彦四郎の中国生活

中国滞在記

オミクロン株大流行の影響もあり、中国渡航は延期を希望した—北京冬季五輪まであと1カ月

2021-12-31 10:09:16 | 滞在記

 2021年の今年も、今日が大晦日となった。2022北京冬季オリンピックは、あと1か月余り後(あと)の2022年2月4日に開会式を迎えることとなる。中国の人にとって、1月31日から始まる春節(旧正月)と相まって、大きな高揚感で迎える来年の1月~2月となりそうだ。日本人にとっては、この冬季五輪では、特にフィギアスケートの羽生結弦選手の演技がどうなるか、オリンピック三連覇実現が果たせるか、とても気になるところだろうか。

 この北京冬季オリンピックの開催に対する外交的ボイコット問題。ウイグル族に対する中国政府の人権問題などに対する抗議の意思表示として、北京冬季五輪での外交ボイコットを、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアの各国政府は11月下旬~12月上旬にかけて表明した。日本政府もその対応が迫られていたのだが‥。

 12月25日付朝日新聞に「閣僚や高官派遣せず 北京五輪 山下・橋本氏出席」「玉虫色 外交ボイコット—中国に配慮し文書は使わず/安倍氏にせかされて表明決断―中国、日本の判断を"歓迎"」の見出し記事。この記事によれば、日本も事実上の外交ボイコットではあるが、中国政府を刺激しないよう、玉虫色の表明(意味:見る角度によって色調が異なる現象のこと。"あいまいな"という意味でも使われる。)ということになった。フランスは2024年夏季オリンピック開催国という事情もあり、この外交ボイコットには参加していない。韓国の文在寅大統領は、中国との関係最重視政策のためか、この外交ボイコットは考えたこともないと表明し、考えも検討もしないという人権外交における体(てい)たらくぶりを示していた。

 日本の政党では、この外交ボイコットに関して、日本維新の会や国民民主党や日本共産党は、「外交ボイコットを表明し中国の人権問題への抗議意志を世界に示すべし」との意見。公明党や立憲民主党は「外交ボイコット問題には慎重な対応を」という意見であった。(12月19日付「赤旗日曜版/日本共産党機関紙」では、「北京五輪開閉会式への政府代表の不参加は当然—日本政府は中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の順守を求めよ」の見出し記事が掲載されていた。)

 昨日12月30日付朝日新聞には「香港ネットメディアも標的—警察『立場新聞』幹部ら7人逮捕/ニュース配信即日停止—リンゴ日報に続く弾圧」の見出し記事‥。これら最近の香港情勢では、著名な歌手である何韻詩(デニス・ホー)氏も逮捕さたと報じられた。

 12月19日朝日新聞には「ロシア プーチン氏 北京五輪出席表明 オンライン会議で習氏"楽しみ"と」の見出し記事。このプーチン大統領は、ウクライナ侵攻のための10万の軍勢をロシア・ウクライナ国境に最近集結させてもいる。今日12月31日付朝日新聞には「ロシア人権団体に解散命令—歴史美化する政権 排除へかじ」の見出し記事が掲載されていた。この二人は‥‥。

 新型コロナウイルスの世界的パンデミックが中国武漢から始まって、2年間が経過しようとしているが、終息のきざしはいまだ見えなく、3年目に入ろうとしている。従来株からの変異種であるデルタ株に置き換わって、オミクロン株が新たに出現し世界的な感染猛拡大が再び起きてきている。2年前に中国から始まって、それから2年後となる北京冬季オリンピックで一つの節目を迎えることとなるが、人類の苦難はまだまだ続きそうだ。北京冬季オリンピックでは、外国からの一般観客は受け入れないが、国内の観客は満席を収容することとする予定だ。外国人選手は中国入国後に長期隔離を受けることとなる。その後、厳格な管理のもと、バブル内での生活となる。

 日本では、デルタ株の1日新規感染者数2万5000人あまりを記録した8月20日以降は徐々に新規感染者が減少し始め、10月に入り全国的に「緊急事態宣言」などが解除、11月には新規感染者数が100人以下になる日もでていた。しかし、12月下旬になり、第六波感染拡大の兆しが顕著(けんちょ)となり始めている。昨日12月30日の新規感染者数は400人を超えてきた。12月1日付の新聞では、「オミクロン株国内初確認—ナミビア外交官」の見出し記事。

