彦四郎の中国生活

中国滞在記

内館牧子「老後小説三部作」、痛快な"小説"がドラマや映画に—『終わった人』・『今度生まれたら』・『すぐ死ぬんだから』

2022-07-31 09:41:20 | 滞在記

 内館牧子の「老後小説三部作」である、『終わった人』・『すぐ死ぬんだから』・『今度生まれたら』が、映画化されたりNHKBSプレミアムでドラマ化され、多くの反響を呼んでいる。人生100年時代とも言われ始めて数年が経過する日本社会。2021年の日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳と、世界で最も平均寿命が高い国として知られている。(世界の2021年平均寿命は、男性70歳・女性75歳。男女平均73歳。)

 『終わった人』は、63歳で定年を迎え、40年間にわたったサラリーマン人生を終えた定年後の人生を終えた男性の話。2015年に発刊され、2018年に文庫本化された。2015年に発刊されたものを読んだ。なにか、主人公に共感しながらも、身につまされるような話だった。まさに、「亭主元気で留守がいい」を彷彿させる話でもあった。そして、読んでいて面白かった。60代を生きる男性の話。

 『すぐ死ぬんだから』は、78歳の女性の話。2018年に発刊され、2021年に文庫本化された。この本を私はつい最近に読み終えた。「痛快、面白い、共感もできる」、そんな小説だった。老いと向き合うが、美しさを少しでも保ちたいという切なる願いが共感できる。

 そして、『今度生まれたら』は、70歳となった女性の話。2020年に発刊され、文庫本化はまだされてはいない。

 この「老後小説三部作」を書いた内館牧子さんは、1948年生まれの現在73歳。これまでに結婚したことがあるのかどうかは分からないが、おそらく結婚したことはないだろうとみられている。結婚したことがないとすれば、この「老後小説三部作」で描かれている夫と妻の日常生活の描写は、どこから文章が生まれてきたのだろうと、驚嘆もする‥。絶妙な描写なのだ。

 『今度生まれたら』のドラマ放映が、2022年5月8日から始まったので、毎回熱心に視聴した。主人公の70歳の女性を松坂慶子が演じていた。夫役は風間杜夫。全7話は6月19日に最終話となった。

 主人公の姉(役・藤田弓子)の夫(役・平田満)が他の女性(役・ジュディ・オング)を好きになり、妻のもとを去っていく場面もあった。高齢者女性の心の揺れが、これでもかというくらいに描かれていた。しかも、痛快で視聴していて面白いのである。主人公役の松坂慶子や風間杜夫もまた適役だ。自分の元を去っていく、藤田弓子の哀愁の表情、平田満のまじめそうな人柄と、妻への申し訳なさそうな表情などなど‥。

 最終話、主人公がふとつぶやく、「なにかを成し遂げることもなく、平々凡々と、でもそれなりの苦労や喜びもあった、普通の人生もまた、それはそれなりによいのかも‥」の台詞が心に何か残った。私も最近、つとにそう思え日々が多くもなってきているからだ。「不完全燃焼は心に重くありながらも、平凡がいいのかも‥」と。

 『終わった人』は、2018年に映画化され上映されたようだが、私はまだその映画は見ていない。舘ひろしが主人公だ。

 定年後の第二の人生に入り、「夢なし、仕事なし、趣味なし、家(居所)なし」に直面する主人公。妻はまだ生き生きと働いている。上映初日、妻役の黒木瞳さんや広末涼子さんとともに挨拶にたった舘ひろしは、「終わらない人になるための秘訣は何でしょうか?」の質問に、「女性好きを続けることかな‥」と一言。まあ「正鵠を射る」の一言にも思える。

 『すぐ死ぬんだから』は2018年にNHKBSプレミアムでテレビドラマ化されていたようだ。主演は三田佳子さん。ドラマの主人公の年齢と同じく、2020年には三田佳子さんも78歳だつた。このドラマでの三田さんは適役だったようだ。夫役は小野武彦さん。今年8月には、舞台でこの『すぐ死ぬんだから』が上演される。主人公役は泉ピンコさん、夫役は村田雅浩さん。

 この私も、3週間後の8月22日、世界男性平均寿命の70歳(古希)となる。もう、このあたりでいいか‥という感もするが、あと5〜6年は生きてみるかとも‥。混沌とした時代に入った世界の行く末がとても気がかりなのだ。2027年、世界はどうなっているだろうか。孫の寛太は、2027年には7歳になっている。

 

 

 


キエフバレエ団、ロシア侵略開始後、初の本格海外公演—7月24日、姉妹都市京都でも公演された

2022-07-28 08:40:28 | 滞在記

 ロシアの軍事侵略が続くウクライナ。「ウクライナ国立バレエ団(キエフ・バレエ団)」の初の本格海外公演が、日本で7月15日より始まった。ロシアの侵攻後、まとまとった人数での海外公演は日本が最初になるという。日本での公演は7月15日より始まり、8月9日まで、全国各地16の都市で公演が続いている。

