硝子戸の外へ。

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「ストレイ・シープ」 第21話

2023-03-06 21:08:10 | 日記
それでも、「ナミ」はあきらめずに叱咤激励を繰り返し「利用者と同じように」サポートし続けていたが、ついには利用者さんからも「あの子はどうして動いてくれないの」という、発言が聞かれるようになり、他のスタッフからも不満の声が出て、「ナミ」は、窮地に立たされた。

経営者としてどう対処するべきか。その責務が両肩にのしかかる。

批判の声が上がったからと言って簡単に解雇はできない。かといって、このまま「リノ」の成長する事を信じて、じっと我慢する事も難しい。
「ナミ」は悩みながらも、症状が回復する事を願い「リノ」のフォローを継続したが、「リノ」は「ナミ」の気持ちには応えられず、時間だけが経過していった。

初診から半年後、もう一度、経営者としてどうするべきか考え抜いた「ナミ」は再び受診に付き添い、直接ドクターに今後どうするべきか尋ねる事にした。

しかし、ドクターの診断は、「ナミ」の希望に叶うものではなく、「リノ」の統合失調症は遺伝であると判断した。

統合失調症と遺伝が結び付かず少し困惑した「ナミ」は、どういう事なのか再度説明を求めると、「最近の研究で、遺伝的な疾患も認められることが分かり、リノの場合は遺伝的な疾患に当たる」と、告げられたのであった。

つまり、「リノ」の両親もその疑いがあるのであるが、「リノ」から聞かされた、家族や家の様子から勘案すると、辻褄は合っていた。
優しいドクターは、目の前で言葉を失っている「ナミ」の性格をよく知っていたので、

「あなたは、よく頑張りました。しかし、彼女はもう、モノトーンなんですよ」

と、穏やかに答えた。




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