逝きし世の面影

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しょぼすぎる福島第一の10メートルの大堤防と原発安全神話のネガティブキャンペーン

2011年06月17日 | 放射能と情報操作

東京電力が10メートルの堤防を越える14メートルの津波と主張する証拠写真

3月11日の大震災時に7メートルだった津波高の発表が、翌日の原発事故後から14~15メートルに2倍増する悪質な印象操作を繰り返していた東京電力は、2ヵ月以上後にようやく津波当日の映像を公開する。
毎日系テレビでは『10メートルの堤防を越える14メートルの大津波』とのニュースキャスターの説明に、日頃は知性や教養を感じさせない芸(B層庶民の代表?)が売りのみのもんたが『これ(堤防)、本当に10メートルもあるのですか』と驚きの声を上げる代物。
誰が見ても写真は何処にでも有る普通の堤防であり、高さはせいぜい3~5メートルに見える。
田老万里の長城とも呼ばれた、本当に10メートルの高さがあった田老の大堤防とは大違いである。
絶対に同じ10メートルには見えない。
その後、毎日テレビのニュースキャスターとみのもんたの間で、『はい、10メートルあるんです。』、『これ、本当に有るんですか』、『10メートル有るんです』、『これ、本当にあるんですか』、『10メートルあるんです。!』と3回も同じ珍妙なやり取りが繰り返される。
どんな漫才よりも面白いこの掛け合いに対し、他の何人もいるコメンティーターは全員が黙して語らず。
そんなに東京電力が怖いのか。!
お馬鹿にしか見えないみのもんたでも少しは判断力や懐疑心が残っていたようですが、大手メディアのニュースキャスターには残念ながら普通の判断力も懐疑心も無いばかりか、大人でなくても幼児にも有る筈の最低限の羞恥心さえも、まったく残っていなかったのです。
この写真は現在、毎日新聞の2011年5月19日『東京電力 津波に襲われる福島第1原発の画像公開』として残されているが、瞬間芸である映像メディアであれ程強調されていた10メートルの大堤防の阿呆臭い虚構は、流石に恥ずかしいのか活字メディアでは何処に見当たらない。
僅かに、『海面から高さ10メートルの敷地にある重油タンク(高さ5.5メートル)』との記述があるだけ。
(注1)
この敷地高も事実ではなく重油タンクは岸壁部分に設置されていて、岸壁はせいぜい5~6メートルしかない。10メートルとは他の施設の敷地高と見られる。
(注2)
津波高と一言でいっても色々あり、 国土交通省港湾局のGPS波浪計は釜石沖合20km、水深204m地点で最大6.7mの津波高を観測している。沿岸ではこの2~3倍の高さの津波が襲来したものと推測されます。
気象庁発表は港湾に設置されている験潮所の波高計や津波計の測定し、津波が沿岸部に到達した地点の高さを測るが、福島県で観測された津波高は相馬市7・3mいわき市小名浜で3・3mだった。
それ以外にも波の先端が到達した津波の『遡上高』では今回の大震災では39メートル以上が確認されているが、善意に解釈すれば東電発表の地震当日の7メートルは沿岸で測る津波高で、原発事故後に出された14メートルは遡上高であると、可也苦しいが判断出来る。

『メディアリテラシーと常識の自縛』

そもそも大震災当日の11日に東京電力自身がいったんは7メートルと発表している。
翌日12日に原発の爆発した途端14メートルと倍加して発表した事実を私以外、多くの日本人が誰も問題とせず東電の印象操作をはっきりと批判しない現状は、多数派同調バイアスによる憂うべきマインドコントロール状態であり、これでは残念ながらメディアリテラシーが欠如していると言わざるを得ない。
『東京電力ともあろうものが』との先入観が判断を間違わせているのです。
これは手品や奇術のネタを見破るのは知識や経験の有無は無関係で、学識が有る有名大学の教授や高名な学者よりも、未だ普通の常識に染まっていない(知識や経験では劣る)小中学生の方が優れているのに似ている。
まったく知性とか判断力のレベルとは別の話なのです。
当ブログの関連記事「印象操作」東京電力発表の14m巨大津波(2011年04月11日放射能と情報操)に対する反戦塾のましまさんの『こんな時に東電がインチキをすれば「より傷口を深くする」ので嘘はつかないだろう。』との趣旨のコメントは代表的な例であろう。
手品や奇術の場合には(多数の観客の)知識や経験が無いから判断を間違う(手品が成功する)のではなくて、その逆なのです。
常識が無い子供とは正反対の、人並み以上の優れた知性や教養、経験を持っているから『傷口を深くする』(東電ともあろうものが見え透いた嘘をつく筈がない)と判断して仕舞う。
手品師や詐欺師は常識有る大人が持っている知性や経験から生まれる『正常な判断力』を利用して、 事実とは違うイリュージョンを成功させるのです。
これは小は手品に始まって色々な詐欺事件、マルチ商法に騙される心理や14メートルの津波などの今回の福島第一原発事故に関連する数々の印象操作、川口浩探検隊モドキのアポロ11号の映像や9・11事件と対テロ戦争など、例を挙げれば限がありません。