 キエフ・バレエ団は、19世紀に創設され、150年余りの歴史をもつバレエの名門。旧ソビエト連邦時代には、ソ連三大名門バレエ団(他に、モスクワを拠点としたボリショイバレエ団、サンクトペテルブルクを拠点としたレニングラードバレエ団)の一つだった。1980年代に入り、日本でもこのソ連三大バレエ団の公演が行われ始めた。

 キエフ・バレエ団は現在、120人余りの団員を擁しているが、戦禍を逃れ90人余りが海外に避難している。また、この軍事侵攻による戦禍で亡くなった団関係者もいるようだ。7月上旬から、避難先の国々などから次々と日本に到着し始めた団員は30名余り。公演本番に向け急ピッチに準備やリハーサルがすすめられ、7月15日の初演(群馬県前橋市)が行われた。

 15日の初演後の午後9時、NHK「ニュースウォッチ9」で、このキエフバレエ日本公演初日のことが報道された。この公演に至るまでの、プリンシパル(団の花形)であるアンナ・ムロムッエワさんの、ここに至るまでの葛藤と悩み、そして喜び。この日本での公演を行うことになった主催団体・光藍社社長の山本真彦さんの話。

 日本の空港に到着する団員達の表情。この公演に参加せず、ウクライナに残り、ボランティア部隊として戦禍の町に入って活動しているポチョムキンさん(男性トップダンサー)は、「日本に行く仲間たちは、国立バレエ団だけでなく、ウクライナの国全体の代表として誇りをもって踊ってきてほしい」と語る。そして、公演初日のさまざまな舞台の場面が映し出された。「戦禍のバレエ団、舞台に立つ意味探る日々—仲間の分まで踊りたい—ウクライナ国立バレエ(キエフバレエ)が軍事侵攻後初めて来日 、戦地に残ったダンサーも」と題された、NHK「ニュースウォッチ9」だった。

 6月26日付「京都民報」には、「日本のファンのために―侵略開始以後 初の本格公演/キエフバレエ・ガラ2022、7/24ロームシアター京都メインホール」の見出し記事掲載。1971年にキエフ市(キーウ市)との間で締結された姉妹都市である京都市での公演はぜひ見ておきたかった。特に、私の娘と5歳になる孫娘(京都市内の寺田バレエスクールでバレエを習っている)、そして私の妻に見せたかった。[3歳以下(3歳児含む)は入場できないので、三歳児の次女の孫娘は入場できない。]

   7月24日、午後2時開演。開演前の午後12時半ころ、会場のロームシアター京都前に車を一時停車し、会場の建物を撮影する。そして、会場から車で7〜8分の娘の家に向かった。妻と私は、二人の孫(1歳児と3歳児)の世話を娘の家でして、娘と5歳児の孫娘は自転車で会場に出かけていった。(妻にも見せたかったのだが‥。私の方は、2004年に、ロシアのサンクトペテルブルグのマリンスキー劇場で、マリンスキーバレエ[レニングラードバレエ]を見ているので、今回は、孫の世話をすることにした。)

 夕方5時すぎにキエフバレエ公演を見終えた娘と孫が帰ってきた。1冊1000円の公演パンフレットを買ってきてくれた。この公演の舞台監督兼バレリーナの世界的ダンサーのエレーナ・フィリピェワ(キエフバレエ団舞台監督)、キエフバレエ団副舞台監督の寺田宣弘さん(寺田バレエ主宰者の息子さん)が、パンフレット表紙の次のページに掲載されていた。ロシア軍侵攻後初となるこの日本公演は、キエフバレエ団の団員たちの熱い想いと、光藍社の山本さん、そして、この寺田さんの尽力によって実現したものだった。

   娘は公演の感想に、「すごく感動した。やっぱ、寺田バレエスクールの発表会(アマチュア)とは、全然違うわ。すごいわ。つま先立ちも、震えていないし‥。」と言っていた。

 公演最初の演目は、ウクライナの民族舞踊をバレエに取り入れ、ウクライナの民族衣装で踊る「コパック」。この公演のためにつくられた演目「ひまわり」、エレーナ・フィリピェワ演じる「瀕死の白鳥」などなど、9つの演目が演じられていた。私は、特に、「瀕死の白鳥」が見たかった。たった4分ほどの、一人で演じる演目だが、バレエというものの粋(すい)が詰まっている演目だ。手の動き、足の動き、体全体の動きなど、これぞバレエという感がする。

 この日の夜、MBS(毎日放送)で、この京都公演のようすが報道されていた。満席の会場。

 公演後、会場出口でインタビューに応じていた母と二人の娘。母親は「いろいろな気持ちがこみあげてきて、最後、泣いてしまいました」と、娘は「見ていて、自分も踊りたくなった」と。この娘たちもバレエを習っているのだろう。ちなみに、ここ京都市内には20以上のバレエスクール(教室)があるようだ。

 この公演、8月からは東北地方や北海道での公演となり、最終日は8月9日に北海道の釧路市公演となる。

 頑張れ、ウクライナ。この世のために、支援・応援し続けようとも思う‥。負けるなウクライナ‥。

 

 

 

 

 


