逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

最終局面に入ったアフガニスタン

2008年10月07日 | 軍事、外交

『タリバンには勝てない』

英軍司令官、交渉を主張  10月5日23時59分配信 時事通信

【ロンドン5日時事】
5日付の英日曜紙サンデー・タイムズは、駐アフガニスタン英軍最高司令官がイスラム原理主義勢力タリバンとの戦闘で、軍事的な勝利を期待すべきではないとの悲観的観測を示したと報じた。
インタビューに応じた駐留英軍のカールトンスミス准将は「この戦いには勝てない」と述べ、英国民に期待値を下げるよう訴えた。
 
同准将は、アフガンでの戦闘は「アフガン軍が対応できるレベルまで(タリバンの力を)弱めるのが目的」と強調。
英国民は「決定的な軍事的勝利」を期待すべきではないと呼び掛けた。
 
一方、「タリバンが交渉の席に着く用意があるというなら、それこそが戦闘終結に向けた前進だ」「国民も不愉快には思わないだろう」と主張した。
「タリバンとの交渉の可能性を探るべきだ」と述べた。 

駐アフガン英軍部隊は現在、南部ヘルマンド州を中心に約8000人が展開。
01年の駐留開始以降、英兵の死者数は100人を超えている。

アフガニスタンのヘルマンド州知事は「英軍が展開しているのに、タリバンは州の半分以上の地域を支配している」と語り、英軍駐留がタリバン弱体化につながっていない現状を指摘した。








『タリバンに軍事的勝利をおさめるのは不可能』

2008年10月06日アフガン国防相、タリバンとの和解を模索。
アフガニスタン国防大臣Abdul Rahim Wardakは「タリバンに軍事的勝利をおさめるのは不可能であり、タリバンを交渉のテーブルに呼ばなければならない」と述べた。
「経済状態を向上させ、失業率を下げ、タリバンとの平和的な政治解決をしなければ、国力が持たない」
「タリバンの側は、アフガン憲法および民主的な方法による権力の平和的な交替(注:選挙による政権交代を指すのだと思う)を容認するべきである」


一方、ロンドンのSchool of African and Oriental StudiesのアフガニスタンアナリストDan Pleschはアルジャジーラに、アフガニスタンに派兵している西側諸国は敗北する可能性があると語った。
「西側諸国の軍事力は、アフガンで負けるという深刻な問題と向き合わなければならない。タリバンは国際部隊を負かすことができるかもしれないということだ」
「NATOと米軍はこれから数年間のうちに敗北するかもしれない。」


☆UK commander backs Taliban talks (アルジャジーラ)







アフガンで活動18年、中村医師が語るタリバンの真実(日本経済新聞社)
2001年10月24日

米軍によるアフガニスタンへの報復攻撃が続く中、一般市民はどんな状況なのか。
パキスタン北西部の都市ペシャワールを本拠地に、アフガン東部で18年間にわたり医療活動を続けている、非政府組織「ペシャワール会」の現地代表・中村哲医師に現地の様子やタリバン政権の実態について聞いた。
中村医師は米ニューヨークのテロ事件直後にアフガン入り。
10月13日現在一時帰国中だが、今月中に再度ペシャワール入りする予定である。


『市民は北部同盟を受け入れない』
 
今、アフガニスタンの市民は思ったより冷静です。
首都カブールと北部のジャララバードにある会のオフィスから毎日2回連絡がくるので、日本にいても状況はつかめます。
会はカブール市内に5カ所の診療所を運営していて毎朝8時に朝礼をしていますが、空爆の後も変わっていません。

日本の報道で一番伝わってこないのが、アフガンの人々の実情です。
北部同盟の動きばかりが報道されて、西側が嫌うタリバン政権下の市民の状況が正確に伝わらない。
日本メディアは欧米メディアに頼りすぎているのではないか。

北部同盟はカブールでタリバン以前に乱暴狼藉を働いたのに、今は正式の政権のように扱われている。
彼らが自由や民主主義と言うのは、普通のアフガン市民から見るとちゃんちゃらおかしい。
カブールの市民は今、米軍の空爆で20人、30人が死んでも驚きません。
以前、北部同盟が居座っている間に、内ゲバで市民が1万5000人も死にましたから。

今もてはやされている北部同盟の故マスード将軍はハザラという一民族の居住区に、大砲や機関銃を雨あられと撃ち込んで犠牲者を出した。
カブールの住民の多くは旱魃で農村から逃げてきた難民。
22年の内戦で疲れ切っていて、「もう争いごとは嫌だ」と思っている。