 このような状況下、11月30日付朝日新聞には、「外国人の新規入国停止/入国停止 首相駆け足」の記事。テレビでも「オミクロン株 世界急拡大 水際阻止—外国人入国禁止」「岸田首相声明 全世界を対象に禁止致します」と報道されていた。この日本政府のオミクロン株への対応により、この12月に日本の広島大学(3人)と神戸松蔭女学院大学(3人)へ1年間の交換留学で日本に渡航する準備をしていた閩江大学3回生の6人は、日本への渡航が当面は延期となった。いつ渡航できるかは今のところわからない状況となった。

 この日本政府の「外国人入国禁止措置」の発表は、私の中国渡航に関しても大きな影響をもたらすことともなってきた。(後述)

  12月上旬、全世界で報告されたオミクロン株感染判明の感染者数は300人余りとまだ少なかったのだが‥。この12月下旬までの1カ月間では、この2年間の世界的パンデミックの中でも最も爆発的な感染拡大が起きてきている。デルタ変異種株よりも重症化率は低いようだが、その感染力にはすざましいものがあるようだ。

 アメリカでの1日の新規感染者数がこの12月下旬には多い日で44万人超となり、フランスでは20万人超、イギリスでは18万人超など、世界全体では1日の新規感染者数が173万人(12月30日)と発表されている。また、世界での新型コロナ感染者総数はこの年末には3億人近くとなっている。なんと26人に1人が感染したこととなる。今、いわゆるデルタ株とオミクロン株の二つの変異種が猛威を振るい、世界的パンデミックが起きて以降、最大の感染者増加となってきてもいる。

 今、世界の新型コロナワクチンの接種率は、50%~90%にのぼっている国が多い中、アフリカ諸国は全体で10%の接種率となっている。いわゆる経済的に豊かではない国には、なかなかワクチンが届いていない。今回のオミクロン変異種株の発生は南アフリカ地域エリアとされているが、これはワクチン接種率も低さが要因の一つとなっている。世界的パンデミックの終息のためには、全世界的にワクチン接種が普及する必要性が改めて浮き彫りとなった。

 日本ではこのオミクロン株感染判明者は、12月29日時点で18都府県に広がり、242人となった。年末年始、人の動きが大きくなり、再びの感染猛拡大での第六波が心配される。10月上旬に緊急事態宣言等が解除されて、たった2カ月間あまりの規制解除期間が終わろうとしている。コロナ禍下の非日常が日常となってきている。

 今、日本でも3回目のワクチン接種の緊急的必要性が求められている。日本での2回接種率は75%近くにのぼっているが、ワクチンの有効期間が切れ始める人が多くいるからだ。2回目接種から8カ月間後とされる3回目のブースター接種だが、7カ月間後に前倒しを要請する自治体が増えてきている。私の場合は6月中旬に2回目接種が終っているので、8カ月後は来年の2月中旬となるが、私が暮らす京都府の自治体では2月下旬から3回目接種を始めるようだ。もう1か月早く、1月下旬には接種開始をしてほしいところだが‥。

 北京冬季オリンピックまであと1か月間余りとなった中国でも、新型コロナ感染者が増加し始めているようだ。特に、中国の内陸部にある古都「西安」では、この12月中旬から感染拡大が始まり、都市封鎖が実施されているが、1日の新規感染者が多い日で200人を超えた。この1日の感染者数は1、中国では1年9カ月ぶり(2020年の3月以来)となり、12月下旬段階での西安の感染者数は1000人を超えた。

 この感染状況に、中国政府はとても強い警戒感を示している。春節と北京冬季オリンピック開幕式が1か月後に迫っている状況下でもあるからだ。ここ最近の中国のインターネットニュースではこの感染拡大問題が常にトップ記事となってきている。

 中国国内でのオミクロン株感染者の判明は、この12月下旬には5つの地区で判明した。中国のインターネット記事では「奥密克戒(オミクロン)瘋狂传播 中国己被被波及 疫苗(ワクチン)还有用吗」「在中国 己有5地出現 奥密克戒」「全球己有110个国和地区」(※意味:中国でもオミクロン株が狂気的に伝播している。ワクチン接種による感染回避はまだ有効だろうか。中国では5つの地区["広州・深圳・上海・杭州・天津・長沙など"]でオミクロン株感染者が判明している。世界では110の国や地域でオミクロン株感染者が発生。)