ロシア・ウクライナ侵略戦争の行方➋「武器が必要。戦争に勝つしか平和はつくれない‥」、中学生語る

2022-07-27 11:56:30 | 滞在記

 欧州・米国・東欧諸国の軍事同盟「NATO」の拡大によるロシアへの脅威から祖国を防衛するためを、ウクライナ全土への侵攻の第一の理由にあげていたロシア・プーチン大統領だったが‥。そのプーチンの侵略行動は、かえってNATOの拡大を招き、そして世界を分断していった。

 彼のウクライナ軍事侵略の本当の、最も大きな理由は、「自己権力の永続化」と「ロシアの民主化への恐れ」だ。そして、「歪んだ歴史観と野望による領土拡大と世界の分断」ということに尽きる。そしてそのロシアに同調支援したり、経済的実利により吸い込まれる多くの「様子見」の国々による実質的な支援構造。それに対抗する欧米日豪カなどを核とした民主主義諸国との戦いの様相をきたしている。5カ月間を経た戦争の行方は、いつまで続くのか、いまのところわからない。今年中に一応の停戦を迎えるのか、1年以上続くのか‥。

 6月30日付朝日新聞には、「北欧2カ国NATO加盟へ―トルコ一転容認、対テロ協力が条件」「(NATO)戦略改定 対ロ・対中国」「NATO拡大(方針)続ける」、7月1日付同紙には「NATO、アジアとの連携—米大統領"中国が国際秩序に挑戦/NATO首脳会議閉幕」、「要衝の島(スネーク島)、ウクライナ奪還—穀物輸出の再開焦点」などの見出し記事。7月1日付読売新聞には、「ウクライナ兵器欧米化―長期支援を確認」「対中国、戦略の柱—露は敵、新たな鉄のカーテン」などの見出し記事。

 7月上旬のABC(朝日)放送の報道番組「大下容子ワイドスクランブル」。7月4日・5日にスイスで開催された「ウクライナ復興会議」のようすを伝えていた。この会議には日米欧など40ヵ国余りとEU諸国、NATO諸国、ウクライナなどが参加。開幕式では、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインを通じて、「ウクライナの再建は1国のプログラムではなく、民主国家世界全体の共通の課題」であると訴えた。

 現時点での復興に要する費用は7500億ドル(100兆円)以上の巨額となると報告された。この会議に出席したウクライナのシュミハリ首相は、「この費用は、主に、ロシアのオリガリヒ(新興財閥)から欧米諸国が没収している(凍結している)資産などをあてるべき」などと述べていた。戦争終結又は停戦となれば、当然に、この復興にも使われる巨額の賠償金額の全額は、ロシア国家が支払うべきものではあるが‥。

 同報道番組では、「窮地 ウクライナ兵"苦渋の撤退"―東部の拠点をロシア制圧」との報道も。長期戦となり、ウクライナ軍の兵士及び義勇兵の間にも、先行きの見えにくい戦況に、極度の不安と疲れが蓄積されていて、戦線離脱を望む人も出始めてもいるようだ。

 7月5日付朝日新聞、「平和を取り戻せるのは今—ゼレンスキー氏、日本の学生に講演・東洋大学」の見出し記事。7月4日、東京にある東洋大学講堂で、学生たちに対してゼレンスキー大統領がオンライン講演を行い、学生たちの質問に答えたことが、大下容子ワイドスクランブルでも報道されていた。同大学にはウクライナからの留学生を、この戦争が始まってから12名を受け入れてもいる。 

 7月5日付朝日新聞、「ロシア・ルハンスク州制圧、ドンバス支配へ攻勢」「消耗戦の末、東部1州制圧—ロシア・予想以上に時間・戦力消費」、「愛国心と命のはざま—ウクライナ軍の前線、武器足りず劣勢、"疲れた"と戦線離脱望む声も」などの見出し記事。

 7月下旬、ウクライナ侵略戦争が始まって5カ月間が経過した。ウクライナ東部のドンバス地方(ルハンシク州・ドネツク州)で、ロシア軍はこの5月・6月の2カ月間余り、軍を集結させて攻勢をかけてきた。そして、7月上旬にルハンシク州全域を制圧、さらにドネツク州全域の制圧に向けて軍事行動を行っている。一方のウクライナ軍は、ウクライナ南部ヘルソン州でのロシア軍制圧地域への反転攻勢を行ってきている。欧米からの新たな支援武器(高機動ロケット砲システム「ハイマース」[射程80km]など)が一部ではあるが、ようやく戦線に届き始めてもいるようだ。

 6月29日、プーチン大統領は、「現在の目標は?」との質問に、「ドンバスを解放し、その国民を保護し、ロシアの安全を保証する条件を整えること、それだけだ」と語る。また、7月4日には、「ルハンシク州制圧に勝利をおさめた部隊は休息し、戦闘能力を高めるべきだ」と語る。6月29日、米国ヘインズ国家情報長官は、「プーチンはまだ、ウクライナの大部分の占領を狙っている」との見方を示した。

 7月23日、ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、「軍はこの地域(ヘルソン州)で一歩一歩前進している」と述べ、反転攻勢に転じたことを示唆していた。ロシア軍は東部ドンバス地方での支配地域の拡大を目指しているが、進軍のペースは失速している。英国国防省は、7月25日付の報告で、「ロシア軍司令部が、ドンバス地方の作戦とヘルソン州での"防衛"のいずれに戦力を重点投入するかでジレンマに立たされている」と分析している。

