗客が事故機から脱出し始め、緊急隊員が駆け付けるなか、ラーさんは、キム・ジヨンという名の別の女性乗務員が負傷した乗客を飛行機から下ろすために通路上で運んでいるのを見た。
Eugene Anthony Rah
ラーさんは「彼女はヒーローだった」と称え、「小柄の若い女性が泣きながら、人々を背負って走り回っていた。泣いてはいたものの、非常に冷静に人々を救助していた」と話した。
一方、サンフランシスコ警察のリン・トミオカ副所長によると、現場に到着したサンフランシスコの警察官らは、後部付近から航空機に乗り込み、煙が一段と立ち込めるなかを前方に向かった。警官たちが前方に行きつくと、男性の乗務員たちが乗客を助けようとナイフがないかと叫んでいた。そして、警官たちがナイフを差し出し、その乗務員は乗客のシートベルトを切ったという。
*乗務員もナイフ類を持たされていない?
航空安全性の専門家たちは、ジェット機メーカーや航空会社、規制当局者の致命的な航空機事故を減らす努力によって、事故の犠牲者が確実に減ったと指摘した。こうした努力は、燃えにくい素材や巨大な力に持ちこたえるよう設計された新たなシートの使用から、乗務員訓練といった分野での変更に至るまでさまざまだ。
航空事故機乗客の半数は中国人だったのか?
アシアナ機事故、クラッシュ時の生存可能性の高まり示す
アシアナ機の着陸失敗事故、操縦ミスの可能性に焦点
米バージニア州アレクサンドリアの非営利団体フライト・セーフティー・ファンデーションのケビン・ヒアット社長兼最高経営責任者(CEO)は、アシアナ機の着陸失敗は「事故の際にますます多くの乗客が生き残れるように20年以上にわたって努力してきたことの集大成だ」との見方を示した。この団体は世界の安全性の向上を訴えている。
規制当局者らは1980年代後半に、すべての新旅客機にそれまでよりも強い衝撃に耐えうるシートの設置を義務付けた。米連邦航空局(FAA)は2005年、09年10月までにほぼ全旅客機にこの慣行を適用するよう命じた。こうした規定の一部として、ジェット機のシートはテストで、重力の16倍の力、つまり、16Gで前方に投げ出す衝撃に耐える必要がある。シートが壊れたり、床から離れたりしないことを確実にするためだ。ボーイングの広報担当者は09年以降、すべてのジェット機にこの水準を満たすシートを装備していると話した。
ヒアット氏は、シートや客室のほかの部分に使用される耐火素材の改良により、「火災が非常に急速に拡大することを回避できる公算が大きい」と述べた。
さらに、乗務員訓練の強化も大きな違いを生んでいる。客室乗務員は混乱や、どの出口が安全に使用できるかが定かでないというような予測できない環境下で乗客を避難させる訓練を積む。航空機はわずか90秒以内に避難できるように設計されている。ドアや非常用スライドの半分が操作不能だったり使用できなかったりした場合でもだ。
他の要因も6日の事故の犠牲者数の抑制に役立った。事故機は着陸態勢にあり、比較的スピードを落としていたことから、衝突時の勢いが弱まっていた。救助隊員はカメラを搭載しホースの先端に取り付けられた最先端のノズルを使用していた。消防士たちはこうしたノズルを客室内部に直接誘導し、最も危険な温度の上がっている場所に水煙を向けることができた。さらに、消防隊員の一部は航空機のアルミニウムの機体に穴を開け、炎によりよくアクセスできるような器具を所有していた。