 昨年の12月(2020年12月)から今年1月・2月上旬(2021年1・2月)にかけて、中国の北京市や河北省、東北3省(遼寧・吉林・黒竜江)を中心に感染が拡大し、春節での故郷への帰省や旅行での移動が厳しく制限(事実上の禁止)された中国だが、1年後の今もまた、再び感染拡大への警戒感が強められている。

 さて、私の中国渡航の件だが‥。今年の9月10日に大学より「中国渡航の許可が出ましたので、中国渡航に向けての準備をしておいてください」との連絡が入った。「いよいよ中国に渡航しなければならないか‥」と、4週間の隔離を覚悟することとなったが、その1週間後には、「大学のある福建省でコロナ感染が拡大しているので、当面の間、渡航許可が取り消されました」との突然の連絡が入った。日本の広島大学や神戸松蔭女学院大学に1年間ほど交換留学に来ていた4人の学生たち(現4回生)たちは、8月20日ころの飛行機で中国の福建省に到着したのだが、この福建省での隔離生活は福建省でのコロナ感染拡大のあおりをくって、なんと6週間もの隔離生活を要求されることとなった。(ホテル隔離が6週間)

 11月下旬になり、再び「中国渡航が許可されましたので、新規の就労ビザを日本国内で申請して、来年の1月中旬には中国に渡航できる準備をお願いします」との連絡が入った。1月中旬に中国に渡航するとなれば、4週間の厳重な隔離期間を経て、2月20日ころから始まる後期授業(2学期)は、今までのオンラインではなく大学の教室での対面授業となる。対面授業ができることは嬉しいことなのだが‥。

 日本国内に、私と同じ大学に勤めている教員が他に2人いる。彼等もこの2年間ほどは日本に滞在し、オンライン授業を継続している。2人は12月上旬には、「年明けの中国渡航はさまざまな事情で難しく、来年の7月~8月下旬までの夏休み期間の渡航を希望します」との旨を大学側に早々に伝えていた。私はどうしようか‥。大学側からは、「先生だけでも年明けには来てほしいのですが‥」の連絡が断続的に届いていた。とても迷いながらも、とりあえず、大阪にある就労ビザ申請作業を請け負ってくれる会社にも行って相談する。

 その会社の担当者によれば、「この年明け早々から2月下旬までの期間の中国渡航は、北京五輪もありますし、かなり厳しいものがありますよ‥」とのこと。まず、日本—中国間の航空機の運航は、日本政府の外国人入国当面禁止措置の影響で本数が極端に減少し、航空機運賃が高騰しているとのこと。日本—福建省福州の航空機運賃はコロナ前では、片道3万円以内だったが、最近では10倍の30万円となっているとのことだった。さらに隔離用ホテルで3週間の場合は、その費用が17万円ほど、飛行機に搭乗する前の2回のPCR検査費用で6万円など、合計50万円超の費用が発生しますとのことだった。

 この費用は、自費での払いとなるので、「4週間もの隔離生活を強いられ、50万円もの出費」という現実‥。この50万円とは、中国の大学から毎月支払われる給料の4カ月分以上にもなるのだった。(※私の大学での月給は、週に14時間程度[45分×]を担当して月に7500元[日本円で12万円ほど]。中国は、日本の3分の1程度の給与差なので、この月給は、日本での月給36万円くらいの感覚に相当する。

 4回生の学生からも、「先生、中国にいつきますか?会いたいですよ」とも伝えられてくるので、どうしようか、相当に迷ったが、12月20日頃に、大学側に、意を決して、「1月・2月の渡航は膨大な費用等の事情などもあり、渡航延期を希望します。渡航希望としては来年の夏休み中を希望します」との連絡をした。

 12月に入って胃の具合に不調を感じ始める。特に空腹時に軽い痛みや不快感を感じる。おそらく胃潰瘍ができているのだろう。ガスター10などの薬を毎日飲むが症状は回復できなかったので、この12月17日に胃カメラ検査をしてもらった。結果は胃潰瘍ができていた。2014年以降、これで3度目の胃潰瘍の発症。胃潰瘍の原因となる胃の中にいるピロリ菌(日本人の半数近くが保菌)を除去することにして、そのための薬を毎日服用している。このため、昨日には胃潰瘍の自覚症状はほぼなくなった。年明けの1月中には胃潰瘍の穴は完全にふさがるだろうとのこと。胃潰瘍はストレスの増大が引き金となることが多いようだ。

 まあ、こんな、私の中国渡航の件で振り回される日々の2年間でもあった。今、海外で仕事をするということは、とてもリスクが高すぎるという時代ともなっている。そして、今年がいよいよ今日で終わる。

