硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

シン・仮面ライダーを観終えて。

2023-03-30 22:09:01 | 日記
シン・仮面ライダーを観る。

大きなスクリーンに映し出される物語は、石ノ森章太郎さんの「仮面ライダー」であった。
そして、庵野秀明さんがいつか撮りたいと思い続けていた「仮面ライダー」であった。
ノスタルジーではなく、リスペクトであった。

庵野監督が次に、「シン・ロボット刑事」を撮るのだとしたら、それは、限られたマニア向けの作品になりそうな予感がするが、そういう作品に限って「エヴァ」のようなムーブメントを起こすのではないかと思う。

WBCと大谷選手の未来と野球少年たちの夢。

2023-03-24 22:02:32 | 日記
WBCの結果をニュースで観たけれど、それでも十分に感動した。
躍動する大谷さんを見て、新しい野球選手のロールモデルとなって、これからの野球界を変革してゆくのだろうなと思いながら情報番組を眺めていると、大谷さんが高校時代に計画した目標の中に、WBC二連覇という項目があった。
彼なら実現できそうであるが、もし、叶わない要因があるとしたら、怪我や病気などのフィジカルな問題と、選手とは関係のない国家間の外交問題の二つであると思う。
一つ目はアンラッキーとしか言いようがないが、二つ目の問題は、政治家が努力を怠った結果になる。

彼らのプレイする姿を見て、自分の未来を重ねた少年少女達の希望に無関心な政治家は国会に送り出してはならないと思う。

それを行使できるのは、今、選挙権を持っている人々の一票にかかっている事も忘れてはいけないと思う。

あとがき

2023-03-07 21:32:50 | 小説
読む人にとっては嫌な思いをされた方もいらっしゃるかと思いますが、実際に体験したことを元に物語として膨らませたので、もしかしたら、「リノ」は貴方の側にいる人かもしれません。
多様性と言う言葉をよく見聞きする世になってきましたが、私たちは人であるので、拒絶や断絶は消えないと思います。
危険と感じる人とは仲良くできないし、自己中心的な人に振り回されることも耐えられないからです。
しかし、だからといって、傾倒した思想に陥らない事、その思想に熱狂しない事はできると思うのです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

「ストレイ・シープ」 最終話

2023-03-07 21:22:15 | 日記
「ナミ」はドクターの言葉に、「リノ」の統合失調症は、外部の力ではどうにもならないのだと悟り、後日、「リノ」と今後ついて話し合った。
「ナミ」は、施設内の「リノ」に対する批判を理解しつつも、ほおっておくことができなかったので、障碍者雇用という国の支援を受けながら、働き続けるという選択もある事を優しく説明した。しかし、「ナミ」の気持ちは伝わらず、

「せかされてまで働きたくない」

と、答えた。

「リノ」は、自分に素直な人でもあった。自分の欲する事に忠実な人であった。
自分の興味のない事には関心を寄せず、好きではない人からは何を言われても何も響かない人であった。

努力を嫌う「リノ」には、何を言ってもダメだと思った「ナミ」は、彼女の未来を考えて「障碍者としての手続き」を勧め、リノの承諾を得ると手続きも手伝い、無事に認定が下りると「リノ」は何のためらいもなく「ナミ」の元から去っていった。

「 これ以上私の力ではどうすることも出来ません 」

その文面を読んで、嘆息する。
そして、一緒に働いていた時に受診を進めていれば今の状況にはなってなかったのではと、頭をよぎったが、18歳の女子に「精神疾患かもしれないから受診を・・・・・・」とは、やはり言えなかったと思う。

15年と言う歳月の間、「リノ」は、どこかしらの福祉施設で「同じような評価を受け」、転職を繰り返してきたようであるが、「他者を思いやる事」を求められる「専門職」の現場でも、思うように動いてくれない人は敬遠されてしまうようであった。
それほどに、昨今の福祉現場は余裕がないのであるが、それは、子供たちの成長を拒んだ人々の「具合のいいように」なったのではないかと思う。
そして、心の支えとなる新興宗教は、承認欲求は満たしたが、実生活までは満たしてはくれなかった。

それでも、「リノ」は、「リノのまま」であり続けるのだと思う、たとえそれが、僕らが考える社会に適合しなくとも。

そう思う時、僕らは、ただ、迷い続けているだけに過ぎなかった。

苦悩の末の決断を知らせてくれた「ナミ」に、

「今まで「リノ」の為に頑張ってくれてありがとう。気に病むことはないよ。「ナミ」さんは、すごく頑張ったのだから」

と、返信すると、すごくかわいいイラスト付きの「ありがとう」のスタンプが張られた。

                 完

「ストレイ・シープ」 第21話

2023-03-06 21:08:10 | 日記
それでも、「ナミ」はあきらめずに叱咤激励を繰り返し「利用者と同じように」サポートし続けていたが、ついには利用者さんからも「あの子はどうして動いてくれないの」という、発言が聞かれるようになり、他のスタッフからも不満の声が出て、「ナミ」は、窮地に立たされた。

