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みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

賢治が封印した詩稿群(「第三集」分)

2017-03-09 10:00:00 | 賢治作品について
 さて、賢治が『この篇みな/疲労時及病中の心ここになき手記なり/発表すべからず』と記して封印した詩稿群、いわゆる「10番稿」は下表のようなものであることが判った。

             <『新校本宮澤賢治全集第十六巻(上)補遺・資料 草稿通観篇』(筑摩書房)662p~>
 瞥見してすぐ判るように、『旧校本宮澤賢治全集』で言えば、『第四巻』に所収されているものが多い。中でも、背景を水色で着色した詩稿群はいわゆる「春と修羅 第三集」に所収されているものであり、かなりの数に上っていることも判る。
 言い換えれば、巷間「春と修羅 第三集」と言われてはいるのだが、実はこの中には本来ならば賢治が「発表すべからず」と言い残していた、封印した詩稿が少なからずあったということになる。しかも現実には、賢治の遺志に反してそれらは公表されてしまったということになりそうだ。

 そこで次に、現在「春と修羅 第三集」に所収されていてしかも「10番稿」であるものをそれぞれ読んでみて、私から見れば、賢治が封印しようと思った理由と関連しそうな記述(=〔もう二三べん〕と似たような傾向冷笑や慢を含む記述)があった場合には当該部分を抜き出してみることにした。

 ・715   〔道べの粗朶に〕
   そっちはさっきするどく斜視し
   あるひは嘲けりことばを避けた
   陰気な幾十のなのに
   何がこんなにおろかしく
   私の胸を鳴らすのだらう


 ・735   饗宴
   酸っぱい胡瓜をぽくぽく噛んで
   みんなは酒を飲んでゐる
      …(投稿者略)… 
   みんなは地主や賦役に出ない人たちから
   集めた酒を飲んでゐる
    ……われにもあらず
      ぼんやり稲の種類を云ふ
      こゝは天山北路であるか……


 ・738   はるかな作業
   楽しく明るさうなその仕事だけれども
   晩にはそこから忠一が
   つかれて憤って帰ってくる


 ・740  
   なし

 ・1015   〔バケツがのぼって〕
   なし

 ・1022   〔一昨年四月来たときは〕
   人は尊い供物のやうに
   牛糞を捧げて来れば


 ・1025   〔燕麦の種子をこぼせば〕
   なし

 ・1033   悪意
   食ふものもないこの県で
   百万からの金も入れ
   結局魔窟を拵えあげる、
   そこにはふさふ色調である


 ・1036   燕麦播き
   なし

 ・   
      それこそは
      時代に叩きつけられた
      武士階級の辛苦の記録、
      しかも殷鑑遠からず
      たゞもうかはるがはるのはなし
   折角の有利な企業への加入申込がないので
   老いた発起人はさびしさうに、
   きせるはわづかにけむりをあげて
   やっぱりこっちをながめてゐる


 ・1048   〔レアカーを引きナイフをもって〕
   なし

 ・1066   〔今日こそわたくしは〕
   なし

 ・1077   金策
   悪口、反感、
   十八や十九でおとなよりも貪慾なこども
   なにもかもみんないけない


 ・1079   僚友
   なし

 ・1082   〔あすこの田はねえ〕
   なし

 ・730ノ2  増水
   なし

 ・1020   野の師父
   なし

 ・1021   和風は河谷いっぱいに吹く
   なし

 ・1088   〔もうはたらくな〕
   なし

 ・    台地
   なし

 ・    停留所にてスヰトンを喫す
   なし

 以上が、「第三集」所収の詩篇の中で「10番」のゴム印を押された詩稿群である。確かにこれらの中には〝〔もう二三べん〕と似たような傾向冷笑や慢を含む記述〟があったものもあるが、そうとも言えないものもかなりあったということもこれで判った。となれば、賢治が封印しようとした理由は他にもあったと言えそうだ。

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