■先週で大学での前期授業が全て終わり、今週から期末試験期間に入った。今学期担当した3教科の期末試験も今週に実施。今日31日は、2回生の「日語会話3」の期末会話試験を、一人一人と行う予定となっている。(中国では、1月1日のみが休日となる。中国にとっての正月とは春節[2週間ほどの休日]のことだからだ。)

 その2回生の学生の一人から、「熱が出たので、昨日、隔離施設に入りました。会話試験は隔離施設から受験することになります」との連絡が入った。今、中国では、とにかく37.5度以上の熱が出た場合は、隔離用の施設に入ることとなっているようだ。このあたりも世界で最も超厳しい0(ゼロ)コロナ政策の中国は徹底している。この12月に日本より中国に渡航したアパート住まいの日本人が、ホテル隔離を終えて、自宅アパート隔離(上海)中期間にコロナ陽性が判明し、アパートとその付近の8000人余りが、2週間の自宅隔離となったと報じられていた。付近の住民からしたらいい迷惑である。外国から渡航してくる外国人に対しても厳しい地域の目が注がれるのが中国コロナゼロ政策だ。

■1月15日から2月20日まで、大学は冬休み期間に入る。私たち教員は、この年末から年明けの1月10日あたりまでは、期末試験の採点やら膨大な成績資料作成などに追われることとなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


京都府立鴨沂高等学校での講座❹今の高校生たちは、私の講座にどのような感想を持ったのか‥

2021-12-29 18:27:50 | 滞在記

   12月10日(金)に行われた鴨沂高校での講座授業が終わってから数日後、高校の担当者から「先日の講座授業の、生徒の感想を抜粋させていただきます。生徒にとって(私にとっても)大変良い学びとなりました。本当にありがとうございました。」とEメールが送られてきた。私の講座授業に、高校3年生の生徒たち、18歳の若者たちはどんな感想をもったのか気になっていたので、さっそくその抜粋感想を読んでみた。以下、その感想(原文ママ)であった。

〇とても興味深いお話でした。日中友好が大切だと思った。

〇京都に住んでいると当たり前だと思っていたものが、他府県に住む人や外国人から見るととても素晴らしいものであるということがよくわかった。しかし、見直さなければならない課題も沢山あり、考えが深まった。今後は京都で住んでいることに対して前以上に誇りを持とうと思った。

〇京都の文化は地球の様々な問題を解決する手段のひとつになることができるんだなあと思った。

〇現代社会の問題として、地球温暖化や自然災害、地域コミュニティの希薄化などがあるとわかりました。京都の魅力については、自分たちが過去に授業で挙げたもの以外も紹介してくださったので、新しい発見がありました。

〇言論の自由と報道の自由はとても大切だと言うことがわかりました。

〇今、日本においても世界においてもたくさんの問題があることがわかった。

〇あまり今の問題をまとめて見ることはなかったから、環境問題、格差問題、言論の問題など、改めてまとめて見ると多いと思った。でも、前回みんなが発表したのも含めて、世界がひとつになって頑張ればきっと解決できると思った。

〇京都は過去のもの(文化とか歴史とか)ではなく、まだまだ過去から学び現代に活用できると思った。今、世界全体的にコミュニティが減っている問題があり、それを解決する方法には、伝統風習を守ったり、史資料などを活用したものがあり、どっちにしても昔のことから学ぶことは多いと感じ、可能性の大きさも感じました。

               

〇今日現代社会の問題について考えて、みんなは理解はしていても、現実的に困難な問題が多いことに気付きました。

〇私は「経済的に豊かでも幸福度が高いとは限らない」という話が印象に残りました。たとえ、収入が多く経済的に裕福であっても、誰とも関わらなかったり人間関係が乏しかったりすると幸福度は高くならないし、そこから改めてたくさんの人とコミュニケーションをとることの大切さを学べました。

〇自分の視野を広げるにはさまざまな人の意見を聞くということが大切だとわかった。

〇社会問題はそれぞれ繋がりがあることがわかった。

〇世間について改めて知ることができた。

〇大体の問題は解決できそうだと思った。

〇地域のコミュニティが重要だと思った。

〇中国に留学するので、中国の民族について詳しく知れてよかった。

〇中国の大学受験の厳しさには驚きました。

〇住んでいて、よくわからない京都の魅力が更にわかりました。

〇特に貧困の問題での「1年間に生み出される世界の富のうち、82%を上位1%が独占している」という事実に驚きました。それに関連して、幸福度ランキング上位国の「人のために貢献すること」が、人生の生きがいであるという意見は、素敵だと思った。

