硝子戸の外へ。

善いことも悪い事もわけ隔てずよく見聞きし、考え、足らない事を知り、恥をかきつつのんびりと独り言をつぶやいてます。

新春ドラマ「坊ちゃん」

2016-01-11 22:52:16 | 日記
昨年末から楽しみにしていた新春ドラマ「坊ちゃん」をようやく観る。ずいぶん前から「坊ちゃん」か「三四郎」をテレビドラマでやってはくれないだろうかと思っていたので、喜びもひとしおである。また原作がきちんと分かっている状態で観るのは初めてであるから脚本家の方がどれくらい夏目先生の気持ちを汲んで脚本に起こしてくれるのかがとても心配であったが、観てみると存外面白かった。原作を忠実に再現するには尺が短いので、いくつかのエピソードを選り抜き、変更し、構成しなおしてあったが、上手くまとめられており、物語を起こすところなどもなかなか良いし、物語を閉めるところでは、迂闊にもうるっとしてしまった。

演技者も上手い人ばかりなので違和感がなく、マドンナ役で松下奈緒さんが登場した時は、「イメージが壊れないだろうか。よく引き受けたなぁ」と心配したが、「フリーター家を買う」などを手掛けた橋部敦子さんの巧みな脚本が彼女を見事に引き立てていて大いにうなった。また、清が書く手紙がひらがなばかりであるところなど細部に気を配っているところがとても印象的であり、「坊ちゃん」の「まっすぐでよいご気性」が野だいこや生徒たちに良い影響を与えて決着がつくところも爽快で良かったが、方言や「帝大」という言葉をあえて使わなかったところに息苦しさを感じた。

物語は原作と異なり赤シャツだけが「奸物」となったが、「坊ちゃん」が誕生したのは日露戦争に辛うじて勝利した2年後であるから、橋部敦子さんの「坊ちゃん」の物語から枝を伸ばしてゆくとしても、勇気を出して否と言った野だいこは、時代にほんろうされ坊ちゃんの気性を次第に埋没させてしまい、実直であった山嵐も実直であるが故に苦しみ、校長は殿様として変わらず立ち居振舞い続け、マドンナに逃げられ、坊ちゃんの拳骨を食らった赤シャツは、その後も巧く立ち回り、唯一の勝利者となり、師範生とケンカした学生達は、家庭が裕福なものは師範生になり、同じようにケンカし、軍人になり、赤シャツのように振舞うことを是であると思う日がやってくるだろう。
駆け落ちしたうらなりとマドンナも家を捨てた、その後ろめたさに苦しむ時がやってくるだろう。

そして、自分を貫き通した「坊ちゃん」は、痛快であったかもしれないが、決して勝ったわけではなく、さらに「清」を手放すことが出来なかった彼は、その後も親譲りの無鉄砲さで損ばかりしていったのであろうと思う。
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