硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

映画「新聞記者」を観る。

2020-05-21 21:55:04 | 日記
日本アカデミー賞作品賞を受賞したという作品であったので、一度見ておこうと思って観てみたのです。

作品賞を受賞しているだけあって、物語にぐいぐい引き込まれてゆくのですが、鑑賞後感がどうにも良くありませんでした。しかし、よく考えてみたら、この作品にエンターテインメント的なものを求めたのが間違いだったと気づくのですが、それでも、もやもやは消えません。ラストまで集中力を切らさず作品の世界に入り込めていたのに、ラストシーンとエンドロールで一気に冷めてしまったので、残念な感じが払しょくできませんでした。
そこで、個人的にすっきりさせたいので、愚痴っておきます(笑)ネタバレあるので、映画を観られる方は、この先からはご遠慮ください。

まず、主人公のエリート官僚杉原君は、なぜ「ごめん」と言ったのでしょう。
名前を出していいと言った時、辞職してでも信念を通すんだと思って、物語の展開にわくわくしたのに、上司の多田さんに家族を人質に取られた格好になって、気持ちが揺らいで、ごめんだったら、すごくがっかりなのです。
学歴や経歴は素晴らしいのだから、一般企業に就職しても十分に家族を養って行けるだけの対価を得られるはずなのに、なぜキャリアにこだわってしまったのかが理解できないのです。また、情報を扱う仕事をしているなら、そこで、多田さんの言いなりになってしまえば、またいつか利用され、元上司の神崎さんの二の舞になる可能性が高い事は理解できるはずです。

そして、上司の多田さんが「国家を護る」という言葉を何度も口にしていたけれど、彼の行動や発せられる言語から察すると、守っているのは「国家」ではなく「国家」というボードゲームに参加しているプレイヤーの一人を護っているとしか思えません。
細菌の研究をする目的で建設する大学が、軍事目的にも転用できる研究を行うという情報を公にしようとする女性記者の吉岡さんにも、いきなり電話を入れ、命の保証はしないと言わんばかりの脅迫をしますが、第一報が報じられた後なら、そんな計画に対し、隣国が黙っていないであろうし、日本独自のリードなら、アメリカも黙ってはいないと思う。そして、野党からは情報の開示を迫られるであろうし。中米から外圧が掛かれば、多田さんが守っているプレイヤーも多田さんも失脚すると思う。

そして、色々考えて最後に思ったことは、外務省や内閣情報調査室は伏魔殿かもしれないけれど、ハリウッド映画のように、国の中に本当の悪がいるという設定の映画を受け入れられるほど、日本は文化的に成熟していないから、もやもやしたのかなと思ったのです。


世の中色々あるけれど。

2020-05-18 17:07:11 | 日記
まだまだ予断を許さないコロナウィルス。地方の町に住んでいても、感染者が出ると、危機感を覚える。

県内でも感染者が数人確認されていますが、福祉に携わっていると、あまりよくない話も聞こえてくる。

自粛パトロールという言葉も、ムラ社会ではかなり歪んでしまうらしく、隣人からの非難の声で、引っ越しを余儀なくされたり、生卵をぶつけられたりした人もいたそうです。
仕事で都市部へ行かなければならない人もいるのに、余りにも理不尽な行為だと思います。

もし、自身が掛かってしまったら、同じことをされたらどう思うかという考えが働けば、お互い様という気持ちで、暖かく見守れるはずなのに、なぜか自身の正義とか同調圧力が先行してしまうようで、こういう時、ムラ社会の体質ってやだなって感じます。

いい話もあります。お菓子のメーカーさんは、障碍者や障碍児の施設へお菓子を配ったりしています。飲料水メーカーさんは市内の学童に、インスタントの飲み物を配ったそうです。

他にもたくさんありますが、こういう話を聞くと、世の中捨てたもんじゃないなと思います。

こんな事もあるんだね。

2020-05-13 21:04:21 | 日記
今日の朝刊の社会面に、小さく「富士通が4万件 知的財産開放」という記事が掲載されていた。内容は、新型コロナウィルス感染症の、早期終息に向けた活動を対象に、一定期間、特許などの知的財産権を、無償で開放すると発表した。というものである。

昨日の今日だけにすごく驚いたけれど、それと同時に安心しました。

かっこいいぞ富士通さん!!