〇日本だけで見るのではなく、世界的に見ることの大切だということがわかりました。

〇日本を出て見た方が、良い点や課題などがよく気がつくことがわかりました。

〇貧富の差の問題は、あまり深く考えたことがなかったので、調べてみたいと思いました。200万円以下は苦しい生活になるとか…‥、今は、親にお金を出してもらって生活しているし、生活にどのくらいお金が必要なのかはほぼ知らないです。実際に、自分でお金を稼いで、1人で生活していかないといけない時の為に知っておくべきだと感じました。

※生徒たちの感想の抜粋は以上でした。まあまあ、それなりに、現代の18歳の心には伝わったかと感想を見て思いました。「現代の社会問題」に関する講座授業を日本の高校生に行う機会が持てて、「依頼を引き受けてよかった」とも思いました。

 12月10日(金)のこの日、午後3時20分に講座授業が終わり、鴨沂高校を3時45分ころに出た。まだ1時間あまりは陽(ひ)が暮れない時期なので、京阪電車の出町柳駅まで、御所に沿った懐かしい寺町通りをゆっくりと歩くことにした。「紫式部邸宅址」の石碑がたつ蘆山寺(ろざんじ)や、萩の花の名所・梨木神社、かっての立命館大学広小路キャンパスから徒歩5分ほどのところにあった立命館大学大学の建物は、今は、住宅マンションとなっていた。この建物で、関西大学から出向講義に来ていた鰺坂真教授の「ヘーゲル法哲学」の講義を受けたことが懐かしい。

 大勢の学生たちでよく賑わい(低料金かつ大盛の店)、私もよく食べに行った中島食堂はもう廃業していた。その近くにあった同志社大学のハワイ寮(1回生の前期の頃は、お金が無く住むところもなかったので、無料でしばらくここで生活させてもらった)は、今は外国人留学生の寮となっている。

 河原町今出川の交差点に近い「桝形(ますがた)商店街」に立ち寄り、まだこの季節にも関わらず果物店に置かれていたイチジクを買い、古書店で3冊の本を買い求めた。小さな映画館「出町座」に入って珈琲を飲んで一服。ここから、鴨川に架かる橋を渡るとすぐに出町柳駅となる。

 

 


京都府立鴨沂高等学校での講座授業❸—生徒たちの8つの発表と、それに関する総合コメント

2021-12-29 07:36:00 | 滞在記

 5時間目の第二部「京都の魅力とは何か?」の講座が終わり、10分休憩に入る。急ぎ校門を出てタバコを一服。6時間目(50分)は、生徒たちによる8つの発表(1つ4分程度)から始まった。

 生徒たちの8つの発表テーマは以下の通り。

①文化資源を活用した地域コミュニティの活性化、②家族の形の変化と地蔵盆、③近年の空き家増加について、④京野菜の機能性

 ⑤SDGs1位の京都から学ぶこと、⑥地球温暖化、⑦目指せ 温室効果ガス削減、⑧在日外国人への差別

 ①~⑤のテーマは、私が5時間目に話した「世界、日本における、社会問題」の四つ目の問題(課題)「家族・地域での人とのつながり」と重なり合う発表テーマだった。これら8つのテーマのPPT(パワーポイント)は、高校の担当者から事前に私の方に送られてきていたので、総合コメントの際に使用する私のPPTも準備していた。

 生徒たちの発表後、総合コメントを行った。「みなさんの発表①近年の空き家増加/過疎化の問題、②京野菜の機能性」に対するコメントの中では、NHKの番組「逆転人生」で放映された「地域再生」のことを紹介。今年8月に中国からの留学生たちと訪れた兵庫県丹波篠山市丸山集落の地域再生のようすも紹介した。

 また、2013年に日本の和食が世界無形文化遺産に登録されたことを知らせ、なぜ和食が世界的に評価されたのかについて話す。日本の食糧自給率はかなり低いという問題についても話す。

 「みなさんの発表③家族の形の変化と地蔵盆、④文化資源を活用した地域コミュニティの活用、⑤SDGs1位の京都から学ぶ」に対するコメントの中では、"世界"幸福度調査のことについて話した。最近のこの世界的調査では、1位はフィンランド‥‥ 56位が日本(G7の中では最も低い)、‥‥調査149か国中、最下位の幸福度が最も低い国はアフガニスタンであったことを告げる。   