 7月21日、英国の対外情報機関・秘密情報部(M16)のムーア長官は、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍について、「失速し、力を失う寸前にある」とする見解を明らかにした。長官は、「今後数週間、人的資源の供給がますます困難になるだろう」と述べ、ロシア軍が作戦行動を何らかの形で一時的に停止せざるを得なくなる可能性を指摘した。

 7月22日、ゼレンスキー大統領はインタビューに応じ、「ロシアがウクライナ領土を支配し続ける形での停戦はさらなる紛争拡大を招き、ロシアに次の作戦に向けて軍の立て直しを図る絶好の機会を与えることになると危機感を示したうえで、2月24日のロシア軍侵略戦争後の失地回復なしでの停戦には応じない」と語った。これは、プーチン大統領が、「ゼレンスキー氏が戦闘停止につながる外交的解決を望んでいない」と非難したことに対して、反論したものだ。

 また、このインタビューで、ゼレンスキー大統領は、武器や支援を提供する諸国に謝意を示しながら、「防空システムが早急に必要」だと訴えた。ロシアが前線から遠く離れたウクライナの都市に長距離ミサイルを打ち込むのを阻止するには、ミサイルを打ち落とす防空システムが不可欠との考えを示した。米国とドイツは供与を約束したものの、いまだにウクライナに届いていない。2月以降に国外に脱出したウクライナ人は600万人以上に上り、今もその大半は欧州にとどまっているが、この防空システムが備わらないと、不安のため、国内になかなか戻れないので、経済も機能できにくいとも語る。

 7月9日朝日新聞、「G20分断あらわに―外相会合閉幕/対ロシア 構成国の立場様々」の見出し記事。この記事によると、対ロシアの立場は次のようになる。①「3月7日の国連総会ロシア非難決議及び対ロシア経済制裁などに参加」(G7諸国[米国・カナダ・日本・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア]、オーストラリア、韓国、欧州連合[EU])。 ②[3月7日のロシア非難決議に賛成も、経済制裁などに参加せず」(ブラジル・トルコ・メキシコ・サウジアラビア・アルゼンチン・インドネシアの6カ国)。③3月7日のロシア非難決議には棄権、及び、経済制裁などに参加せず」(中国・南アフリカ・インドの3カ国)。 G20の20ヵ国中、①は10ヵ国・地域、②は6カ国、③は3カ国。ロシアを含めると②と③で10ヵ国。G20は、今年は11月15・16日にインドネシアで開催予定。

 先週、中国のインターネット記事を閲覧していたら、ゼレンスキー大統領が泣き顔で降伏文書に署名しているとするフェイク動画が見受けられた。このような動画を容認していることからも、中国政府のこのロシア・ウクライナ侵略戦争への対応の一端が見て取れる。(上記・2枚の写真)

 7月21日、久しぶりに立命館大学に行くこととなった。「大学院修了証明書が、来学期からの新規就労ビザ取得に必要」との連絡が閩江大学からあったからだ。立命館大学の独立研究科事務室前に、「ウクライナ戦争と経済制裁」と題された講座のチラシが置かれていた。6/13「制裁と外交・軍事戦略」、7/11「制裁の主体」、8/1「"民"の制裁」の3回シリーズの講座のようだ。

 大学からの帰り、三条川原町にある「六曜社珈琲店」に入り、店内に置かれた京都新聞を読んでいると、「侵攻と平和—中学生の対話/ウクライナ"武器が必要。戦争に勝つしかない"、広島"過去変わらぬ。未来は変えられる"」の見出し記事。7月9日、日本の広島市の中学生40人と、ウクライナの中学生4人との、オンラインでの交流会が行われたとの記事。ロシアのウクライナ侵攻についての思いを、日本の中学生たちに伝えていた。記事は以下のように伝えていた。

 ‥‥。日本の中学生の「平和な世界になるためには何が必要だと思いますか」との質問に、ウクライナの中学生たちは、「武器が必要です。武器がないと平和をつくることはできません。武器があれば戦争で勝つことができます。戦争に勝ったら平和になると思います」と語っていた。この言葉に広島の中学生たちは、ショックを受けた。自分たちと同じ中学生が、武器を持つべきだとはっきり言うなんて。「戦争に勝つしか、平和への道はない」。そう考えざるをえなくなった彼らの気持ちを想像した‥。‥。

 「戦争に勝つしか、平和への道はない。」この思い、この言葉。真実だ。プーチンのロシアに勝つしか、平和への道はないのだろう‥。

■ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって2カ月後の4月下旬頃から、ウクライナ人学生の受け入れが、日本の大学や日本語学校で少しずつ増え始めた。5月中旬時点では、27の国公立・私立の大学が受け入れを表明、28の日本語学校も受け入れを表明していた。大学・日本語学校共に、学費免除、住居提供、そして月々の生活費として8万円前後を支給するという。(上記写真は東洋大学でのウクライナ人理由学生の日本語授業)

