彦四郎の中国生活

中国滞在記

国際結婚も増えつつある中国人男性の結婚事情❷ウクライナ・ロシア、そして東南アジア諸国からの花嫁

2019-06-18 08:55:38 | 滞在記

 中国のインターネットサイトには、様々な「結婚サイト」がある。20代・30代だけでなく40才代〜60才の年齢別の「結婚や付き合いのサイト」だ。そして、「国際結婚」のサイトもある。このようなサイトは近年、盛んになる一方だ。これは、かって日本でも2000年代に入ってから「農村・地方への嫁のきてがない30代後半から40才代・50才代前半までの未婚男性」の花嫁募集に関して多くあったものとよく似たものだが。(日本では主にその対象女性は、ロシア・中国・フィリピン女性が多かった。)

 2010年にGDPで日本を越えて世界第二となったころから、中国でもそのような国際結婚サイトが開設され始めてきた。それは、日本のように地方への嫁のきてがなかなかない事情に加えて、中国独自の深刻な事情も二つある。それは、「①中国の女性と結婚する場合、結納金(女性の親に支払う)や新居や車(住居や車の購入など)などの準備が半端な金額ではない。②40年間にわたる一人っ子政策により、国際的にも超いびつな男女比率、女性の数が少ない。」という問題だ。

 中国のインターネットサイトには、さまざまな国の女性についての記事も多い。例えば、「世界で人の多い国ベスト4」などなど。このようなサイト記事では、「1位ウクライナ、2位ロシア、3位ウルグアイ‥‥」などとなっている。中国はとても広大な国なので、さまざまな国と国境を接している。経済的にも金持ちも増えてきた中国だが、最近増えてきているのが、ロシア人やウクライナ人、そして、東南アジア諸国の女性との国際結婚だ。ウクライナやロシア人との結婚などは「女神を手に入れた」と一種のステータスとして羨ましがられる。(中国東北部[遼寧省・吉林省・黒竜江省]の三省はロシアとのつながりが近現代になってつよい)

 現代中国では、結婚適齢期の男性は女性より約3400万人多い。(2018年統計) その結果、中国人女性との結婚が望めない男性が数千万人以上に達しているといわれている。現代中国人女性の「花婿候補」の基本3条件は、"新しい持ち家""自家用車""高収入"の3つだ。それらの購入は両親が全面的に協力・支援するが、結納金も含めて、どんなに最低でも 結婚に際して当座 100万元ほど(約1600万円)ほどが必要となる。日本との金銭価値は3倍ほど違うから、日本円にして約5000万円ほどが必要となる。息子や親にとって、それでもものすごい金額だ。(住宅購入はローンを組むことが多い)  都市部と地方の経済格差が今も大きい中国では、とりわけ地方の結婚問題は深刻な社会問題の一つとなっている。セックスドールなどの販売数がとても多いのも中国だ。

 最近では経済発展に伴う女性の地位向上による、高学歴で自尊心・自己中心性が高い中国人女性を嫌い、従順な東南アジア女性を好む都市部の中国人男性も増えてきたという。東南アジア女性は、「中国人女性に比べ、お金や権威などに執着心が少ない」と思われている。このため、近年は、ベトナム・カンボジア・タイ・ミャンマー・ラオスなどへの「お見合いツアー」などが盛んで、1週間のお見合いツアー日程で、200人ほどの花嫁候補との集団見合いが可能とも言われ、気に入れば即結婚も可能という。中国人女性との結婚に必要な金銭もあまり必要がない。

 中国のネットサイトには、「東南アジア妻5万元(約80万円)」「3カ月以内の結婚可。原則、処女。1年以内に嫁が逃亡した場合、別の嫁紹介などの3大保証付き」などど、公然と人身売買の広告が掲載されているものもあるようだ。中国と国境を接しているベトナムやラオスやミャンマーなどから誘拐されて中国に拉致されてきた女性も多いとされるが、最も多い手口は「仲介業者から高額の給料が期待できると勧誘され、出稼ぎと偽って中国に連れてこられた女性達」が、この花嫁の候補(中国でお見合いさせられる)として、お金で仲介・売買されるようなケースが最も多いとされる。