『原発安全神話側のネガティブキャンペーンが始まったのか』

何とも不思議なニュース『福島第1原発:安全基盤機構検査ミス 東電頼み、まん延 設定圧力「妥当」うのみ』が2011年6月15日毎日新聞や東京朝刊などで報道されている。
『原発の法定検査に疑問符が浮かんだ。東京電力福島第1原発3号機の安全弁を巡る「原子力安全基盤機構」の検査ミス。』と有るが、最も責任が有る東京電力の責任には一言も言及しないで『原子力安全基盤機構』一人に全責任が有るかの様な不思議な紙面の作りに成っているのです。
この原子力安全基盤機構ですが通商産業省所管の独立行政法人で、去年には7メートルの津波高で前電源喪失が確実に起き、原子力発電所の炉心がメルトダウンするとの、今の福島第一原発事故を予言したかの様な、原発事故をそのまま正確に予測する驚くべき報告書と出しているのです。
これが原発安全神話の側にとっては、絶対に見逃しに出来ない『許されないタブーである』ことは言うまでも無い。
原子力安全基盤機構(JNES)はそれ以外にも、昨年10月に出された研究報告で、『全電源喪失(ブラックアウト)の0・6時間後には加熱した燃料棒が溶融(メルトダウン)して落下する。』、『1・8時間後には原子炉の圧力容器が損傷する。』、16・5時間後には格納容器も損傷する。』と今回の福島第一原発の大事故を事前に正しく予想して警告していた。
『絶対に安全』と宣伝していた日本の原発は、実は危機回避の為の時間的な余裕がまったく無い危険極まりない代物だった事実を暴いたこの原子力安全基盤機構が、このまま何事も無く無事で済むはずがないのです。

『同じ日付け、同一取材対象、同一記者で、二つの違う記事』

毎日新聞の記事ですが、何とも不思議。
同じ日付で同じ体裁の記事が二つ存在している。
一方の記事『福島第1原発:安全基盤機構検査ミス 東電頼み、まん延 設定圧力「妥当」うのみ』では、何とも不思議な体裁で、『元検査員の一人は「ガチンコ(真剣勝負)の検査員は多くない」と明かした。【酒造唯、川辺康広】』とごく一部だけが署名記事。『男性は「専門知識が不足している職員がいる・・』『・・・『なあなあ』の検査の象徴」と男性は語った。』など伝聞記事で、到底一流新聞社の記事とは思えない代物。
イエロージャーナリズムの典型であり胡散臭い週刊誌の記事と酷似した内容である。
二流のスポーツ新聞か週刊誌などの相撲の八百長報道とそっくりとは情けない。
『東電からの指摘でやっと自らのミスに気付いた。』と東電の正しさを強調する記事なっているいて検査の内容の記載は無い。
その代わりにあるのが『1500~2000円の弁当に対して500円しか払わない』などJNECのしょぼすぎる腐敗に焦点が当てられる。
もう一方は清水憲司、酒造唯、川辺康広3人の署名記事『福島第1原発:安全弁検査ミス…保安院所管法人が見逃す』で、具体的に検査の内容まで書いている。
『原子力安全基盤機構が08年法定検査を誤った手法で実施・・機構関係者の話で分かった。』となっている
見逃した内容とは、『6台のうち4台への加圧は適切だったが、残る2台は規定値より各0.55気圧、0.46気圧低い70.38気圧、71.28気圧しか加圧していなかった。東電側の単純ミスだったが、2人はこれを見抜けないまま合格を意味する「良」と判定したという。』と言うもの。
適正検査圧よりも0.0078倍~0・0064倍低かったとの告発記事であるが、原発事故後の基準値の数百倍超とか数十億倍超とか兆の上の京などの文字を見慣れている昨今、余りにも些細な出来事であり『何をいまさら』とか『重箱の隅つつき』の感は拭えない。
ましてや数十兆円の損害を出している原発事故の関連報道で、今回の千円とか千五百円のささやかな接待報道を、さも大事であるかの如く大スキャンダルとして扱うメディアの姿勢に胡散臭さを感じるのは私だけだろうか。
これは小沢一郎の不動産登記の日付の間違いなどの普通なら問題とされず見逃される程度の些細な落ち度を大事件として立件し様とした東京地検特捜部の異様な強制捜査と、それに便乗した常軌を逸したマスコミ各社のネガティブキャンペーンの類似行為であろう。
メディアは世間に対すて表向きは『社会正義』を主張しているようだが、そもそもの報道の出発点の動機が不純であり信用ならない。