経営者としてどう対処するべきか。その責務が両肩にのしかかる。

批判の声が上がったからと言って簡単に解雇はできない。かといって、このまま「リノ」の成長する事を信じて、じっと我慢する事も難しい。
「ナミ」は悩みながらも、症状が回復する事を願い「リノ」のフォローを継続したが、「リノ」は「ナミ」の気持ちには応えられず、時間だけが経過していった。

初診から半年後、もう一度、経営者としてどうするべきか考え抜いた「ナミ」は再び受診に付き添い、直接ドクターに今後どうするべきか尋ねる事にした。

しかし、ドクターの診断は、「ナミ」の希望に叶うものではなく、「リノ」の統合失調症は遺伝であると判断した。

統合失調症と遺伝が結び付かず少し困惑した「ナミ」は、どういう事なのか再度説明を求めると、「最近の研究で、遺伝的な疾患も認められることが分かり、リノの場合は遺伝的な疾患に当たる」と、告げられたのであった。

つまり、「リノ」の両親もその疑いがあるのであるが、「リノ」から聞かされた、家族や家の様子から勘案すると、辻褄は合っていた。
優しいドクターは、目の前で言葉を失っている「ナミ」の性格をよく知っていたので、

「あなたは、よく頑張りました。しかし、彼女はもう、モノトーンなんですよ」

と、穏やかに答えた。




「ストレイ・シープ」 第20話

2023-03-05 18:15:30 | 小説
「ナミ」には、経験値があった。だから、どんな診断結果が出ても、これからの事を考えられる余裕があった。
だからこそ、「リノ」の言動の根源が、ただ、怠惰なものなのか、環境から構築されたものなのか、疾患から発するものなのかを見極める必要があり、その為には、信頼できるドクターに診てもらう事が重要であった。
そこで、「ナミ」は、以前勤めていた病院のドクターに事前に相談を入れて、診てもらう段取りをつけたのであるが、受診中は保護者のように「結果」を心配し、色々と考えを巡らせていた。
そして、ドクターは「リノ」の症状を、「統合失調症」と、診断すると「ナミ」は、納得したようであったが、30歳になった「リノ」は、その事実を受け入れらなかった。しかし、それが現実であった。

「リノ」は現実を受け入れられないまま病院での結果を両親に告げると、母はショックを受け、「リノ」に感情をぶつけたが、「私は、お母さんの子供だから」と、言うと黙ってしまった。

それに比べ、父親と旦那は、まったくの無関心だった。

「リノ」にとっては、それが普通であり、「リノ」の性格上、他と比べる事もしなかったので、「リノ」自身には何も問題はなかった。
しかし、客観的に見れば「リノ」が抱える問題は多岐にわたっていて、どこまで干渉してよいのかさえ分からなかったが、目下の問題である統合失調症自体は治療を受けていれば回復する事例も多いので、「ナミ」は治療を受けながら施設で働く事を進め、サポートを続ける事にした。

しかし、「リノ」の気持ちは一向に好転せず、「ナミ」のLINEからは、

「覚えようとしない」
「できませんと言う」
「愚痴ばかり溢す」
「やろうとする努力が見られない」

というワードで占められていた。


「ストレイ・シープ」 第19話

2023-03-04 21:49:08 | 小説
しかし、「リノ」は一向に変わる気配がなかった。
「ナミ」の施設では軽度の知的障害を持っている人が働いていて、その人は頑張って努力しているのにと悩んでいた。

さらに、「ナミ」を悩ませたのは、新興宗教を通じて知り合った旦那は、家に稼ぎを入れず、自分本位で、「リノ」の事も営み以外の事は無関心らしく、「リノ」のリノで、「彼」の方がよかったと愚痴ばかり溢していた事だった。
「じゃあ、何故そんな人と結婚したの? 」と聞くと、「勧められたから・・・・・・。」と、答えるものの、「好きじゃないのだったら、離婚した方がいいよ」と、具体的な方向性を示すと「ん~。それはちょっとぉ・・・。」と歯切れの悪い返事をする始末だった。

「ナミ」からしてみれば、「リノ」の話は、まったく要領を得ず、ストレスは徐々に蓄積されていき、ある日「リノ」について、LINEで話し合っていると、「ナミ」は精神病棟での勤務経験があったので、「リノ」の言動が、普通ではないと感じていたらしく、僕も、「リノ」と一緒に働いていた時、一時期、その事について考えていた事を告げると、「やっぱり、そう思うでしょ」と、何かを確信したのか、早速、翌日「リノ」にメンタルクリニックの受診を進めてみたのである。
しかし、「リノ」は「なぜ私が? 」と言う風な感じで、拒否し続けていたが、「ナミ」の粘り強い説得と「ナミが付き添うから」という条件に、重い腰を上げ、受診する運びとなった。

そして、何かしらの答えが出れば、「これからの目途も立つ。」と、思っていた。


「ストレイ・シープ」 第18話

2023-03-03 20:08:32 | 小説
そんな状況でも「ナミ」は、職員、利用者、ともに気を配り、てんてこ舞いになりながらも、施設を切り盛りしていて、時より愚痴や、うれしい事などのエピソードをLINEを送ってくれて、その文面から奮闘ぶりを想像していた。
そして、LINEのやり取りが一年くらい続いた頃、突然、