 今年の5月、中国雲南省昆明の公安局は、雲南省とベトナム国境でベトナム人女性を拉致し、中国国内への人身売買を行ってきた中国人容疑者23人を逮捕したという報道がされていた。国境地帯を経由して、少なくても11人のベトナム女性を扱った容疑。このような、警察・公安の動きはこれまではとても少なかったようだ。巨大な花嫁産業は、賄賂など、中国地方当局の腐敗、汚職の温床の一つとなってきていたからである。

 いずれにしても、中国人男性にとって、「結婚問題」というのは、たいへんな問題なのである。

 

 


国際結婚も増えつつある中国人男性の結婚❶全世界都想娶日本女人、日本的女人有哪些特点

2019-06-18 06:49:31 | 滞在記

 「世界中の男性は皆、"日本女性"を娶ることに一種の憧れを持っている。日本女性にはどのような特徴があるのだろうか。」というような意味のインターネット記事が報道されることは中国ではよくある。上記の写真の記事もその一つ。その記事によると、「俗話説住英国房子、用中国厨師、娶日本女人、拿美国工資。」(俗に言われていることだが、住むならイギリス式の住宅、料理人を雇うなら中国人、妻を娶るなら日本女性、給料を受け取るならアメリカ系企業への就労。)

 記事は続く、「日本は概ね厳重な男性中心主義が強く、妻は夫の言う事に従う。なぜ、妻は夫のことに文句を言わないのか。そこには、日本女性が世界的にも最もな賢さをもっているからだ。」として、日本女性の特徴について九つのことを述べている。以下のように。

 ①日本女性は本をよく読み、教養がある。一方、中国女性はあまり本を読まず、教養に劣る。②日本女性は金銭的に豊かでない男性でも受け入れることができる。しかし、心の脆弱な男を受け入れはしない。一方、中国女性は心の脆弱な男を受け入れることはできるが、金銭的に豊かでない男性を受け入れることはできない。③日本女性の気質は温和・温柔であり、品徳をもっている。④日本の大部分の女性は保守的であり、夫の立場を尊重するように振る舞える。⑤日本女性は、性的なことがらでは、男性を喜ばせ満足させる気持ちをもっていて、性的な教育もされている。

 ⑥日本女性は結婚後、夫や子供に尽くす傾向が強い。⑦日本女性は、生活面では、手芸や料理、飾り付け(室内装飾)、子供に対する気遣い育児に頑張る傾向が一般にある。つまり、生活を楽しくしようと心掛ける。⑧中国女性は「孝順」という面では弱いが、日本女性は「孝順」が強い。中国女性は育児も料理もすぐに自分の母親に頼るが、日本女性はすぐには頼らず自分で頑張る傾向がある。⑨日本女性は外国人との国際結婚は一般的に好まないが、中国人女性はこのことのこだわりはない。金銭的に男性が豊かならば、むしろ光栄と考える傾向がある。

 このような日本女性の特徴は「日本の伝統的観念、日本の男権主義」の産物であるが、近年においては、変わりつつもある。しかし、中国人男性にとっては、日本女性が少し変わりつつあっても、やはり、憧れの対象である。

 この記事は、以上のような内容だった。

 中国のインターネットサイトは、ものすごく数が多い。日中の政治的関係が「緊張・対立から暖和・共存」にと変化し始めた2016年あたりから日本に関する記事も増えていったが、このような「日本女性に対するステレオタイプ的なイメージ」は根強く中国人男性に残っている。私が大学で教えてきた若い年齢層の男子学生たちの中にも、日本女性に対する憧れみたいなものはけっこうあるようだ。

 まあ、この日本女性の九つの特徴などは、日本の1960年代・70年代・80年代の年頃の結婚までは かなりあてはまるようにも思えるが、1990年代より大きく変化してきている。しかし、現代の中国人女性の特徴と比べると、現在でも その傾向は基本的にはあるかとは思うが。