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7 コメント

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なんと5m前後 (透明)
2011-06-24 20:51:01
「東電と共に脱原発をすすめる会(友共の会)」という人たちが調べたところ津波はなんと5m前後とのことです。さらに脱力ですね。
「気象庁の発表している津波高を基準に考えると、福島第一原発に押し寄せた津波は5メートル前後と想定されると追及。」
http://fpaj.jp/news/archives/4513
返信する
IAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 (宗純)
2011-06-25 11:20:16
透明さん、コメント有難う御座います。

紹介されている市民団体の指摘は、余りに常識的であり普通の知性が有る大人なら誰でもが感じている話。
謎なのは、こんな普通の疑問・質問が何故誰も指摘しないか?ですね。
私にとっては、これがさっぱりわからない。
集団同調性バイアスなのでしょうか。

原発の耐震設計の基本となっているのは沿岸部にある潮位計で測る津波高(OP)の数値。
地形に影響されて今回岩手県で最高39メートルが観測されている遡上高とは別、
と指摘されて東京電力の広報担当が絶句、返答に窮するさまは自業自得とは言え可哀想ですね。
意識的に誤解しているのか?知らなかったのか?
福島第一の津波対策で想定した高さはOP値で5・7メートルですが、遡上高が14メートルでも何の不思議もないのです。
ところが東電は地形による『遡上高』が津波高(OP値)の数倍になることを失念していた事実が発覚しています。
と言うか、遡上高は斑目委員長の『それを想定したら設計出来ない』との例の経済上の事情で『想定不適当』として排除したのですよ。
ただ今回は遡上高でもない別の防波堤の設計ミスの可能性も高い。
防波堤の構造で原発の南側に回りこんだ津波が数十メートルの巨大な水柱となって原発構内に波頭が崩れた海水が流入,車を押し流している。
14メートル冠水した2分後には引き波が起きたと、東電は恥ずかしげも無く報告書に書いてあるのですね。それなら遡上高でも無い。単成る水柱の被害であり、原因は岸壁の構造上の欠陥です。

この14メートルの大津波ですが、これは女性週刊誌に良く有る『一週間で10キロ痩せました』なんていう広告と同じ種類のインチキですね。
誰にでも当てはまる普遍的な一般論ではなくて、特殊な例外であり、一般にも通用するかの様に装うのは不真面目でありインチキ、ペテンの一種です。
ただ今回大問題なのは、そのインチキのペテンを日本政府が主導しているらしいのですよ。
何と我らが日本政府が原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する公式な報告書を出しているのですが、ここにこのインチキな数字を出している。
破廉恥にもわざわざ写真や図解で、10メートルの堤防を越える14メートルの大津波を演出しているのですが、国際的な恥さらし。
小学生でもわかる程度のインチキであり、これ以上の国辱的な行為があるでしょうか。?
世界に向かって、上に掲げた堤防が10メートルだと強弁しているのですね。
まあ、この堤防は海底からなら10メートル有るのでしょうが、海面からなら3~5メートルしかなくて、誇大宣伝の極みです。
それにしても何とも恥ずかしい話です。
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3・11は堤防問題である (貫平16)
2014-09-01 18:18:15
自分の誤解を恐れずに言えば、海岸堤防と東電とは無関係。堤防の所持・管理者は福島県である。堤防の構築にあたり、資金を出すのは県であり、国、つまり国交省である。互いに半分づつを負担している。
ところで私の町は九州です。「整備をやったとする管理者の県が発行した完成図面があるが、全くなにもしておらず既に10年とか、15年が過ぎている。公文書開示法に基づき「県が堤防整備を完成させた際、完成図面を添付して国へ請求書を提示したはず。その時の図面と全く同じ図面を開示せよ」と請求すれば、正式の完成図が入手出来る。その図と堤防を比較すれば真実が見えます。堤防高さが全く違っていたり、裏法があるはずが全くなかったり、裏法に張りコンクリ―トが敷き詰められているはずが泥が載せられていただけであったりします。億円単位の横領事件が浮上する。しかし其れからが大変です。国を相手の戦争を一人でしなければなりません。報道も検察も敵側です。しかし人のために働ける喜びがります。
返信する
それは何かの誤解です (宗純)
2014-09-02 13:23:02
貫平16さん、はじめまして。コメント有難う御座います。