こんな事あってはならないけれど。

2020-05-12 21:12:39 | 日記
ニュースを観ていてふと思った。あってはならない事だとは思うけれど・・・・。

コロナウィルスのワクチンを開発している会社が、国内でも数社ありますが、もし、海外などの情報が、なんらかの力によって不平等に伝達されていて、不適切な競争下で開発されているのだとしたら、ひどい話だと思う。

志村けんさん。

2020-05-10 16:54:27 | 日記
まだ幼児だったころ、土曜日の夜、八時は「8時だよ全員集合」を家族で観ていた。

お笑いというものも分からず、ただ純粋に面白く、いつかは会場に行きたいと思っていた。その中でも荒井注さんの「なんだばかやろう。」「でぃす・いず・ざ・ペン」というギャグはお気に入りで、意味もなくよく言っていたという記憶がある。ところが、ある日、荒井さんがテレビから姿を消して、突然、志村けんさんが現れた。大人の事情なんて分からないので、ただただ、嫌だったという感覚は今でも覚えているが、しかし、志村さんはあっという間に、僕の心を魅了し、彼から繰り出されるギャグをマネすることになった。志村けんさんと加藤茶さんの真似をすることで、皆から笑われる事が、本当に嬉しかったのか、よく分からないけれど、当時は有頂天だった。小学校の低学年の時も躊躇せず、マネをしていたら、受け持ちの先生から通信簿に、その事が指摘され、母を困らせていたという自覚はなかったが、大人になってから困らせてたことを知る。

お笑いには流行がある。それは、当時は分からなかったけれど、クレイジー・キャッツという人たちは、面白くなく、ドリフターズの方が面白いというものだったけれど、ある日、「俺たちひょうきん族」という番組が始まり、同級生は一斉にそちらに流れた。しかし、当時は、一家に一台というテレビのチャンネル権は父にあり、土曜の夜、8時はドリフ、9時はGメン75という流れであった為、出遅れていたが、父が土曜の夜も仕事の時、俺たちひょうきん族を観ると、漫才師が集まり、笑いを作るという、新しい笑いがそこにあった。

父もいつしか、そちらを見る事になり、その陰で、8時だよ全員集合は、いつしか幕を閉じていた。

精神的に変わらない僕は、たけしさんやさんまさんのマネをすることになったが、そこには日常会話の中にかれらのギャグが入るという時代になっていて、誰かに笑われる事で得られる嬉しいという感覚が、逆に足を引っ張ることになっていき、次第にお笑いは観るだけの方へとシフトした。

そして、「とんねるずのみなさんのおかげです」がスタートした頃には、自室にテレビがあった。土曜日の夜ではなかったが、流行は、「みなさんのおかげです」とダウンタウンさんの「ごっつええ感じ」に移っていって、最終回を見ながら、寂しさはないけれど、また、変わってゆくんだなという感覚を覚えた。

その頃、志村さんの番組は月曜日の夜になり、また、観始める事になる。「志村けんのだいじょうぶだぁ」である。そこには、ばかばかしいんだけれど、ドリフになない面白さがあった。しかも、見たい番組が被らないという強みもあった。今思えば、慣れない社会人生活と、辛い仕事の後に、笑う事で救われていたと思う。

しかし、いつしか終わってしまい。志村さんの笑いから、また遠ざかることになった。

「とんねるずの皆さんのおかげです」もダウンタウンさんの「ごっつええ感じ」も終わり、「めちゃめちゃイケてる」というナインティナインという若い漫才師さんが新たな笑いをリードしていった。
そして、岡村隆史さんは、志村さんや、さんまさん、石橋さんや木梨さんをリスペクトしつつ昭和の笑いを回収するような形も取っていたので、懐かしさと面白さが入り混じった笑いを体験させてくれた。

その間も、志村さんは「バカ殿」で活躍され、僕も時々、他の番組を観ているとき、コマーシャルの合間合間に、観てはいたが、その頃は、もう、お笑い番組を観る事の理由がなく、次第に、見なくなっていた。

近年、「志村どうぶつ園」をちらっと見た時、志村さんも随分歳をとったなぁと思っていた矢先、コロナウィルスに感染し、入院というニュースを観た。
随分前に体調を崩された事と、深酒とヘビースモーカーというお話を聴いていたので、仕事柄、身体の免疫力が低下してることは察しがついた。