 1990年代、そして、2000年代の20年間で、中国の男性たちの間で最も有名な日本人女性の一人だったのが「蒼井そら(あおいそら)」さんだった。いわゆるアダルト女優だが、当時 DVD海賊版が広く中国国内で流布し、35歳代から50歳代の中国人男性の間に圧倒的な人気がある女性だ。今は結婚して、子供が誕生しているようだが。一昨年に蒼井さんが上海を訪問し、イベントに参加した際には大勢のファンが詰めかけていた。今年の春節時期2月に観光で来日した「中国人男性―300万円で蒼井そらとの一晩をセッティングしろ」という見出し記事が日本のインターネットで報道されていた。

 

 

 


人生賭け約1030万人が「高考」に挑む❸―宿泊ホテル・魔のエレベーターの不運―死ねば存分に眠れる

2019-06-17 10:09:58 | 滞在記

 ◆前号のブログで、「"高考"の総合得点の満点は780点である。」と記しましたが、「満点は750点」の間違いでした。訂正いたします。また、「科挙」の廃止は1910年ではなく1905年の間違いでした。ちなみに、「高考」の得点歴代1位は2004年に記録された749点。得点者は王端鵬という人で、清華大学に進学した。現在は「中国科学院」の研究員で、高分子化学を研究している。年収は30万元(約500万円)で、かなりの高給取り。(※日本では年収2000万円に相当)

 ◆"現代の科挙"「高考」―中国では随王朝の587年から清王朝の1905年まで1300年間にわたって「科挙」と呼ばれる官僚登用試験が3年に1度行われた。北京で行われた最終試験に合格できるのは30人ほど。倍率は3000倍くらいだったと記録に残っている。翻って今。「現代の科挙」は、世界最難関の大学入試とも呼ばれる「高考」。日本の大学入試センターの試験出願数が今年、約58万人だったのに対し、今年の「高考」は約1030万人。中国の人口が日本の約11倍である点を考慮しても、日本の18倍の受験者数は凄ましい数になる。

 入学難易度を「全国の受験者数÷当該大学の新入生数」で単純計算すると、東京大学はだいたい220人に1人だが、北京大学は6000人に1人。狭き門どころではない。しかも高考は一発勝負ゆえ、「滑り止めを数校受ける」といった選択肢はないのだ。

◆中国の子供は小学校に入学したその日から否応なく、11年後の高考に向けた勉強の日々が始まる。小1から容赦のない宿題漬けで、高考の必修重点科目である国語・数学・英語偏重の詰め込み教育が続く。

◆学校や塾、受験関連サイトでは―

「不要学不死、就往死里学(勉強のしすぎで死ぬことはない、死ぬほど勉強せよ)」「生時何必久睡、死後自会長眠(寝るヒマなどまったく不要だ、誰もが死後は存分に眠れるのだから)」

「累死你一個、幸福你一家(君一人が死ぬほど努力すれば、君の一家全員が幸せになれる)」「提高一分、幹棹千人(点数を1点多く獲得するたびに、ライバル1000人を打ち負かせられるのだ)」

 ‥‥といった とても過激なスローガンが、受験生たちを鼓舞している。こんな社会でもあるので、家庭での「手伝い」「仕事」などを子供にも分担させるようなことはとても少ないのが中国の現在の風潮といえるかもしれない。私も驚いたことだが、「中国の大学生は、女子大学生もだが、今までに料理を作った経験がほとんどない」という学生が圧倒的に多いのには驚かされた。大学に入学しても、「寮では料理用火気厳禁」なので料理はできないし、食堂や大学近くの屋台や店で、食事をする生活だ。

 今年の「高考」に関しての出来事が この1週間さまざま中国国内では報道されていた。例えば、次のような出来事も。

 山東省の済寧市の男子受験生が6人が運悪くエレベーターに閉じ込められ、試験に間に合わなかった悲劇が報じられていた。それによると、不運の6人は、試験会場から800mほど離れたチェーン系ホテルに宿泊していた。試験2日目の6月8日、午前中の試験科目を終えて、昼休みをとるためにホテルに戻った。午後3時から始まる英語の試験に臨むため、午後2時15分にホテルの部屋を出た。だが不運にも、エレベーターが急に故障し、カンズメにされてしまう。