近くにある漁港よりも、港湾としての派な堤防に見えることは事実ですが、この堤防の意味は、実は港湾とは目的がまったく別なのです。
原発ですが発電に利用している熱量は3割程度に過ぎない。
発電には使えない、後の7割もの膨大な熱量は温廃水として海に捨てているのですよ。
日本の原発が全部海岸に設置されているのは、十分な理由があった。欧米とか中国の様な巨大な河川が日本には無いのです。

東京電力広瀬社長「来年度中に汚染水浄化完了」と海洋投棄を宣言
2013年09月27日 | 放射能と情報操作
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/2d8a9da80bf7133443cefb7aa34fc28d

この堤防よう施設ですが、冷却水として大量の海水を取り込むための必要不可欠な原発の施設なのですね。グーグルマップで調べると,他の原発も同じで立派な港湾施設様の設備を持っている。
これは港湾に見えるが、港湾では無いのです。
東京電力のフクシマの原子力発電の施設であり、当然管理権も使用権も東電が持っています。
堤防に見えても、発電用の設備なのですから、この場合には県も国交省もまったく無関係です。
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誤解してました (貫平16)
2014-09-03 10:27:26
我が地元の堤防汚職で困っていたものですから、すみません。頑張ってください。
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空堤防 (貫平16)
2014-09-06 07:41:56
誤解のついでにこの場を借りて書かせて頂きます。北九州市小倉南区曽根に福岡県が管理する4基の堤防が有ります。その中の1基朽網堤防裏法面1・2km。H14年に県が発行した「全面整備をしたとする整備完成断面図があって、裏法面に張りコンクリートを敷き詰めてあるようになっていながら、何もせずに、泥が載せられただけで放置し、整備金3億9千万円を横領した」事件が有りました。公文書開示法に基づき、開示請求の結果、県知事が私に開示して来た事から全てが浮上してきました。堤防は県と国が半金ずつ負担して整備されます。調べてみますと国交省が負担する半金に整備の裏付けが無く、何も工事がしていないのに盲判で支払いがされた結果、4基の堤防全てに未整備の堤防が残され、政治・行政の食い残した惨状の堤防だけが有ります。国を挙げての横領事件です。私は小倉だけの事件ではないのではないかと思っています。新聞に投稿しても何故か取り上げません。3・11大震災に本当に起因したものは国交省の仕掛けた罠ではなかったかと思っています。開示法に基づき「県が整備完成した際、国交省への清算の為に国へ提示した図面と同じ図面の開示を求める」と請求して、もらった図面と堤防現場を比較すれば、だれでも実態がわかります。自分の命は自分で守るしかありません。市長も議長も市議も逃げだした後を、開示された完成図面を武器に、私が一人で2堤を県に整備をやらせています。同時に今地検へ告発もしています。ここに至るまで5年かかりました。他人様に相談してもお前はたかりに来たかと怒鳴られます。それでも一人でもできるのです。国交省あるところ堤防が食われている。そんな気がします。
返信する
堤防汚職は国策だった (貫平16)
2014-11-25 09:26:42
小倉地検が堤防整備資金横領の主犯だった!
H25年刑法125条で告発していた事件は、事件名を「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反」に書き換えられ、5回の不起訴を受けました。代えられた条文をそのままパソコン検索に入れてみますと外人向けの補助金への法規であり、堤防汚職とは無縁の法律でありました。報の番人のこれが正体であったのです。堤防汚職は国策であります。3・11は殺人事件の可能性がある。阿部首相に訴えたら、それ以来受けつされません。新聞社も同じです。やってみたらわかります。
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