そして訃報を聞いた。突然、テレビから消えてしまった。

志村さんを偲ぶ特番が録画してあったのか、勤めている施設で流れていた。それを観ていた認知症のおじいちゃんおばあちゃんが笑っていた。
その姿に、志村さんの笑いの哲学が、普遍的であることを知った。

志村さんの死に、志村ロスする人もいたが、僕は、テレビに現れた頃のことを想い出し、最後まで、志村さんらしいなと思った。

「巨神兵東京に現る」 エピローグ。

2020-05-03 20:42:24 | 日記
午前の講義が終わる。深夜にまで及ぶバイトをやり遂げてからの朝の講義は本当に辛い。でも、フリスクを口に入れたり、時には自分で頬を叩き、頭には入らないけど、辛うじてノートを取って、授業に乗り遅れないように頑張れていたのは、学食で友と無駄話と、名前も知らない気になる女子を遠くから眺める事が、近頃の元気の元だったからだ。
チャイムが鳴ると、思い切り背伸びをして、思い切り空気を吸う。すると、ほんの少しだけ覚醒する。筆記用具をカバンに詰め込むと、友が待つ学食へいそいそと移動した。

食堂までの通路の脇の落葉樹の葉は色づき始めていて、季節が移ってゆくのを感じた。澄み渡る青い空と柔らかな日差しは、疲れ切った心と身体をいやした。
著名なデザイナーがデザインしたという打ちっぱなしの外壁の食堂が見えてくると、学食へ向かう学生たちの群れの中に白いブラウスにパステルカラーのカーディガンを羽織り、質の良いどこかのブランドのショルダーバッグを肩から下げて、桜色のふわりとした膝が少し出る丈のスカートと、ハイソックスに黒のタッセルローファーの靴を履いた彼女が、肩まで伸びた真っ直ぐな黒髪が風になびかせながら軽やかに歩いているのが見えた。

その時、僕はなぜか、湧き上がる気持ちが押さえれなくなって、彼女の側まで駆け寄ると、今までの自分では考えられない行動に出てしまった。

「滝本さん!」

知らないはずの彼女の苗字を呼んだ事に、自分でもびっくりしたが、彼女は、驚きもせず、僕の方を見て返事をした。

「はい。」

「突然すいません。」

「はい。」

「あのっ、あなたの事が好きです。僕と付き合ってくれませんか?」

そう言うと、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべ、

「もちろん! 君がもう一度、告白してくれるのを待っていたんだよ。」

彼女は、戸惑う事もなくいきなり僕の胸に飛び込んできた。突然の出来事にしどろもどろになりながらも、彼女の背中に両手を回すと、学食に向かっていた大勢の学生達は、僕たちを見て、フラッシュモブが始まったかのように、温かい拍手を送ってくれていた。


                                  完



あとがき

巨神兵東京に現る。スピンオフ物語、最後まで読んで頂き有難うございました。
この物語自体はずいぶん前に、思い付きで書いていったものだったのですが、改めて読み返してみて、これではいかんなと、手入れをしながら、自分なりに完結させることを目指しました。
どこかで誰かが、通勤や通学の途中で、少しでも楽しんでくれればいいかなと思って書いていたのですが、世界全体に暗い影を落とす世になってしまいました。
出口はまだまだ見えませんが、どうか、健康に気を付けて日々をお過ごしください。

そして、最後に、

拙い文章に「いいね」を押してくださった方、本当にありがとうございました。とてもうれしかったです。また、粘り強く最後まで読み切ってくれた方々、本当に有難うございました。

「巨神兵東京に現る」 終末を超えて。

2020-05-02 22:00:41 | 日記
「ああっ。やられちゃったね・・・。まぁ、いいか。ところで、君の名は? 」

草薙剣はたしかにその者を貫いている。澪は驚きながらも、

「須佐之 澪」

と答えると、その者は、女性らしく微笑んで「みお」と呼び、

「我が名はフレイア。このシステムのプロトコル。あなたは今までの守り人とは違う。ようやく巡り合えた。この出来事は必ず正確に次の世代に伝えてください。あなたはバグをデバッグするもの。目覚めれば、必ずこの世界を理解する。」