 京都市にある大学では、京都大学、立命館大学、同志社女子大学、龍谷大学、京都先端科学大学などが、ウクライナからの緊急留学生受け入れを行っている。また、京都市内の日本語学校「日本語センター」でも留学生を受け入れている。

 今日7月27日付朝日新聞、「民主派死刑執行を非難 ミャンマー国軍に日米欧」の見出し記事。同紙社説には、「ミャンマー 国軍の罪こそ直視せよ」の社説記事が掲載されていた。26日の政治犯4人の死刑を執行したことを受けての記事だ。この4人は、ミャンマー国軍によるクーデターに対する抗議活動で刑務所に収監されているうちの4人だが、アウンサンスーチー氏の側近もいる。

 朝日の社説には、「中国の王毅外相は今月、政変後初めてミャンマーを訪ね、経済関係の強化などで合意した。中国はかねて民主派にも一定の配慮をしてきたが、ここにきて軍政側に一歩近寄った。ミンアウンフライン国軍最高司令官は直後にロシアを訪れ、軍事協力や合同訓練について協議した‥」とも記されていた。

 この6月、アウンサン・スーチー氏(76)は、6月22日に、軟禁場所から刑務所に移送され独房に入れられた。ロシア軍によるウクライナ侵略は、世界を分断し、ここミャンマーの軍政政権も欧米日などの諸国の非難を気にしなくなり、中国・ロシアとのパイプをこの6月に再確認し、ミャンマー軍事政権は死刑執行に踏み切り、アウンサン・スーチーを独房に収監した。この6月19日(スーチーの誕生日)、東京の国連大学前で、在日ミャンマー人たちが集まり、アウンサン・スー・チーの無事を祈ったところだつた。

 

 

 

 

 


ロシア、ウクライナ侵略戦争の行方➊—世界が二極化し、中間層の国々の取り込みが活発化する

2022-07-26 05:49:49 | 滞在記

 今月の7月24日、ロシア・プーチン大統領によるウクライナ侵略全面戦争が始まって5カ月間が経過した。この5カ月の間に、ウクライナの人々の命はどれほど奪われたのだろうか。死傷者は、どれほどなのだろうか。一方、ロシア軍の死者も、侵攻4カ月目の6月下旬には約4万人とのウクライナ側の報告もある。

 3月2日、国連総会緊急特別会合が開かれ、「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案」が賛成多数で採択された。193ヵ国中、賛成は141カ国、反対は5カ国(ロシア・中国・北朝鮮・ベラルーシ・エリトリア)、棄権は35ケ国(中国・インド・イランなど)。賛成141、反対・棄権は合わせて40という結果。

 だが、1カ月後の4月7日に開催された国連緊急特別会合での、「ロシアの国連人権委員会理事国の資格停止を求める決議案(ウクライナの首都キエフ近郊のブチャなどで、多くの民間人虐殺遺体が見つかったことを受けて、アメリカなどが提案。)」では、決議案の採択はされたものの、賛成は93ヵ国、反対は24ヵ国(中国・ロシア・北朝鮮など)、そして棄権は58ヵ国(インド・ブラジル・メキシコなど)にものぼった。賛成93、反対・棄権は合わせて82という結果。つまり、反対・棄権が3月2日の時よりも2倍となった。

 この5月から6月下旬までにおけるロシア・ウクライナ侵略戦争の戦況、国際情勢をふり返ると次のような報道があった。5月13日付朝日新聞、「NATO拡大 ロシア誤算―"中立"フィンランド加盟支持急伸」「ロシア"NATO拡大"を自ら誘導」の見出し記事。17日付同紙、「フィンランド"歴史的な決断"NATO加盟申請」、「ロシア同盟国 6か国首脳会議―にじむ警戒」の見出し記事。

 5月16日に、ロシアのモスクワにおいて、旧ソ連6カ国でつくる軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」[ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・キルギスタン・タジギスタン・アルメニア]が開催されたが、ベラルーシ以外はロシアのウクライナ侵攻に同調はせず、共同声明の発表ができずに終わり、ロシアの中央アジア諸国への求心力低下が露呈しているとの報道内容。

 ドイツはロシアの脅威を受けて、軍事費を2倍化する方針を発表したが、ロシア・中国・北朝鮮の東アジアにおける脅威を受けて、日本でも、軍事費拡大の動きも出始めている。現在は国民総生産(GDP)の1%の軍事費だが、2%に増額していこうという動きだ。もし2%となれば、現在世界で第9位の軍事費は、アメリカ・中国に次いで、ドイツとともに3~4位となる。(現在※年間➡①米国:約8000億ドル、②中国:約3000億ドル、⑨日本:約540億ドル)  [5月29日付『赤旗日曜版』の記事より] 

  6月9日付朝日新聞には、「日本、3正面[中国・ロシア・北朝鮮]の脅威には外交で」の見出し記事。(編集委員・佐藤武嗣執筆)     東アジア情勢のさらなる緊迫化により、憲法改正や防衛費増額の議論が、現実として日本の政治課題として急浮上してきた。安全保障問題は、7月10日に予定されている参議院議員選挙での争点としても大きくなった。