逆に言うと、厭戦気分が今のタリバン支配の根っ子にあると思います。
各地域の長老会が話し合ったうえでタリバンを受け入れた。
人々を力で抑えられるほどタリバンは強くありません。
旧ソ連が10万人も投入して支配できなかった地域です。
一方で市民は北部同盟は受け入れないでしょう。市民は武器輸送などでタリバンに協力しています。
北部同盟に対しては、昔の悪い印象が非常に強いですから。

タリバンは訳が分からない狂信的集団のように言われますが、我々がアフガン国内に入ってみると全然違う。
恐怖政治も言論統制もしていない。
田舎を基盤とする政権で、いろいろな布告も今まであった慣習を明文化したという感じ。
少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感はないようです。


『女性の「隠れ通学」を黙認』
 
例えば、女性が学校に行けないという点。女性に学問はいらない、という考えが基調ではあるものの、日本も少し前までそうだったのと同じです。
ただ、女性の患者を診るために、女医や助産婦は必要。
カブールにいる我々の47人のスタッフのうち女性は12〜13人います。当然、彼女たちは学校教育を受けています。

タリバンは当初過激なお触れを出しましたが、今は少しずつ緩くなっている状態です。
例えば、女性が通っている「隠れ学校」。表向きは取り締まるふりをしつつ、実際は黙認している。これも日本では全く知られていない。

我々の活動については、タリバンは圧力を加えるどころか、むしろ守ってくれる。
例えば井戸を掘る際、現地で意図が通じない人がいると、タリバンが間に入って安全を確保してくれているんです。
我々のカバー領域はアフガン東部で、福岡県より少し広いくらい。
この範囲で1000本の井戸があれば40万人程度は生活ができると思います。

国連が描く難民救済のシナリオは、米軍の報復攻撃によってパキスタンに移動してきた段階で助ける、というもの。
だが、中村医師は「難民化を食い止めることが何より重要」と主張する。

カブール市の人口は約100万〜150万人。平均して3〜4割は慢性の栄養失調で、放っておくと死にそうなのが1割くらい。
だからこの1割、15万人が緊急食料援助の対象です。

カブールは標高1500〜1600mで、11月下旬〜2月が冬。
雪に閉ざされるので冬ごもりします。食料を蓄える見通しがなければ、当然、難民化して動かざるを得ない。
これから3〜4カ月を無事に過ごせる状態にすれば、移動すらできない貧しい人も助かります。


『禍根残す日本の対テロ法』
 
米国の食料投下は全く役立っていない。日本時間の10月12日夜に聞いた話によると、現地の人は気味悪がって食べずに、集めて焼いたそうです。
タリバンが焼いた場合も、民衆が自発的にやった場合もある。例えば干し肉が入っていたら、豚肉の可能性もあるので、イスラム教徒は食べられない。

本当は小麦を送るのが一番いいんです。
今行われていることを総じて言うと、イスラム社会の都合や考えを無視して、西欧社会の都合が優先されている。
ものすごい運賃をかけて物を送ったり、自衛隊を出すかどうかで大騒ぎして、結局役に立っていない。


『あちらの慣習法で大切なのが、客人歓待』

ビンラディンもいったん客人と認めたからには、米国だろうと敵に客人を渡すのは恥、と考えるんです。

嘘みたいな話ですが、1億円もあればカブールの人が全部助けられる。
我々が今回やる緊急の食料援助プロジェクトで試算すると、1家族10人が3カ月の冬を越すのにたったの6000円で済む。これで急場をしのいでいるうちに、国連などが動き出すはずです。

こんなふうに死にかけた小さな国を相手に、世界中の強国がよってたかって何を守ろうとしているのでしょうか。
テロ対策という議論は、一見、説得力を持ちます。でも我々が守ろうとしているのは本当は何なのか。
生命だけなら、仲良くしていれば守れます。

だから、日本がテロ対策特別措置法を作ったのは非常に心配です。
アフガンの人々はとても親日的なのに、新たな敵を作り、何十年か後に禍根を残します。以前は対立を超えてものを見ようとする人もいましたが、グローバリズムの中で粉砕されていく。危険なものを感じます。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 11月2日投票でも負け戦 | トップ | 国連代表「軍事的にタリバン... »

コメントを投稿

軍事、外交」カテゴリの最新記事