そう言うと、「もう君には必要ないもの」と草薙剣を引き抜き、剣を灰にしてしまった。唖然とする澪の前で優しく微笑むフレイアは、澪から鬼神の能面を取り、「これも必要ない」と言って、手のひらの上から消し去った。そして、自身の剣を澪に差し出し、「この剣を持て。名はフルンティング。ディバックを迫られた時、きっと君の力になる。」と言い残し、再びオレンジの粒子になり消えていった。

「終わったのか? 」

フレイアから渡された剣を握りしめ、ゆっくりと荒野と化した地上に降り立つと、すべが無であったように思えた。そして、戦いの場であった空を見上げると、次第に意識が遠のいていった。

そして、いきなり「起きなさい」と、フレイアの声が聞こえ、澪は驚いて飛び起きると、そこは澪が住む大学近くのアパートのベッドの上だった。どうなっているのか訳が分からず、とりあえずカーテンを開け、外を見ると、そこにはいつもと変わらない風景が広がっていた。澪は夢でも見ていたのかと思ったが、胸の勾玉と、床に置いてある短剣は戦いがあった事を証明していた。しかし、日付も時間も正確に経過していた。テレビに映るアナウンサーもきちんと戦った日の翌日をの日付を告げていた。

狐につままれる。とはこの事かと思いながら、身支度をし、大学への道のりを歩く。壊滅的に破壊されていた街が、破壊されずにそこにある。体育館のカギを借り、いつものように早朝練習を行い、学食に行き、食事を摂り、友と語り、教室に向かう。平凡な日常であったが、それこそが現実離れをしていた。

浅田みゆが澪に気づき、元気よく手を振っている。手を振り返し、みゆの隣に座ると澪は昨日の出来事について尋ねた。

「浅田さん。昨日、お昼から何してたの? 」

「なになにぃ。みゆのこと気になるのぉ。うふふっ。う~んとねぇ。きのお~は~。そうそう。近くの公園に行ってね、お弁当を食べて、お日様が気持ちよかったから、芝生の上に寝転んでお昼寝してたよ。」

「えっ。それじゃあ、変な怪物の事も、仮面の人の事も知らないの? 」

「なに、それぇ~。みお君、おもしろ~い。で、その物語の続きはぁどうなるの? 」

「いやっ。なんでもないです。」

その時、フレイアの言っていた『世界』というものが何となく理解できた。そして、不条理な暴力によって破壊されてしまった街を見た後の、いつもの風景や、当たり前だと思っていた日常は、有難く、尊いものなんだなと思った。

「巨神兵東京に現る」 終末を超えて。

2020-05-01 20:29:27 | 日記
命がけで剣を振るう。知の限り、力の限りを尽くして、切り込んでゆくが、かわされ、防御され、一太刀も相手に触れる事すらできないでいた。
逆に、相手の剣は、ギリギリでかわす澪の狩衣の端々にその軌跡を残していた。
しかし、相手も手加減なしで打ち込んでくるのは感じてきていて、無心で打ち込んでいるうちに、力の差が均衡していっているのが、手ごたえとして伝わってきていた。そして、ある瞬間、澪が得意としていた胴を打ち込むと、その者の衣服の端に剣先が触れ、僅かに切り割けた。

その者は、切り口をじっと見て、再び笑みを浮かべた。

「ほう。やるじゃないか。では、こちらも、行くぞ。 」

その者の動きは一段と早くなったが、澪もその者から繰り出される剣を剣で受け止められるようになってきていた。それは、鬼神の面の助力もあったが、平凡で単調で刺激もなく、皆が、どこがおもしろいのだと思う習練を真面目に取り組んできた結果でもあり、心技体が結実する瞬間を迎えていたからでもあった。
命がけの戦いであるのに、頭は冷静になってゆき、お気に入りのDEATHが頭の奥で流れ始めると、それまで、追うだけで精一杯だったその者の剣の動きが、明確に見え始め、鋭く斬り込んできたその者の剣を剣で抑え込むと、その者も少し驚きの表情を表し、そのすきに右足でその者を腹部に蹴り込んで押し返すと、その隙に間合いを取り、中段に構え、呼吸を整え、目を閉じた。

「なるほど。いつでもこい、という事か。いいだろう。」

次の瞬間、その者は、上段から斬りかかってきたが、それは何度も頭の中で繰り返されたあのイメージだった。