 人間が「幸福」と感じるためには、経済的な安心感があれば幸福度は上がるのだが、それだけでは「幸福度」は高くはならず、「家族・地域」での人の豊かなつながり、地域環境の豊かさなどが大きな比重を占めるという実例を示した。例えば、日本の都道府県の幸福度調査では、1位が沖縄県となっている。(2位宮崎・9位京都・34位大阪)そして、45位と47位は東京都と神奈川県。しかし、平均年収の都道府県調査では、1位は東京都、2位が神奈川県、‥‥‥、そして47位が沖縄県となっているのだと話した。

 また、月刊雑誌『子どもと教育』の2009年6・7月号に私が連載した記事「大切なものは、太陽と水、そして家族—"八割 幸せ!"フィリピン流 貧困もなんのその、家族の支えと笑顔の国」のことについて話す。そして、「高齢者がとても元気に過ごす国、中国社会」のことについても、そのようすについて伝えた。

 「みなさんの発表⑥地球温暖化、⑦目指せ、温室効果ガス削減、⑧在日外国人への差別」に対するコメントの中では、中国における環境汚染の実態、特に空気と水の問題の問題についての実際について話す。また、京都市におけるこれから起きる環境的地域の問題として、北陸新幹線延伸問題や京都府植物園とその周辺の開発問題などを知らせた。

 在日外国人が200万人を超える今の日本だが、緊急に解決するべき問題として、「難民申請」に対する問題と「外国人技能実習生」の問題について話をした。そして、中国に対する最近の「対中感情」の悪化の問題に関連して、「日本民族と中国民族」の対人関係における相違を話し、それは、それぞれの国がたどってきた歴史の違いからきていることを話す。

 この講座授業の最後に、中国武漢在住の作家・方方の『武漢日記』の中で書かれている言葉を紹介した。その言葉とは、「文明の唯一の尺度は、弱者にどのような態度をとるかだ」という言葉。そして、「一つの声しかない社会は健全な社会ではない」という言葉。

 貧富格差の問題、言論の自由の問題、地球環境の問題、家族・地域での人と人のつながりの問題などがある今の世界は、これから紆余曲折(うよきょくせつ)を経ながらも、この方方の言葉がキーワードとなって世界は動いて行くだろうと語り、講座授業を終えた。

 

 

 

 

 

 

 


京都府立鴨沂高等学校での講座授業➋―貧富・言論・環境・人のつながり—京都の魅力とは?

2021-12-28 06:08:02 | 滞在記

 「今の日本で、世界で」最も大きな社会的問題の二つ目、それは「言論や報道の自由」についての問題だと告げる。

 この問題は、日本では人々にあまり意識されてはいないが、しかし、世界的にみたら、この問題はとても大きな問題なのだと話す。今年のノーベル平和賞が2人のジャーナリストに授与されたが、これは言論・報道・ネットの自由が世界的には大きく規制・統制されている国々が多いからだと話す。朝日新聞の最近の記事では、世界200余りの国で、ロシア・中国・イラン・北朝鮮などは特に言論・報道・ネットの自由度が低いことを示していたと紹介する。民主主義vs全体主義の世界的対立との構図とも言われると話す。
 私の中国生活9年間での、この言論・報道に関する私の日々の怖い思い(当局からの一方的なブログ削除など)の体験についても話した。

 三つ目の「環境問題」、とりわけ台風の発生増加に伴う、洪水・土砂崩れの多発と地球温暖化の問題につい話す。そして、四つ目の「家族・地域のつながり、コミュニティと人の生きがい」の問題について話す。2000年代に入って日本では「無縁社会」という言葉もうまれ、年間に3万人以上の人が「無縁仏」として死を迎える日本の実態についても話す。特に世界全体に高齢化が進む中、この問題はとりわけ大きな社会問題となっていくことを生徒たちに意識してもらった。5時間目の第一部「現代社会の問題―総論」の講座は、30分ほどをかけて話をした。

 5時間目の第二部「京都の魅力とは?」の話に移る。なぜこの話をするかと言えば、授業に参加している生徒たちは、「日本文化コース」の学科生徒であり、また、現代の社会問題の四つ目とも深く関わっているし、この日の生徒たちの8つの発表も京都の町に関連しているものが多いからでもある。