 エレベーター内の緊急用ボタンを押しホテルに救援を要請。ホテル側は「修理工を呼びますから待っていてください」と返答。2時20分ころ「高考に間に合わない!助けてくれ!」と自撮りした動画を母校のNSNグループに投稿、それを見た担任教師は驚愕し警察とともにホテルに向かった。2時27分、閉じ込められた受験生の一人が公安警察に救援を要請。13分後の2時40分に警察と消防応急大隊(レスキュー隊)到着。2時45分に救出。バトカーに分乗した6人は、2時50分前に試験会場の門に到着した。

 しかし、試験開始15分前までの2時45分までに入場しなければならない規定があるため、彼らは結局、試験は受けられなかった。翌日、6人は家族と共に、当地の教育局に出向き、再試験を要請するが、「いかなる特例も認められず‥‥」と対応した役人は申し訳なさそうに繰り返すばかりだった。憤懣やるかたない6人と家族は、レスキュー隊を早急に呼ばなかったホテル側に対して、慰謝料と1年間の浪人期間中の補償として、一人20万元(約350万円)を要求。これに対してホテル側は1人2万元(約35万円を提示。話し合いは続いているようだ。

 ホテル側の対応や地元教育局の対応などに、インターネットでは批判の意見が出始めていた。

 


人生賭け約1030万人が「高考」に挑む❷すべての道は高考に通じる―農民工の母と娘の「高考」物語

2019-06-13 04:49:22 | 滞在記

 6月7日(金)、中国の大学入学試験「高考」の第一日目が始まった日の夕方、日本のテレビ報道番組でも「高考」に関するニュースが報道されていた。

 「人生賭け1030万人が挑む"超学歴社会"中国で大学入試」「"超学歴社会"中国、街は"高考"一色」「全国統一の大学入試、2日間の日程で行われる」「中国全土で1030万人が受験」「受験者のうちの70%が大学に進学できる」のテレップが流れる。

 「親も赤い服でゲン担(かつ)ぎ」「1回の試験で入学できる大学が決まる=一発勝負」「会場周辺―バスやクラクションや工事現場の騒音が出る作業が禁止される」「人民大学付属高校の後輩たち―赤いユニホームを着て受験生頑張れ!」「"高考"=人生を決める試験」のテレップ。インタビューを受けた受験生は、「両親がずっとそばにいて励ましてくれたので感謝しています」や「緊張しています。12年間勉強してきたから頑張ります」と答えていた。

 「高考」が始まる2日前の6月5日(水曜日)の夕方、中国全土の高校では、1・2年生や教職員、保護者などが参加しての壮行会が行われていたことが、翌日6日の中国のニュース報道でされていた。中国では今も「科挙(かきょ)」の伝統が生き続ける国だ。「高考」で高得点をとり、北京大学や清華大学や復旦大学、上海交通大学などの大学への入学が決まれば、地方の方の学生であれば、地元の新聞やテレビ局で親子ともども報道されることも珍しくない。(このような人のことを「状元」と呼ぶ。「状元」とは科挙合格した人のことである。) また、中学や高校では、成績の優秀な生徒は、定期的に正門前に顔写真入りで数名が掲示される。この傾向は、地方の町ほど顕著になる。

 中国の現在の小中高の学校教育を一言で表せは、「すべての道は"高考"に通じる」である。「文武両道」とか「知徳体」とかが日本の教育では重視されるが、中国ではそうではない。「武がなくて"文"だけ」「徳・体がなくて"知"だけ」となっている。このため、体育や芸術系(図工など)などの授業数は極端に少なく、もちろん家庭科目・技術科目はない。中学・高校でのクラブ活動もない。小学校の教育から、「いかに高い点数をとるか」がほぼ重視される。小学校での宿題の量の多さも半端ではない。スポーツや芸術は、やりたければ個人がそのような教室に通うこととなる。オリンピックなどに出る選手の育成は、10才くらいから育成するそのような学校が全国各地にたくさんあるが、芽が出なかったらそれまでである。この世界も激烈な競争の世界である。いずれにしても、日本のテレビ局が「人生賭けて」と表現するのはけっして大げさな話ではない。

