硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

落語のようなクリスマスのお話を一石。

2015-12-22 22:27:05 | 日記
さてさて、その頃ヨセフさんは、心優しいといいましょうか、優柔不断と言いましょうか、ああでもない、こうでもないと悩み続けていたところ、ある夜、あの天使さんが夢の中に現れてこう言うたんですな。

「ヨセフよ。恐れず妻を迎え入れなさい。その胎に宿っているのは精霊によるものです。マリアは男の子を生みます。その名をイエスと名付けなさい。この方こそご自分の民を罪から救ってくださる方です」

迷える羊ヨセフ。このお告げは渡りに船ってもんです。それでようやく腹をくくったんですな。それで、翌朝目が覚めたらつきものが落ちたようになんやらすっきりした気分になって、マリアさんが身籠っている子供が精霊の子とわかったもんだから、その子が生まれるまで、一切契りを交わさなかったそうです。ヨセフさん。 ほんまに偉い人です。健康な男性ならそんなことできませんのにねえ。

そしてお話はぐっと先へ進みまして、子供が生まれるといわれている十月十日が迫ったある日、出稼ぎに出ていたヨセフさんとマリアさんは、世界で初めて住民登録なるものが始まったので、住民登録するために故郷へと向かっていたその途中の夜の帳が下りた頃、マリアさんが急に産気づいたんですな。初めは我慢しとったんですけれど、いよいよ我慢しきれなくなって思わず叫んでしまうんです。

「あかん。もう生まれる~。ヨセフさん。もう生まれてしまう~」
「ええっ! 家までもうちょっとや、それまで我慢できへん? 」
「あほいいなされ。 もう、もう、うまれるとゆうとるやないの! ああ~。あかん。あたまがでてきたわぁ」

こんな時、おろおろするのは決まって男の方です。ほんま情ないですけれどもこのヨセフさん、男前を発揮するんです。でも、なぜか運悪くその周辺の宿屋はどこも満室。現在のように救急車も産婦人科もないんですから、たいそう困ったでしょうなぁ。そこでヨセフさんは家畜の為の洞窟を見つけ、なんとかしようと覚悟を決めてマリアさんのとこへ駆けつけます。

「マリアさん。ごめん。雨風しのげるのはあそこしかない。僕も手伝うからあそこで赤ん坊を取り上げよう」
「わかった。ええよ。わたしがんばるわ! 」
「ええか。はっはっひーやで。はっはっひー 」

まぁ、当時にはそんな呼吸法はありませんが、とにかく二人で頑張ったんですね。そしてしばらくすると洞窟の中から「おぎゃー、おぎゃー」と聞こえきて、天使さんの言う通り、元気な男の赤ちゃんが誕生したんですね。様々な葛藤を経て生まれてきただけに喜びもひとしおで、二人で幸せをかみしめます。

「ほんまに・・・・・・。よう頑張ったなぁ。ほれ見てみい元気な男の子や」
「うん。ほんまやな。ガブリエルさんの言う通りやった」
「・・・ほんまやな」
「ああそうや。それでな、この子は将来、優れた人になるんやて。それでな、いと高き子と呼ばれてな、神様はこの子に王位を与えてくれて、永遠に国を治めて、その国は滅びる事がないと言うてたよ」
「へえ~。そんな偉い子なんや。そら大事に育てやなあかんな」
「ところで、この子の名前どうする? 」
「お告げではなんて言うてたの? 」
「この子の名前はイエスと名付けなさいて言うてたよ」
「おおっ。僕の夢枕に立った天使さんも同じこと言うてたよ。イエスかぁ、神様から授けていただいた尊い名前や。ほんまありがたい。」
「それよりヨセフさん。イエスがこのまま裸んぼうのままやと風邪ひいてしまうわ。なんとかならへん? 」
「あああっ。そうやった。ごめん。それやったらこの布にくるんで藁の引いてある餌箱に寝かせるわ。ずいぶん暖かいはずや。たき火ももうちょっと大きいするわ」
「ありがとう・・・・・・。。私疲れたで横になるわ」
「うん。ようがんばったね。 ほんまありがとう」

こうして二人で力を合わせて二人だけで出産したんですな。心温まるエエ話ですなぁ。
これがクリスマスの元となったキリストさんの誕生秘話なんです。

                                     つづく