 6月4日付朝日新聞、「100日 戦禍いつまで—誤算ロシア、東部に注力」の見出し記事。ロシア軍は、ウクライナ東部二州への制圧に軍を集中し始めた。ウクライナ侵攻問題などを継続的に報道し続けている、優れた報道番組でもある「報道1930」(BS-TBS)をふり返ると‥。

 6月上旬から中旬にかけて「報道1930」では、「戦争支持の底流にあるもの"愛国教育"と"スターリン再評価"」、「遅れる武器供与—欧米に"ゼレンスキー疲れ"か」、「ウクライナ侵攻と重なる"国恥地図"に覗く中国の領土への野望」などのの特集報道がなされていた。5月から6月・7月にかけて、ロシア軍のウクライナ東部掌握に向けた攻勢が集中的に展開されることとなった。

 この6月のロシアや中国側の外交面での大きな動きとして「BRICS SUMIT(ブリックス サミット)」がある。この「BRICS」とは、2000年代につくられた「新興国5か国」の経済的協力組織。2017年9月上旬にはこのサミットが中国福建省廈門(アモイ)で開催され、このため私が勤める閩江大学なども含め、福建省内にある約90余りの大学の新学期開始が、突然に1週間も遅らされることともなった。(B:ブラジル、R:ロシア、I:インド、C:中国、S:南アフリカ)

  6月24日〜26日、このBRICSサミット(首脳会議)がオンラインで開催された。この4カ国は、ロシアのウクライナ侵攻を容認している国々でもある。世界的にはこの5カ国で、①面積の約30%、②人口の約43%、③GDPの約24%を占める。BRICSサミットに先立つ5月19日、BRICS外相会談が開催され、9か国の外相(カザフスタン・エジプト・アルゼンチン・セネガル・インドネシア・タイ・ナイジェリア・アラブ首長国連邦・サウジアラビア)が招待された。中国・インドを中心としたBRICSだが、アルゼンチンやイランはBRICS加盟に意欲を示しているとの報道も。

 今回のBRICSサミットでは、「冷戦思考と集団対立を放棄し、一方的な制裁・制裁の濫用に反対する」「人類運命共同体の大きな家族によって、覇権主義の小さなサークルを超越する」との共同声明を出し、欧米日・NATO諸国を批判した。6月24日付読売新聞、「露BRICS重視表明—対欧米でプーチン氏」の見出し記事。

 6月16日、ドイツ・フランス・イタリアの首脳がウクライナを訪問。6月26日~28日に、G7サミットがドイツで開催され、「ウクライナ支援とロシアへの圧力強化」についての議論が行われた。このG7サミットには、6か国の首脳(インド・ウクライナ・アルゼンチン・セネガル・南アフリカ・インドネシア)が招待され参加した。また、6月29日~30日には、NATO首脳会議が30ヵ国の参加で開催され、日本は招待国として参加。「フィンランド・スウエーデンのNATO加盟が議論」された。

 このように、この5月から6月下旬にかけて、中国・ロシアを中心とする勢力と欧米日豪を中心とする勢力は、他の多くの国々を陣営内におくことを巡って、BRICS、G7、NATO、QUAD(クアッド日米豪印首脳会議/2022年は5月に東京で開催)などの会議などで、世界各国への働きかけ・綱引きを目まぐるしく展開した時期でもあった。現代の世界の政治もまた、改めて、実利(経済的関係)を中心として動いていることを実感させられることともなった。ロシアへの経済的制裁の限界というものも見せつけられる‥。世界がブロック経済的な、二極化の動きがより強まったこの5月・6月の2カ月間の展開‥。7月19日、ロシア・プーチン大統領はイランを訪問した。

■ロシアのウクライナ侵略戦争を巡って、「全体主義国家VS民主主義国家との戦い」との位置づけは、間違いだという論調がある。しかし、今回のウクライナ侵略を巡る世界の対立構造の中心にある国々は、この「全体主義国家VS民主主義国家」という面が強いことは、まぎれもない事実だ。そして、中間に位置する多くの国々を自陣営に引き入れるという綱引きが行われているという点では、単純に「全体主義国家VS民主主義国家」(中国・ロシア・イラン・北朝鮮などVS欧米・日韓・豪など)という構図だけでは語れない歴史の流れがあることも事実。

 ―戦争の行方?二つのシナリオ—6月23日、日本のインターネット報道「ウクライナ戦況、戦争の行方?二つのシナリオ」記事。「①ドンバス2州と南部をロシアが制圧、②開戦前までの地域に、ウクライナが押し返す」という二つのシナリオに関する記事。大雑把すぎる、あいまいな記事の印象が‥。

 6月24日付読売新聞には、「露とウクライナ消耗戦—侵攻4カ月 死者数万人」「穀物足止め 価格高騰」「侵攻 先見えず—3つのシナリオ」の見出し記事。この記事での「戦争の行方、3つのシナリオ」とは、「①露がドンバス制圧—占領地域の編入も」、②「ウクライナ反転攻勢—有利な状況で停戦協議」、③「決定打なく戦況停滞—数年にわたる長期戦」