 中国の「科挙」試験制度は、「隋王朝(589年—618年)」の時代から始まり、そして「清王朝」が滅亡する2年前の1910年まで脈々と続いた国家的試験である。地区試験(郷試)や地方試験(現在のほぼ省単位)、そして 地方試験に合格した者のみが参加できる最終的な首都での試験の三段階の試験があった。郷試に合格するだけでもたいしたことで、その地区の役人になることができた。

「科挙」の伝統の影響が強く、中国では伝統的に「文武両道」ではなく、「文高武低」の価値観があり、国家精神的には「文」に価値が置かれてきた世界である。「科挙」の試験を受験する者は、役人や地主や分限者のように立派な屋敷を構えている家の息子だった。そして、今は、家庭に少しの余裕があれば、誰でもが大学受験をできる世の中になっている。大学進学率は40%近くにまでなっているが、今年のように1030万人の受験生全員がどこかの大学に入学できるのなら、大学進学率(短大を含む)は50%ちかくまでいくだろう。(※日本は現在52%くらい)

 そんな「高考」であるが、1年ほど前の2018年7月の中国のインターネットに「女孩高考701分、給母親报喜、電話忘挂断、那頭的対話让她楞住了」という見出しの印象的な記事が掲載されていた。「ある女生徒が高考で701点という高得点をとった。母親に大きな喜び・歓喜を与え、電話を受けてそのことを知った母親は歓喜で茫然としていた。」というような意味となる。記事の内容はおおまかには次のようなものだった。

 生徒の名前は張静怡という名前で、母一人子一人のどこにでもある母子家庭だが、彼女の場合は比較的いろいろ苦労が多かった。彼女が6才の時、父親が他の女とできてしまい、妻と子供のいる家を去ってしまった。母の張麗は、その後再婚せずに、我が子一人のために仕事に励んだ。暮らしが苦しいため、一日に3つの仕事をこなし、睡眠時間は毎日4時間くらいしかとらなかった。

 娘が中学にすすみ、学校の寮生活をするようになってから、もっと稼ぎのいい都会での農民工(出稼ぎ労働者)となって、母と娘が会えるのは年にわずかだった。母親は伝統的な女の人で、子供を読書が大好きな子に育てた。小さい時から賢く勉強が大好きな我が子に一片の人生の光明を見つけ、辛い仕事にもがんばった。そして、大学に進学させることを考え始めた。

 7月中旬に、張静怡に高考の成績通知が届いた。総合得点は701点。700点越えという超高得点であった。その結果を、電話で母親に伝えた。母は、歓喜で茫然としていた。母親のいままでの言葉につくせない苦労が報われた瞬間だった。娘は母の苦労に報いた。大きな大きな孝行である。

 ※記事はこのようなものだった。

◆「高考」の総合得点の満点は780点てある。701点という得点はとても高い得点であり、日本での偏差値でいえば、「90」くらいに相当する。東大や京大の医学部に合格できる点数である。中国の大学では、600点以上あれば100位以内のランキングレベルの大学はもちろん、50位以内の超有名大学にほぼ合格できる。701点という得点は、北京大学や清華大学にゆうに入学できる点数でもある。

 現代中国では、日本以上にどのレベルの大学に入学できたが重視される。大学レベルによって、給料も格差があるのが当然視される社会だ。(韓国もそうだが)  いわゆる「高考」の結果がその後の人生に大きく左右する。どんなに貧乏な家庭の育ちや家庭環境であっても「高考」によって人生に這い上がれるチャンスがある社会であることは、日本の比ではない。