「リノって子、知ってる? 」

と、いうLINEが送られてきた。
一瞬目を疑ったが、同姓同名であり、しかも「リノ」という女性は僕の事をとても知っていると言っているようで、あの、「リノ」であることを確信した。

「知ってるけど。なぜに? 」

なぜ、「リノ」の名が「ナミ」によって語られるのかが全く分からず、勢いで返信してしまったのであるが、しばらくして送られた長文のLINEを読んでいくと、「ナミ」の施設で働き始め、履歴書に僕が以前勤めていた施設のが書かれていたので、僕の名前を出したところ、「とてもお世話になった人」と、言ったのだという。
しかし、そんな事よりも、仕事はちゃんとできるようになったのかが気になる。
聞くか聞くまいかとても悩んだが、「ナミ」が「リノ」に対してどう思っているのか知りたかった。だから、遠回しに「リノ」の仕事ぶりを尋ねてゆくと、

「世話は焼けるけど、頑張ってるよ」

という、返信が送られてきた。
さらに、結婚もしているようで、少しうれしくなったが、一応、「リノ」の特徴を簡潔に伝えて、「よろしくお願いします」と返信した。

しかし、そのLINEを境に「ナミ」からのLINEは「リノ」の事についての相談が増え始めて、日がたつにつれ、僕が経験したことを、そのまま「ナミ」が追体験する事になっていったが、僕と違って「ナミ」は経営者でもあったので、使命感も大きく、「リノ」を自立させようと力を尽くしていた。


「ストレイ・シープ」 第17話

2023-03-02 20:58:56 | 小説
遡る事数年前、日本経済が冷え込んで、公共事業が減少した時期があった。その時国は、規制緩和をし、国土交通省にも福祉部門の門戸を開き、サ高住と呼ばれる建物の運営ができるようにした。そのおかげで、介護を必要とする利用者の受け皿は増え、「待機者」と呼ばれる人々は減少に転じたが、利用者を支える介護職員の離職には歯止めがかからず、福祉専門学校ですら、4次募集をかけても定員割れを起こし、入学してくる大半が中年の人達だと、専門学校の先生がため息交じりに語るほどの状況になっていて、介護職の労働に対する対価は、経営する側にならなければ、ずっと据え置きのままという構造に気が付いた「普通のスキルを持つ」若者たちは、わざわざ介護職を選ばなくなっていた。

そして利用者側も介護保険を利用する人々の年齢層が、戦前生まれの人々から、戦後生まれの人々に移行しつつあり、その世代の高齢者の多くは20~30歳で高度成長期を迎え、60歳代でバブル経済を経験しているので、消費者マインドが強く、「お金を払っているのだから」と、権利を主張する人が増え、権利を主張する利用者の子供である人たちも少なからず、難しい人がいて、親子の関係は悪く、普段は関わりを持とうとはしないが、気に入らない事があると、目くじらを立ててクレームをつけてくるのである。

それに対して、すべてにおいて未成熟である職員側は、対応しきれない状況に陥ってしまっていた。

そして、現在の介護現場では、施設はあるものの、介護をするスタッフが集まらないという悪循環に陥っていて、求人募集をかけても就職を希望する人のほとんどが、「施設を横に流れてくる人」や「他の職種では上手く働くことができない人」に、なってしまっていた。


「ストレイ・シープ」 第16話

2023-03-01 20:40:09 | 小説
それから数年後、世の中の大半の人が、スマートフォンを持つ時代になり、ガラケーを使い続けていた僕にも、故障という理由からスマートフォンへ移行せざるを得ない事態になった。
使用料を含めると倍以上の月額料金になるので、とても抵抗があったが、店員さんから、「もうすぐガラケーも使えなくなりますよ」という進言があり、これも時代のする事なのかと諦めて、スマートフォンを手にした。
しかし、ガラケーの故障の具合から、店頭でのデーター移行は不可能と診断され、さらに、「スマートフォンに慣れておくためにも自力で入力した方がよい」と、言われてしまったので、これも、仕方なしと思い、近くの書店でスマホの取説を買い、うんうん唸りながら、親族や仕事関係等の主要な人物を登録し、職場でもLINEを通して情報を交換する事になっているので、早速LINEをインストールし起動させた。

すると、瞬く間に知っている人やまったく知らない人からの友達登録がなされるので、怖気づいていると、翌日、「ナミ」からのLINEが届いた。
全く不可思議な世の中になったなと思いながら、恐る恐るラインを開くと、

「元気にしてる? 久しぶり! 」と、あった。

余りのなつかしさに、「久しぶり! 調子はどうですか? 」と返信。

LINEの使用は初めてなので、ドキドキしながら返信を待つ。すると、少し時間が経ってから、長文が送られてきて、その文面からは施設での奮闘ぶりが伝わってきた。
相変わらず頑張ってるんだなぁと、感心しつつも、彼女にとっては、「大きな力から託された役割」という想いもどこかにあるのだろうなと思った。