 この記事から1か月間が経過した7月下旬の今、①②③が混在している戦況。

 6月25日(土)のABC(朝日)放送の報道番組「正義のミカタ」。「欧米のゼレンスキー疲れ」についても報道。筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は、「"ゼレンスキー疲れ"という言葉の使用には、プーチン大統領の策略が潜んでいる。この言葉をマスコミは安易に使用すべきではなく、むしろ"プーチン疲れ"と使うべきだ」とコメントしていた。プーチン大統領は、国内外からのゼレンスキー大統領離れを狙ってもいると‥。

 「ロシア・ウクライナ—侵攻から4カ月 滞る武器供与/プーチンが狙う"EUの分断"」「迅速な軍事支援が必要だ」「EU、ウクライナ結束をアピール」などについての報道内容も。

■この6月には、ロシアのウクライナ侵略を巡って、戦況の消耗戦、膠着状況から、不用意に「ゼレンスキー疲れ/ウクライナ疲れ」などの言葉が欧米日諸国でも使われたが、6月下旬のG7サミットやNATO諸国首脳会議などを開催し、ウクライナ支援の再確認の動きを見せる。

 

 

 

 

 

 


安倍元首相の国葬は国民世論を二分、憲法改正の議論は"必要だが、急ぐべからず"との世論かな

2022-07-23 09:49:34 | 滞在記

 2022年7月10日に行われた参議院議員選挙は、自民党や日本維新の会が議席を伸ばし、立憲民主党や日本共産党が議席を大きく減らすという結果となった。全国的には岸田政権の圧勝、立憲や日本共産党の完全敗北の感がある。私が暮らす京都選挙区(2人区)では、自民候補が先行し、立憲と維新の会の候補が2議席目を激しく争い、立憲の前幹事長・福山哲郎が僅差で当選した。日本共産党は、国政選挙の候補者としては、候補者がとてもさえなかったことや、維新の会の京都府内での影響力浸透もあり、13万票余りだけの得票となり、とても大きく得票を減少させた。(前回2019年の参議院選挙では、京都選挙区の日本共産党倉林候補は25万票余りを獲得し当選していたので、今回は約50%減の得票となり大敗北。)

 選挙後の11日~12日、NNN(日本テレビ系列)と読売新聞の共同世論調査が実施された。その世論調査結果について、日本テレビ(日テレ)が、「改憲議論が活発に行われることを期待、半数以上に」と題して、次のように報道していた。①Q:岸田内閣を支持するか➡支持する65%、支持しない24%、②Q:憲法改正に向け議論が活発に行われることを期待するか➡期待する58%、期待しない38%、③Q:今後、岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題とは➡「景気や雇用91%と最も高い」、「憲法改正37%と、10項目中最も低い」などとなっていた。

 今回の選挙結果を受けて、改憲に向けて必要な衆議院・参議院のそれぞれ3分の2以上の議員数(自民・公明・維新・国民)がそろったことともなった。(自民・維新・国民は改憲に積極的、公明は慎重だが‥) 共同通信も11日~12日に世論調査を行った。それによると、「憲法改正を急ぐべきだ37.5%、憲法改正を急ぐべきではない58.4%」と報道されていた。

 NHKは7月16日~18日に世論調査を行った。それによると、①Q:岸田内閣を支持するか➡支持する59%、支持しない21%、②Q:岸田政権が取り組むべき課題とは➡「1、経済対策38%、2、社会保障16%、3、外交・安全保障14%、4、新型コロナ対策9%、5、エネルギー・環境9%、6、憲法改正6%」、③安倍元首相の国葬実施の評価➡評価する49%、評価しない38%、わからない・無回答13%、④憲法改正を進める必要➡必要45%、必要ない13%、どちらともいえない33%、わからない・無回答9%などとなっていた。

■この3つの世論調査を見ると、①「憲法改正」については、「改正に向けた議論を行っていく必要がある」との世論が過半数を上回ってきていることがわかる。ただ、「憲法改正に向けた取り組みを急ぐべきではない」という世論も過半数を上回っている。つまり、「憲法改正議論は必要だが、急ぐべきではない」という世論が大きいかとも思われる。②「安倍元首相の国葬については、世論は大きく二分されている感がある。

 7月15日付朝日新聞には、「安倍元首相 秋に国葬—岸田首相表明/吉田元首相以来」、「異例国葬 党内に配慮—"法的根拠に留意""国論を分裂"/まだ功罪検証されず」の見出し記事が掲載。13日付夕刊フジには、「安倍元首相が死去前日に語った"日本愛"―"安部路線"国内外から求める声」「安倍氏が死去前日に語っていた"経済・安全保障・改憲"」の見出し記事が掲載。

 7月13日付の日刊ゲンダイには、「元首相銃撃事件動機—統一教会との接点—国民の関心は、安倍"負の遺産"の行方」の見出し記事。7月16日付日刊ゲンダイには、「安倍"広告塔"利用—統一教会勧誘手口—なぜ大手マスコミは自民党と統一教会の関係を報じないのか」、7月18日付日刊ゲンダイには、「自民党・統一教会—親密議員リスト—いよいよ国全体が狂ってきた/安倍国葬—一番の問題は気味悪さ」「統一教会関連議員112人リスト入手/自民議員は98人―閣僚もズラリ」などの見出し記事が掲載されていた。このリストには、自民党以外では国民民主党の前原誠司議員なども入っている。

