宮澤賢治の里より

下根子桜時代の真実の宮澤賢治を知りたくて、賢治の周辺を彷徨う。

〈一〇一五〔バケツがのぼって〕〉

2016年09月27日 | 『春と修羅 第三集』
一〇一五   〔バケツがのぼって〕     一九二七、三、二三、
   バケツがのぼって
   鉛いろしたゴーシュ四辺形の影のなかから
   いまうららかな波をたゝえて
   ひざしのなかにでてくると
   そこに -ひとひら-
      -なまめかしい貝-
     -ヘリクリサムの花冠……
   一ぴきの蛾が落ちてゐる
   滑らかに強い水の表面張力から
   四枚の翅を離さうとして
   蛾はいっしんにもだえてゐる
     -またたくさんの小さな気泡……
   わたくしはこの早い春への突進者
   鱗翅の群の急尖鋒を
   温んでひかる気海のなかへ
   再び発足させねばならぬ
   早くも小さな水けむり
   鱗粉気泡イリデセンス
   春の蛾は
   ひとりで水を叩きつけて
        飛び立つ
       飛び立つ
      飛び立つ
   もういま杉の茶いろな房と
   不定形な雲の間を航行する
             <『校本宮澤賢治全集第四巻』(筑摩書房)より>
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《鈴木 守著作案内》
◇ この度、拙著『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)が出来しました。
 本書は『宮沢賢治イーハトーブ館』にて販売しております。
 あるいは、次の方法でもご購入いただけます。
 まず、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければ最初に本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円、送料180円、計680円分の郵便切手をお送り下さい。
       〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守    電話 0198-24-9813
 なお、既刊『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』につきましても同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。

『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』   ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』   ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』

『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』            ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著)

◇ 拙ブログ〝検証「羅須地人協会時代」〟において、各書の中身そのままで掲載をしています。
 


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