 私が今暮らすアパートの部屋は、私が入居する以前は、「母と娘」が二人で1年間暮らしていた部屋だ。娘は高校3年で6月の「高考」に備える日々だったようだ。午後5時ころに正規の授業が終わった後も、だいたい午後6時ごろから夜の10時ころまで教室で補習(※有料)をほとんどの生徒は受けたり、自習したりしているのが中国の高校3年生の学校生活だ。だから、学校の近くに部屋を1年間だけ借りて母娘で生活。週末の土曜日の夕方には平日は父が一人で暮らす自分の家に母と共に帰りしばしの一家団欒、また、日曜日の夜にアパートに戻るという生活をしていたようだった。「高考」終了後の6月末まで入居していて契約を解除し自分の家に引っ越していった。そして、7月上旬からは私がこの部屋に入居した。

 私が教えている学生たちに「高校3年生」の思いでを聞くと、ほとんどの学生たちからは、「勉強勉強勉強勉強で頭がおかしくなりそうな、辛い、あまり思い出したくない1年間」というようなニアンスの答えが返って来る。ちなみに、中国の高校では「恋愛禁止」である。しかし、これは、なかなか禁止できるものではないのが実情だが。あまり、恋愛の態度が学校内で好ましくない場合、保護者は学校に呼ばれて指導される。まあ、これも、2015年ごろから中国の10代の世代の大きな意識変化で「規制」が難しくなっていて、教師たちを悩ませているとも伝えられる。教師評価は、生徒がどのレベルの大学や高校や中学に進学したかが重視されることが中国では当然視されている。

◆かって日本では、1970年代から80年代にかけて「受験地獄」という言葉が新聞やテレビでも使われたが、その言葉は、中国の「高考」のようすをみていると、中国にこそあてはまるような感じさえする。日本では「地獄」ではなく、「受験苦労」というくらいの表現の程度になるかと思う。中国のような「一発入試」ではない。中国の受験生たちのプレッシャーはすごいものがあるが、12年間で勉強へのエネルギーを使い果たしてしまうからか、別の要素もあるのか、大学に入学するとあまり「積極的」な学びというものをしなくなるのも中国の学生の特徴でもある。「別の要素」というのは、「自ら考え自ら学ぶ」ということが、中国の高校生や大学生には育っていない。

 自主的な学びというものを小中高校、及び大学でほとんど経験しないのが中国の学生たちである。(※大学での講義受講は、必修科目の受講が圧倒的に多く、選択科目の受講というのは極端に少なく、20%以下かと思う。日本のように選択科目受講の制度が重視されず、極めて貧弱。) だから卒業論文などのテーマを学生たちが考える場合でも、受け身の勉強ばかりしていた学生たちなので、なかなか苦労するが、大学の教員が学生のテーマを指定する(※「あなたは このテーマで卒業論文を書きなさい」と)ことも普通に行われているのが中国だ。

 私は、3回生の「日本概況」の授業の中で、「日本の教育制度」についても教えるが、日中の教育を比較しながら説明している。学生たちの反応・感想は、「中国の教育問題はこのままではだめだ」というものが多い。卒業論文で「日中教育制度比較と中国の教育の問題」をテーマにする学生もいるし、日本の大学院に留学して、日中教育制度比較を研究している教え子もいる。今後、中国の学校教育はどのように変遷していくのだろうか。改革されていくのだろうか。現状の「すべてが上位下達の社会・国家体制下」では、かなり難しい問題のようだ。

 

 

 

 


人生懸け約1030万人が挑む"超学歴社会"中国で大学入試「高考」❶約700万人が大学に入学できる

2019-06-11 13:35:17 | 滞在記

 今年も6月7日(金)・8日(土)の2日間にわたって「2019年普通高等学校招生全国統一考試」(通称「高考[ガオカオ])が行われた。私の住むアパートから歩いて15分ほどのところに福建師範大学付属高中(※高校)がある。大阪府ほどの面積があり人口は700万人を擁する福州市の中の「倉山区」の高考の試験会場と毎年なっている。ちなみに中国では、小学校は「小学」、中学校は「初中」、高校は「高中」、そして大学は「高等学校」又は「大学」と表記される。大学の学長は「校長」と呼ばれる。