 「京都市は、世界観光都市人気ランキングで2014年と2020年には第一位に選ばれました。また、2018・19年には第二位となっています。そして、イタリアのローマやフィレンツェとともに、人気ランキング上位の常連都市として、殿堂入りをしました。その京都市の魅力って何だと思いますか。みなさんはどう思いますか?」と生徒たちに問いかけた。

 日本の周囲の国々(アメリカ・カナダ・ロシア・モンゴル・中国・フィリピンなど)へ行ってみて、さまざまな都市を見たが、私が思う京都の魅力とは何か?このことを話しますと生徒に告げる。そして、七つの魅力について話した。

 それは、「①清流・鴨川をはじめ、人々との距離がとても近い清流の川がとても多いこと、②世界遺産にも指定されている神社で寺院がとても多いこと、③伝統的な町並みが多いこと」

 ➃「1年を通じて祭りがとても多いこと、⑤市内には20以上の大学があり、学生の町であること、⑥祇園や先斗町など、世界遺産に指定されてもいいような飲食店街が伝統的な建物群とともに多くあること、⑦周りを緑豊かな山々に囲まれていて気持ち的にも安らげること」と、各要素ごとに話した。特に、繁華街を清流が流れ、市民が憩うさまは、100万人以上の都市としては、世界的にみてもなかなかないことを話す。

 ただ、世界的な観光都市として足りないものとは何か?についても話す。それは、外国人が観光で訪れても、夜の楽しみの一つである「観劇・舞踊」などを年間を通じて行う劇場がないことと話した。

 この講座授業の前半である5時間目はここで終了した。

 

 


京都府立鴨沂高等学校での講座授業➊「現代社会の問題(課題)とは何なのか」貧富格差・言論・‥

2021-12-27 15:54:21 | 滞在記

 依頼があって、京都府立鴨沂高等学校で授業(講座)をすることとなった。授業日は、この12月10日(金)とのことであった。鴨沂高校の創立は明治維新後まもない1872年、150年ほどの歴史のある高校だ。創立まもない頃には、NHK大河ドラマ「八重の桜」の主人公だった新島八重も教鞭をとったこともある。また、1937年にはヘレンケラーが来校し講演をおこなってもいる。学者・歌手・俳優・女優・文化人などの著名な卒業生も数多い。京都府では洛北高等学校とともに、とても歴史ある高校だ。

 今年の7月には、この学校での「ベトナム・中国・日本、国際交流会」の授業に参加し、総合コメントを行ったことがあった。この交流会に参加した中国人留学生4人は、中国・閩江大学の教え子たちだった。今回、依頼を受けた3年生たちへの授業(講座)内容は「現代社会における社会問題」。授業時間は、午後1時半から3時20分まで(50分+10分(休憩)+50分の100分授業)とのこと。事前の高校の担当者との電話やメールでの打ち合わせで、「前半の50分は私による基本講座、後半の50分は生徒たちによる8つの発表と、それに対する私の総合コメント」という授業の流れに決まった。

 当日、高校近くの喫煙可能の喫茶店で昼食とタバコをして、午後1時ころに鴨沂高校に入った。正門前の寺町通りの向かいは京都御所。まだ、銀杏(いちょう)の大木が黄色の盛りだった。

 授業を受講する生徒たちは3年生の「京都文化コース」の40人。講義内容のテーマは、「"現代社会の課題(問題)"、そして、"京都"という町のこと」。授業は午後1時半から始まった。

 まずは、私の簡単な自己紹介。中国でのこの9年間、赴任した福建師範大学や閩江大学でのこと、中国の大学について紹介。

 生徒たちに、今日の100分授業は、5時間目の第一部「現代社会の問題(課題)とは何なのか?」と第二部「京都の町の魅力とは何なのか?」、6時間目の第三部「みなさんからの8つの発表と、それに対する私からの総合コメント」であることを告げた。

 まず、「世界の今、日本の今、現代社会の最も大きな4つの問題(課題)って何だろうか?あなたはどう思う?」と問いかけた。生徒たちは、各自が持っているタブレットで、考えていることを書き、その意見を集められたものがスクリーンに映し出された。多くの人が書いているものほど、文字が大きくなって表示されていねので分かりやすい。「地球温暖化」という回答の文字が最も大きく表されていた。続いて少し大きいものが「食料」「安全保障」「食料自給率」「紛争」。他には小さな文字で、「経済格差」「環境問題」「環境汚染」「貧困」「ゴミ」「発展途上国」「自然災害」「被害」などの文字が表示されていた。