■日本の夕刊紙を代表する「夕刊フジ」と「日刊ゲンダイ」の二紙。安倍元首相銃撃事や国葬などを巡る問題では、「夕刊フジ」は自民党政権擁護の傾向が強く現れているようだ。

 7月18日・19日・20日付の朝日新聞には、「元首相銃撃で今問われるもの」と題された次の3回シリーズ記事が連載された。①18日「暴力で意思表明 民主主義の敗北/不満・怒り、個人の問題とせずに」(宇野重規氏・東京大学教授)、②19日「"寄る辺なき個人"包み込む社会を―バラバラな人々に巣くう病理」(宮台真司氏・社会学者/東京都立大学教授)、③「カルト思想の脅威今も―2世が相談しやすい社会に」(江川紹子氏・ジャーナリスト)。江川紹子氏は、1995年から2000年代初頭にかけての、あのオウム真理教問題以来の久々の記事登場だ。特に、宮台氏の記事は、とても読み応えがある内容だった。

 7月19日付朝日新聞の広告には、7月28日号の「週刊文春」と「週刊新潮」、最新号の広告が。週刊新潮には、「カルト宗教と関係―国会議員112人リスト」の記事も掲載されている。また、「もっとこの世にいて欲しかった」と題された古市憲寿氏(社会学者・作家・慶応大学研究員)の文章も掲載されている。古市氏はテレビ報道番組などのコメンテーターとしても多く出演している人だが、安倍元首相や妻の昭恵夫人とも親しい間柄。7月18日付の日刊ゲンダイには、古市氏が「安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者は、"安部さんが統一教会と近い"という陰謀論を信じ込んだ犯行だった」とフジテレビの報道番組で述べていたと批判的に報じていたが、この古市氏の「陰謀論云々(うんぬん)」は、事実とは異なる間違った論評だ。安倍元首相と統一教会が近い関係というのは、公然たる事実なのだが、こんな論評レベルの社会学者だったのかと残念だが‥。 

 7月18日(月)のABC「羽鳥慎一モーニングショー」に、有田芳生氏(前参議院議員[立憲民主党])が出演していた。久々の報道番組への出演だ。「オウム真理教とともに、反社会的な教団・統一教会教団の活動規制に関する取り組みが、かって自民党議員らの政治的圧力によってつぶされた」と有田氏は述べていた。同日、読売テレビ報道番組のミヤネ屋にも有田氏は出演。

 有田芳生氏(70)とは、私は学生時代に面識があり、何度かお互いの友人の片岡君の下宿(京都市の銀閣寺近く)で顔をあわせている。缶ビールを飲みながらいろいろと話し合ったことがあった。有田君は当時、立命館大学経済学部の学生で、「京都社会科学研究会連絡会(京都社研連)」の委員長だった。京都社研連とは京都市内の各大学の社会科学研究会の連合的な組織。物静かな、理路整然と話す、とても頭のいい学生という印象がある。懐かしい‥。

 今日、7月23日付朝日新聞には、「安倍元首相国葬 閣議決定/9月27日」、「首相支持 国葬にこだわり/野党は批判"なし崩し的""内心の自由侵害"」の見出し記事が掲載されていた。今朝の中国の各インターネット報道を閲覧していると、この国葬についての記事が一面に掲載されているものもあった。「不要美化"安部政治"」など、日本国内での国葬反対の市民デモなどの写真が大きく扱われてもいた。

■「日本会議」という団体がある。宗教団体である「生長の家」などが大きく関与し、長い年月をかけて作られた組織だている団体だ。HPを見ると、「誇りある国づくりへ―国を愛する新しい国民運動ネットワーク」とまず記されている。『日本の息吹』という月刊誌が機関紙として毎月発行もされている。

 この「日本会議」は、「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」の二つの政治団体が統合されて、1997年に設立された日本の政治団体。現在、会員数は4万人ちかくにのぼり、日本で最大の保守主義・ナショナリスト団体となっている。現在の憲法改正、自衛隊明記などを求める国民運動の中心となっている政治団体だ。自民党の国会議員だけに限らず、国民民主党の玉木代表や日本維新の会の松井代表らも会員となっている。(※「生長の家」は現在、方針転換により改憲には反対の意見をもつている。)

 2016年、『日本会議の正体』(平凡社新書)[青木理著]が出版された。表紙の帯には、「安倍政権と響き合うように運動を展開する、日本最大の"草の根右派組織"とは」と記されている。

 7月20日付の朝日新聞の「天声人語」の「安倍元首相国葬」に関する文章は秀逸。「▼‥‥‥。▼非業の死をとげた政治家を追悼したい。そう感じる人が多いのは自然だろう。そうであっても国葬という選択は問題があると思う。みなで悼むことが、みなでたたえることに自動的につながってしまうと感じるからだ。▼‥‥。」。この天声人語の中の一部分だが、同感だ。この「国葬」、日本の未来への さらなる危うさがのぞいている感がする。