 午前7時半ころに試験会場の福建師範大学付属高中の正門前に行った。ぼちぼち受験生と父母たちが集まっていた。歩道には「高考加油站(高考頑張れ!所」と書かれた長机が置かれ、上にはペットボトルの水やサンドイッチなどが置かれている。受験生用のさしいれで、自由に取得できる。設置しているのは大手学習塾チェーン店などだ。開門15分前の7時45分頃には大勢の受験生や父母たちが集まってきた。 

 友達と談笑する受験生、最後の受験勉強の確認をするためノートや参考書などをチェックしている受験生たち。付き添ってきた親と話している受験生も多い。

 警察の装甲自動車の横で警備にあたる武装警官が直立不動で待機している。午前8時に門ゲートが開き受験生たちが構内に入って行く。入場の際、ゲートで「身分証明書と顔写真が貼られた受験票」を提示している。

 少し緊張のおももちで入場していく受験生たち。地元テレビ局や新聞社の記者などが中継をしている。祖父母の姿も少しは見えるが、受験生につきそってきているのは、ほとんどが父母だ。

 縁起を担いで赤い服装で付き添いに来ている父母の姿も目立つ。試験会場に入って行った我が子の後ろ姿を、祈るような表情で見送る父や母。見送った後に、目頭(めがしら)をあつくしている人の姿も。「北京大学」とプリントされたTシャツを着て母親に抱かれている小さな男の子。ゲートの前で、受験票を忘れたらしい男子受験生が警備員とともに立っていた。20分ほどが過ぎた8時20分ころに、電動バイクに乗った父親が急ぎ「受験票」を持って来たので、それを受け取り会場に入って行った。

 午前8時半に入場ゲートが閉められた。それからもずっと門の前で見守り続ける父母たち。8時40分頃に、遅刻した受験生が一人やっていて入場を認められた。受験生たちは控え教室に、「ペン・鉛筆・消しゴム」以外のものは全てこの教室に置いて、試験教室に8時50分ころにそれぞれが向かっていった。午前9時、第一日目の試験が始まった。

 午前8時30分すぎに、「電波・電信傍受機器」を屋根につけた特別車が入って行った。いわゆる傍聴などもできる機能をもつ車両だ。試験での電波・電信を使ったさまざまな機器も販売されていて、試験でのカンニングが絶えないのは中国や韓国では周知のことだ。試験会場周辺の道路は、試験時間中の騒音厳禁で、音のしない電動バイクと公共バス以外の自動車の通行は禁止される。

 1840年~42年のイギリスとの阿片戦争の敗戦により、広州・厦門(アモイ)・福州・寧波・上海の5港が外国に開港された。ここ試験会場がある倉山区には外国の商館や住宅や銀行、領事館だったレンガの建物が多く残る。「光明港河川公園」に端午節の龍船を見に行くために、試験会場近くのバス停に行く。バス停の前に「輸林琴行」という名の「古箏工作所(教室)」の建物があり、箏の音が聞こえてくるので中を覗くと古箏のレッスンが行われていた。

 今年の高考受験者は1030万人と報道されていた。昨年度より100万人ちかい増加となる。試験結果により、このうち700万人ほどの受験生が、2800ほどある様々なレベルの大学に入学できることとなる。試験結果は6月下旬に受験生に知らされる。受験生たちは自分の試験結果(総合得点)をもとに、昨年までの大学合格点数レベルを精査しながら、5つの志望大学先(学部・学科)を申請する。

 国家及び各省教育庁が受験生たちの入学先を決定し受験生に通知する。ちなみに、大学レベルの高い大学に入学が決定した受験生ほど、7月中旬頃という早い時期に通知が来る。7月下旬までには、全員に通知が来るようだ。点数が足りず、大学に入学できなかった300万人あまりは、専門学校などの進路をとるものがほとんどだ。浪人は認められているので、翌年、「高考」に再びチャレンジすることは可能だ。

 一昨日の9日(日)、携帯電話で報道記事をみていたら、「福州の高考生 考査終了後に 川に飛び込み自殺、試験のできを苦に自殺か」と動画報道がされていた。最近、福州も大雨が続き川は増水している。