 おおむね、「環境問題/地球温暖化/環境汚染/ゴミ」などの環境問題に関する回答が多い。これはこの世代の社会問題意識なのだろうか…。それはそれで、必要な問題意識なのだが‥。しかし、それだけの問題意識(視点)では「今の世界、今の日本の社会問題(課題)」の全般を、より、「今の、そしてこれからの世界をみることはできない」と生徒たちに告げる。そして、私が考えている「いろいろな現代社会の問題の中でも、すごく大きな、根本的というか、人類にとって改善・解決に向けて取り組むことが必要な、最も大きな問題(課題)」について4つのことを告げた。

 まず一つ目は、「貧富の格差の増大の問題」、二つ目は「言論・報道の自由の問題」、三つ目には君たちの回答に最も多くあった「地球環境、特に温暖化の問題」であること。そして、四つ目は「人類の寿命が延びる中(高齢化)での、人々の生きがいの問題。それを支える家族・地域コミュニケーション(子供から大人・お年寄りまで)。家族や地域の在り方の問題」であると伝えた。そして、今日の6時間目に発表する君たちの8つの発表内容は、実は、特に、゛貧富格差問題""環境問題""家族・地域の在り方と人々の生きがいの問題"と密接な相互関連性があるのだと話し、これらについての知識を学び、より広い視座でその問題を捉えることの大切さを、今日の授業で学んでほしいと生徒たちに伝えた。

 まず一つ目の「貧富の格差の増大問題」の日本と中国、そして、世界の現実について次のことを20分ほどかけて話した。①「日本の勤労者約6500万人のうち、約40%が非正規労働者(1985年15%➡2000年25%➡現在40%)。つまり2.5人に1人が非正規である」こと。特にコロナ禍下ではこの非正規の人がまず解雇され、特に女性やシングルマザーの生活困難者が多くでている」こと。②「日本の世帯(家庭)の資産階層は、全世帯約5400万のうち、超富裕層(5億円以上の資産)と富裕層(1億円以上の資産)の合計世帯数比率2.35%の階層が、日本の資産保有量の20%を占めている」こと。

 ➂「日本人の年間所得調査(日本の勤労者約6419万人の国税庁調査)によれば、昨年の平均年間所得は430万円余りだが、生活貧困者の目安となっている200万円以下の比率は30.6%。つまりほぼ3人に1人にあたる」こと。この勤労者には該当しない高齢者(年金生活者)が年間に支給される年金額は60万円~140万円なので、これらの高齢者を合わせると、年間所得200万円に満たない「相対的貧困層」は50%近くの比率となる。つまり、「2人に1人がこの層となっている」ことを話す。また、超富裕層でもある「日本の保有資産トップ100人」についてもふれる。(1位ユニクロ創業者柳井氏、2位ソフトバンク創業者孫氏、‥5位Zooz創業者前澤氏[この12月に100億円の旅費で宇宙旅行]‥‥ビートたけし氏、有吉氏、指原莉乃氏など)

 ④「1億円の壁―1億円以上の所得からは税率がとても下がる」という税制の問題のこと。そして、この10月下旬にあった衆議院議員選挙の当選者全員に、朝日新聞が行ったアンケート質問「所得や資産の多い人への課税を強化すべき」を紹介。この質問に対し賛成した各政党の比率は—自民43%、公明44%、立憲90%、国民民主91%、日本共産100%、れいわ100%、そして、大躍進した日本維新は24%と最も少なかった」ことを話した。

 ⑤続いて、中国での貧富格差の実態について話す。「最下層と下層(月収0元~2000元)[日本円で0円~3万2000円]の階層の人々が9億6400万人。これは中国の人口の68.85%、つまり3人に2人はこの階層となること」や「世界のミリオネラー(億万長者)人数が、今年、アメリカの人数を越えて、初めて世界一になったこと」なども話す。⑥世界の貧富の格差増大の現実として、「世界で1年間に生み出された富のうちの82%を、世界で最も豊かな上位1%が独占していること」について述べる。

 ⑥この貧富の格差増大問題の是正などの政治的な取り組みなしにして、日本及び世界の、そして、今日みなさんが発表するさまざまな問題についての解決はすすまないことを説明した。この貧富格差増大問題への問題意識をもつことの重要性を指摘した。(新型コロナ感染拡大パンデミックに対するコロナワクチンの接種率も、経済格差により世界各国は大きく違うことも指摘。)